表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

638/806

47 父と子(ざまぁ回)

 『ゴージャスマート杯 小学生対抗剣術大会 エヴァンタイユ諸国代表選抜』。

 様々な者たちの思惑入り乱れるこの大会は、のっけから波乱含みの幕開けとなる。


 なにせシード校ではない、勇者の代表校である4校に……。

 あの(●●)、『厄災四天王』と呼ばれた勇者たちが、『指揮官』として参戦していたのだ……!


 深紅の鎧に、逆巻くような兜を身につけ、炎の大剣技を操る、あの戦勇者(せんゆうしゃ)が……!


 得意の大剣技『ファイヤーブレード』は、ひと太刀ですべてを燃やし尽くしてしまうという。

 どんな大悪党でも名前を聞くだけで震えあがるという、至高の勇者、『ファイヤーヘッド』が……!


 白銀の鎧に、逆巻くような兜を身につけ、雷の大剣技を操る、あの(以下略)。


 豪華なサプライズゲストの登場に、会場は大いに沸いた。

 先日、全裸姿をスクープされた彼らであったが、伝説の装備に身を包む彼らは、まぎれもなく『伝説の勇者』だったのだ。


 しかしその伝説が段ボール製であることは、もはや言うまでもないだろう。


 小学生相手に、伝説の装備で固めるというのもアレだというのに、



「我が内なる炎よっ! 神の微笑みをもって、大いなる力となりて……って、ぎゃああああっ!?」



 ……バキィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーンッ!!



 長々とした大剣技の発動準備の最中に打ち込まれ、一発KO……!


 しかも美食で肥えた身体を、辛うじて押さえ込んできた鎧は衝撃でバラバラに弾け飛ぶ。


 そして、祭り再び……!



「ひぎいいっ!? 見るなっ!? 見るな見るな見るなっ!? 見るなぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!?」



 ぶよぶよの身体を、アザラシのように這いつくばらせて逃げるその様は、皮肉にも新聞記事の裏付けをしてしまっていた。


 剣術大会というのはマナシールドが破壊されたあと、もう一撃受けたら負けとなる。

 そのため、全裸になってもまだ勝つチャンスはあるのだが、アザラシ勇者たちは真っ先に場外に逃げ出していた。


 なんともみっともない、『身ぐるみ剥がされ敵前逃亡』……!


 新聞の真写(しんしゃ)ごしではなく、リアルでの醜態はこのうえなく無様であった。

 例の新聞記事を『ウソであってくれ』と願っていた層の期待を、粉々に打ち砕く。



「ふ……ふざけんなっ! なにが『厄災四天王』だっ!」



「小学生相手に、伝説の装備を持ち出しやがって!」



「それなのに、一撃で負けるだとぉ!?」



「それでも潔く散ればいいものを、逃げ出すだなんて……!」



「お前らがいままでしてきた活躍は、ぜんぶウソだったんだな!?」



「ふざけんなっ! 俺はあんたらに憧れて、ゴージャスマートで廉価版の装備を買ってたってのに!」



「死ねっ! 死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」



 会場内にはのっけから、罵声とゴミが投げ込まれる。



『おいっ、貴様ら、いい加減にせんか! いくらゴミのようなニセ勇者といはいえ、ゴミを投げ込むんじゃない!』



 ステンテッドが拡声魔法ごしに怒鳴りつけても、



「うるせえっ! このラクガキ勇者っ!」



「てめぇも同罪なんだから、引っ込んでろ!」



「てめぇの醜いケツのおかげで、俺はしばらくメシが食えなくなったんだ!」



 場内と客席は、勇者の主催の大会とは思えないほどに険悪なムードとなる。

 ほうほうの体で控室まで逃げていった『厄災四天王』。


 各校ごとに用意されたその場所で、待ち構えていたのは……。

 彼らの息子であった……!



「おいっ、燃えるゴミ野郎っ!」



「なっ……!? なんじゃ、ジュニア!? パパに向かってそんな口を利くだなんて……!」



「お前はもう父親でもなんでもねぇよ! 父親が大天(だいてん)級の勇者なんて、恥ずかしくてもう学校に行けねぇよ! ママと話して、お前は『切る』ことにしたから!」



「ゆ……勇者であるパパを『切る』だとぉ!? それは従者に使う言葉ではないか!」



「いまのお前は、従者に毛が……いや、贅肉が付いたようなモンじゃねぇか!」



「きっ……きっさまぁぁぁぁぁぁ~~~~~! パパはお前をそんな子に育てた覚えは……! ワシはいまから勇者として、父親として、お前を殴ぶはあっ!?」



「気やすく触んじゃねぇ、この燃えるゴミっ! 俺はなぁ、ボンクラーノ様のチームで活躍すれば、取りなしてもらえることになってるんだ!」



「なっ……なんじゃと!?」



「そうなれば、お前がいなくてもママとふたりで生きていけるんだよ! それに、お前は今回の醜態がバレたら、また降格だろ! 堕天してもおかしくないよなぁ? あぁん?」



「わ……ワシが悪かった! ジュニア! な……なんでもする、なんでもするから、ワシを見捨てないでおくれ!」



「じゃあ、俺の言うことを聞くか?」



「き……きくきく! なんでも聞きます!」



「じゃあまず、その剣をよこせ!」



「えっ、こ、この剣は、我が一族の長のみが持つことを許される……。い、いや、よ、喜んで差し上げます! ジュニア様! あなた様が今日から、わが一族の長ですっ!」



「よぉーし、この剣がありゃ、もう怖いモンなしだぜ」



「こ、これで……ワシを助けてくださいますか?」



「ああ、いいぜ、俺ん家の従者として使ってやるよ」



「じゅ……従者!? そ、そんな! 実の父親を、従者だなんてぐはあっ!?」



「うるせえっ! 今度父親ヅラしてみろっ! その脂肪を外から燃やしてやっからな!」



「はっ……! はひっ!」



「へへ……。この剣がありゃ、野良犬だってヤキトリみてぇに黒焦げにしてやれるぜ。じゃあそのまま這いつくばってついてこいっ、ゴミ野郎!」



「はっ……はひっ! はひぃぃーーーーーーーーーーーーっ!!」



 いったんはハケた『全裸四天王』だったが、再び同じ恰好のままで、会場に戻ってくる。

 今度は息子の足元を犬のようについてまわる、『全裸従者』として……!


 そして揃いぶみする、『新・厄災四天王』。

 最低の父親を踏みにじり、最高の武器を手にし、最後の敵として……。


 他校に全勝した野良犬たちの前に、立ちはだかったのだ……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 弱っ!全裸四天王弱っ! まあ今まで一方的に攻撃できる状況でしか戦って来なかった連中だから実際の実力はこんなもんだよね。 ジュニアも最高の武器を手に入れて完全に調子に乗っているな。どんな名剣で…
[良い点] 瞬殺された勇者のむさい裸祭り再びっΣ(゜Д゜)!! そして親が屑なら子も屑!! まさに鏡ですね~( ̄▽ ̄;) 親の屑勇者から奪った伝説の剣でどう『ざまぁ』を盛り上げてくれるのか!? ※屑…
[良い点] 新・バーコード四天王 誕生しましたか!(ニヤリ) やはりクズの子もクズでしたね!(ニヤリ) さて 伝説の装備で小学生たちに負けるレベルとは! そして息子たちにアッサリ服従するとは! こいつ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ