08 勇者の階級
勇者クリムゾンティガー・ゴージャスティスは初めてのクエスト失敗を経験する。
それどころか自力での地下迷宮脱出もかなわず、結局ほかの冒険者に助けられてしまった。
しかも、すぐに祈りを捧げられなかったことにより後遺症が残り、即入院……!
病院のベッドの上で包帯まみれになり、連日駄々っ子のように泣きわめいていた。
「あぁぁぁぁぁーーーーーんっ!?!? くそがあっ! くそっ! くそっ! くそっ! くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそっ!! くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーんっ!!!」
そこは権天級以上の勇者だけが利用できる、一等病室。
広々としていて、まわりに誰もいなくて静か、療養にはもってこいの場所だったのだが、それが彼をさらに苛立たせることとなる。
なぜならば、普通の勇者は怪我をした時点で聖女の祈りによって回復し、後遺症など一切残すことはない。
従って、入院すること自体が稀なのだ。
これが意味するもの、それは……。
入院する勇者など、計画力、洞察力、判断力、統率力、戦闘力……勇者にとっての資質すべてが不足していると、喧伝しているようなものだったのだ。
しかし……彼の心は、ここからさらに荒んでいく。
クエスト失敗、しかも死傷者を出したということで、降格処分……!
『権天級』から『大天級』になってしまい、一般病棟に移されてしまったのだ……!
「んんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーんっ!! なんでだよっ!? なんで!? なんでなんでなんでなんで!? なんでだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!? なんでこの俺が……!! こんな雑魚どもの掃き溜めにいなきゃいけねぇえぇえぇえぇんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
彼の悲鳴をBGMに……ここで、勇者の階級について説明しておこう。
まず勇者は、役割によって4つに分けられている。
地下迷宮の探索やモンスターとの戦闘を行う、戦勇者。
武器や防具、道具や薬品などを創る、創勇者。
物品を流通販売、調達などを行う、調勇者。(彼らはそのほとんどが、『ゴージャスマート』に所属している)
勇者や冒険者に教育を施し、正しい道へと導く、導勇者。
これら勇者の中では階級が定められており、段階によって与えられる立場と権力が異なる。
それを、以下に示す。カッコ内の表記は、『ゴージャスマート』組織内における役職である。
--------------------
●御神級(会長)
ゴッドスマイル
●準神級(社長)
●熾天級(副社長)
●智天級(大国本部長)
●座天級(大国副部長)
●主天級(小国部長)
●力天級(小国副部長)
●能天級(方面部長)
●権天級(支部長)
↑昇格:ダイヤモンドリッチネル
●大天級(店長)
↑昇格:ゴルドウルフ
↓降格:クリムゾンティーガー
●小天級(役職なし)
--------------------
ゴルドウルフを煉獄に捨てたことにより、戦勇者クリムゾンティーガーと調勇者ダイヤモンドリッチネルは『権天級』に昇格した。
しかし……今回の失態で、クリムゾンティーガーは間をおかずに『大天級』に降格……!
ゴルドウルフは『スラムドッグマート』の店長に就任したので、彼と同格になってしまった……!
ゴルドウルフは勇者ではないし、ましてやゴージャスティス一族の人間でもないが、比較のためにここに掲載した。
「ふざけんなよ、マジでぇっ!! あのクソがあっ……!! ぜんぶ、ぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶっ……ぜんぶあのクソ犬のせいだっ!! あのクソ犬……のたれ死んでもなお、この俺の邪魔をしやがってぇぇぇぇぇぇぇ!! 今回はたまたま運が悪かっただけだ……! マジで、マジであの世で見てろよ、クソ犬……! ぜってぇ成り上がって、お前の死体にツバぁ吐きかけてやっからよぉ……!! おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!?!?」
面白い! と思ったら評価やブックマークしていただけると嬉しいです。