25 1巻発売記念番外編 旋風と太陽5
『駄犬⇒金狼』 第1巻、本日発売です!
書籍化にあたり、大幅な加筆修正をさせていただきました!
プリムラやマザーのサービスシーンはもちろんのこと、プリムラがおじさまを好きになるキッカケとなった『初めての体験』が明らかに……!
また勇者ざまぁも新たに追加! あの勇者の最期が描かれています!
さらに全ての始まりとなった、ゴルドウルフの『初めての追放』がついに明らかに……!
若きゴルドウルフの姿は必見です!
そして、第1巻の最大の目玉となるのは、勇者の始祖である、ゴッドスマイルが『初めての登場』……!
世界最強勇者の姿を、ぜひその目でお確かめください!
まさに第1巻は『初めて』だらけ……!
目にしたあなたはきっと、『初めての衝撃』を感じていただけることでしょう!
そして読んでいただければWeb版がさらに楽しくなりますので、ぜひお手にとってみてください!
ゴトシゴッドは熾天級の創勇者である。
といっても一般的な創勇者と違い、勇者のための武器を開発しているわけではない。
彼が世に送り出しているのは、『ゲーム』と呼ばれるオリジナルルールの遊びであった。
カードやサイコロを使ったテーブルゲームから、身体を動かすスポーツ競技まで多岐に渡る。
そのほとんどはルールがわかりやすくてシンプル。
中には複雑なのもあるが、どれも共通して『刺激的』であった。
彼はそのルールを用いたギャンブルで、庶民から金を巻き上げ、勇者組織に貢献し、成り上がる。
そして今では貴族や聖女どころか、勇者をも相手どったゲームを展開するようになった。
表だって勇者に損害を与えるのは、同じ勇者とはいえはばかられるところがあるのだが……。
それを彼は『ゲーム』というオブラートに包み、公然と実行したのだ。
ゲームは強制ではなく任意、そして負けたらどうなるかもしっかりと言い含めたうえで、勇者の参加を募っている。
勇者たちも、最初は軽い遊び感覚の気持ちで参加するのだが、その刺激的なゲームに次第に夢中になっていき……。
ついには自らの全てを投げ打つほどに、大熱狂してしまう。
そして最後の最後に、誰もが大敗北を喫してしまい……。
すべてを、失ってしまう……!
ゴトシゴッドはそうやって型に嵌めた者たちを、自分の『駒』として利用していたのだ。
彼には壮大な野望があった。
それはこの惑星を盤面とし、世界じゅうの人間を『駒』とした、歴史上、神しかなし得なかった壮大なる『ゲーム』を展開すること……!
そのゲームにおける『クイーン』ともいえる存在が、インキチをはじめとする妻たち。
彼女たちはゴトシゴッドの代理人として、勇者や聖女たちにゲームを持ちかけ、駒に変えていく。
そして今まさに、コレクションの網に、かつてないほどの大駒がやって来たのだ。
その名は、ホーリードール家……!
ゴッドスマイルお気に入りの姉妹たちを『駒』にして操れるようになれば、ゴトシゴッドの準神級の昇格は確約されたようなものだろう。
まさしく、『神の座』に王手がかかるのだ……!
そのため、インキチは気合いを入れて『聖心披露会』という名のゲームの準備を推し進めていた。
当初、開催地として予定していた中規模の会場をキャンセルし、ハールバリーにおいて最大のイベントホールに変更する。
普段は『聖心披露会』はマスコミはあまり興味を示さない。
新聞の地方欄にちょっとだけ取り扱われる程度である。
しかし今回はホーリードール家が参加するだけあって、噂を聞きつけたマスコミから多くの取材希望があった。
しかしインキチはそれらをすべて断る。
会場の記者席はすべて排除して、マスコミを一切シャットアウトしたのだ。
これは、ホーリードール家を陥れるための仕込みのひとつでもあった。
『聖心披露会』の模様はすべて、記録玉を使って真写におさめられる。
ホーリードールの聖女たちをゲームで嵌めて、痴態をあますとこなく納めれば……。
きっと彼女たちの化けの皮は、あっという間に剥がるであろう。
美しき姉妹は跪き、泣きすがり、命乞いをはじめ……。
「お……お願い! この真写を公表しないで! プリムラちゃんのはいくらでも出していいから、ママのだけは……お願いっ!」
「い……いいえ! マザーのクソみっともない真写こそ公表すべきです! なんでもしますから、わたしの真写だけは、どうか、どうか……!」
そして醜く、争いを始めるであろう……!
聖女一門というのは『愛』を標榜するだけあって、一枚岩のような強い信頼で結びついている。
大聖女は門下生を守り、門下生は大聖女を慕い、お互いが支え合っているように見えるのだが……。
それは表面上のことで、いざとなったら自分だけは助かろうとする。
そんな聖女たちを、インキチは今まで飽きるほど見てきた。
「お『愛』、お『絆』、お『信頼』、お『友情』、お『愛情』……。おそんなものは、おトランプのお絵札のおようなおものにお過ぎません。お手のお内におあるおうちはお少しはお大事におされますが、おいざとおなったら、おあっさりとお切られる……! おホーリードール家のお聖女様たちは、お多くのお絵札をお持ちのようでございます……。おそれがおブチお撒けにおなれたら、おさぞやお痛快でございましょうねぇ……!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
そしてついに、『聖心披露会』の日がやってくる。
ゴルドウルフは姉妹の応援に行くつもりだったのだが、今回は完全招待制となっていたため入場できなかった。
会場には多くの勇者と聖女たちが詰めかけ、客席は満員状態。
中央に設置されたステージでは、司会進行役の導勇者が、拡声棒を片手に高らかに開会を宣言していた。
『ジャンジャン、バリバリィィーーーーーッ!! 今回の「聖心披露会」は、史上最大の規模になったじゃぁぁぁーーーーんっ!! それもそのはず、今回は目玉が飛び出るくらいの豪華賞品!! どのくらい豪華かっていうと、あのホーリードール家が参加表明をするくらいじゃぁーーーーーーーーーーんっ!!』
おおーっ! と歓声が沸き起こる客席。
スポットライトは参加者席にいる、話題の姉妹を照らしている。
観衆からの注目を集め、笑顔で手を振り返すリインカーネーション。
隣のプリムラは、友達が応募したオーディションでグランプリに選ばれたようにキョドキョドしている。
『これから参加者である聖女たちには、3つのゲ……じゃなかった、3つの「愛を試す」試練に挑戦してもらうじゃん!! その試練は「愛なき者」は敗れ、「愛あふるる者」のみが勝ち残るようになってるじゃんっ!! 3つの試練を勝ち抜いた者にのみ、豪華賞品が贈られるじゃゃぁぁーーーーーーーーーんっ!!』
「おおーっ!!」と沸き返る客席。
『それじゃあさっそく、ひとつ目の試練といくじゃん!! 最初の試練は、なななっ、なんとぉぉぉーーーーーーーっ!!』
司会者の背後を覆っていた垂れ幕が落ちると、3つの回転パネルが現れた。
どれも『???』になっているが、司会者のかけ声とともに、いちばん上がクルリと回転する。
そこには『庶民への愛』とあった。





