01 対極と小局と大局
『駄犬⇒金狼』 第1巻、発売中です!
書籍化にあたり、大幅な加筆修正をさせていただきました!
プリムラやマザーのサービスシーンはもちろんのこと、プリムラがおじさまを好きになるキッカケとなった『初めての体験』が明らかに……!
また勇者ざまぁも新たに追加! あの勇者の最期が描かれています!
さらに全ての始まりとなった、ゴルドウルフの『初めての追放』がついに明らかに……!
若きゴルドウルフの姿は必見です!
そして、第1巻の最大の目玉となるのは、勇者の始祖である、ゴッドスマイルが『初めての登場』……!
世界最強勇者の姿を、ぜひその目でお確かめください!
まさに第1巻は『初めて』だらけ……!
目にしたあなたはきっと、『初めての衝撃』を感じていただけることでしょう!
そして読んでいただければWeb版がさらに楽しくなりますので、ぜひお手にとってみてください!
ドッグレッグ諸国における、『スラムドッグマート』と『ゴージャスマート』のシェア争い。
第3ラウンドともいえるロンドクロウ小国での戦いは、伝説クエストの挑戦、そして剣術大会を経て、またしても野良犬軍に軍配があがった。
スラムドッグマートは言うまでもなく個人商店なのだが、この世界における個人商店というのは一国のなかで商いをするのが普通である。
しかし今回の勝利により、同店はついに3ヶ国を支配するに至った。
過去に例のない快挙といえるのだが、勝利をおさめた野良犬たちは変わらない。
ロンドクロウでの決着となった剣術大会が終わると、いつもと変わらない日常に戻っていた。
ただ、ロンドクロウ出店の成功を祝って記念パーティだけは開催されていた。
それは、スラムドッグマート関係者全員が招かれた公のものと、主要スタッフのみで行なわれた非公開のもの、という2回に分けて行なわれる。
ちなみにではあるが、非公開のパーティは参加者全員がビキニアーマーを着用。
森に見立てた屋敷のなかで、角をつけたゴルドくんの着ぐるみを探し求めるという、奇祭にも似た内容であった。
そして奇祭といえば、かつて『勇者サゲ祭り』などで世を賑わした勇者軍は、どうしているかというと……。
その首脳陣ともいえる4人組は、すっかりバラバラになっていた。
まず大天級に格下げとなったステンテッド。
彼は今は、聖女の国であるキリーランド小国にある、場末の店舗の店長としてくすぶっている。
それでも彼はセブンルクスにある支部に押し寄せ、かつてのように本部長室に行こうとしていたが、受付で門前払いをくらう毎日。
つぎに、統括プロデューサーであったフォンティーヌ。
彼女は子育てにご執心のあまり、今では本部長室に顔を出すこともしなくなった。
名目上の彼らのリーダーであったボンクラーノは、今もなおセブンルクスの屋敷で寝込んでいる。
その寝室の外には、引きこもりの息子を心配する母親のような、シュル・ボンコスの姿が。
そんな彼らが、連日のように膝をつき合わせていた『ゴージャスマート エヴァンタイユ諸国本部』はというと……。
そこは、かつての喧噪が嘘のように静まり返っているという。
逆に、スラムドッグマートの事務所はいつもと変わらぬ笑顔にあふれていた。
清らかな聖女たちと、美しき魔導女たち、元気な子供たち、そしてオッサン……。
戦いを終えた両陣営の状況は、対極的であった。
……それにしても、この違いは何なのだろう。
かたや、50名もの勇者を呼び集め、万全と体勢で挑んだクエストは失敗。
剣術大会では、おのおのが最高の策略を張り巡らせたというのに、死んでも拭いされないほどの醜態を晒す。
かたや、ピクニック感覚で挑んだクエストは失敗したものの、聖獣のほうから家に来てくれるという偉業を達成。
剣術大会では、子供たちの努力はあったものの、それらはほとんど発揮されずに勝ってしまった。
なぜこうも、勇者たちのするこはすべてうまくいかず、野良犬たちのすることは何もかもうまくいってしまうのか……!?
そう……!
それは、『愛』……!
たとえ親子であったとしても、鼻をかんだティッシュをハナクソで貼り合わせたような、ありあわせですらない勇者たちの絆では……。
血も繋がっていないのに、すでに家族と称してはばからない、野良犬ファミリーの絆に太刀打ちできるはずもない……!
しかし、今回の壮大なる『愛の劇場』も、この世界においては小局でしかなかった。
なぜならば、このとき世界は大きく動き出していたのだ。
それは……。
『ゴッドスマイル生誕1千年』という、大いなる歴史のうねり……。
いや、大いなる歪みが……。
現在どころか、過去そして未来をも席巻しようとしていたから……!
今年は勇者組織のトップである、ゴッドスマイルが生まれて1000年が経つという。
この世界はゴッドスマイルのおかげでモンスターに脅かされずにすんでいるので、その悠久ともいえる平和の節目の年といってもいい。
もちろんこれはただのウソっぱちなのだが、勇者組織は総力をあげてこの事実を民衆に、そして歴史にすり込もうとしていた。
そのため、剣術大会が終わって間もない世間の関心は、すべてその話題に持っていかれてしまう。
それも無理からぬ話である。
ゴッドスマイル生誕1千年を記念して、各国では記念の式典が行なわれ、まさに世界的なお祭りとなっていたから。
それでも勇者組織との決別を宣言したドッグレッグ諸国は静かなものであったのだが、完全に無視するわけにもいかなかった。
なぜならば、勇者組織からも大いなる発表がなされていたのだ。
それは、何回かに分けて発表されることになっていたのだが、最初にブチあげられたのは……。
『頸飾の授与』……!
勇者全員に頸飾、ようはチョーカーが与えられ、その着用が義務づけられた。
この意味としては、着用者がひと目で勇者であることがわかるという点。
そしてもうひとつは、ニセモノの防止。
それまでは『ニセ勇者』が横行していたのだが、それをよりわかりやすくするためである。
なお『ニセ勇者』といっても、ステンテッドや小天級勇者のことではなく、自分が勇者であることを詐称する者たちのことを指す。
例を挙げるなら、グレイスカイ島にいたストロングタニシなどのことである。
勇者でないものが勇者を名乗るのは、どの国でも重犯罪とされているのだが、勇者というのは世界で通用するブランドだけあって、詐称する者があとをたたない。
今回のチョーカー導入により、それを一掃しようというのだ。
なおそのチョーカーは準神級から小天級までもが対象。
ようはこれからの勇者は、ゴッドスマイル以外はみな首輪を付けていることになる。
ちなみにではあるが、階級によって首輪の材質は異なる。
最下位の小天級はただの鉄輪なのだが、大天級は銀細工。
権天級から智天級までは金細工となっており、埋め込まれた宝石の数によって階級の違いを表している。
そして、熾天級以上はというと……。
それは、いずれ明らかになるであろう。
いずれにせよ、頸飾は勇者の証明となる物品だけあって、かなり気合いの入った作りになっていた。
それがあまりにも見事だったので、受け取った勇者たちの間では自分の首飾りを自慢げに見せびらかすというブームが巻き起こる。
それは多くの人間からは羨望の光景に映り、勇者の威光を改めて知った民衆が、首飾りの前にひれ伏すという事態まで起ったという。





