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186 ヘタレたちの最期

 『ライクボーイズ』たちの、不死王バルルミンテ討伐……。

 これはゼピュロスの時以上の大騒ぎとなった。


 今回は遊覧ツアーなどではなく、完全に命がけの冒険である。

 しかし大勢の『ライクボーイズ』ファンたちが参加し、百人規模のレイドでの一大クエストとなった。


 『レイド』というのは、複数の『パーティ』で構成された、いわば軍隊のようなものである。


 ちなみにこのクエストの模様も、ゴージャスマートが残していった機材で、国じゅうに中継されることとなった。


 ……絶対不死王なんかに負けたりしない!


 と勇ましく、高らかに宣言した3人の勇者たちは、抽選に漏れた多くのファンに見守られて、『不死王の国』への入国を果たす。


 そこからは例に漏れず、勇者たちは醜態と下衆っぷりを、遺憾なく晒してしまい……。



「「「勇者のアイドルグループ……ライクボーイズは……全員ヘタレでしゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーっ!!!!!!!!!!」」」



 3人揃って邪神像に、おしっこポーズで抱えられたまま……。

 不死王には、勝てなかったよ……。とばかりに、痴態を曝け出し……。


 というか、不死王のいる最下層まで、たどり着くことすらできなかったのだが……。



      勇 者 ア イ ド ル


     ラ イ ク ボ ー イ ズ


           は


    全 員 ヘ タ レ で し ゅ



 勇者は、またしてもヘタレ花火で、夜空を彩ってしまったのだ……!


 たのだ……!


 のだ……!


 だ……


 ……。


 ……さて、ここで少し話題を変えよう。

 時間も少しばかり戻して、『ゼピュロス様と行く、不死王の国ツアー』から帰った観客たちの日常を、見てみようではないか。



「楽しかったね、ゴルドくんのツアー! またやらないかな!」



「うん! もし次があったら、同行者になれるよう応募しようね!」



 ……ちなみに彼女たちの中ではすでに、勇者のツアーではなく、ゴルドくんのツアーを観覧したことになっている。



「あ、そうだ。ステージイベントが終わったときに、お土産としてもらった『投石装置』、どうしてる?」



「今でもよく押してるよ。ほら、机の上にこうやって置いてて、いつでも押せるようにしてあるんだ」



「あ、あなたも? 私もなんだよねー。ゴルドくんのほうは押さないけど、ヘタレのボタンのほうは、嫌なことがあったときに押すとスッキリするから」



「でもさぁ、ツアーで使った時は、ボタンを押したら聴こえる台詞は1パターンだけだったのに、いっぱいバリエーションが増えたよね?」



「あ、あなたのも!? そーそー! 台詞の内容も、キザだったころのヘタレのじゃなくて、最後のほうの情けないヘタレのになってるしね!」



「押す度にみっともない声が聞けるから、つい押しちゃうの! こんな風に……」



 部屋の主であろう少女が、机の上にある小箱の赤いボタンをバシンと叩くと、



 ……バシュッ!



 とスピーカーから射出音のようなものが流れ、



『ギャインッ!? い、いだいのしゃ! も、もう、やめるのしゃ!』



 実に真に迫った演技の、ヘタレボイスが続いた。



「あ、普段よく聴くボイスだ。新しいボイスはないのかな?」



 少女はガチャでも引くかのように、ポチポチボタンを押し続ける。



 ……バシュッ! バシュッ! バシュッ!



『ギャヒッ!? ギャヒッ!? ギャヒィィィーーーンッ!! 石を投げるのは、やめるのしゃぁ~! 狭い部屋に閉じこめられたまま、ずっと石を投げ続けられて……ぜ、ぜんぜん、眠れてないのしゃぁ~! お願いだからこのゼピュロスを、寝かせてほしいのしゃぁぁぁぁ~!』



「あ、初めて聴くボイスだ」



「あとさぁ、たまにだけど、ヘタレのほうから石を投げてくれって言ってくることない?」



「うん、たまにあるよね。もちろん気持ち悪いから、投げて黙らせるけど」



「うーん、これってたしか魔導装置なんだよね。いったいどういう仕掛けになってるんだろう?」



 その仕組みについては、ご想像にお任せするとして……。

 ここで、過去に装置から流れた気になる台詞を、いくつかピックアップしてみよう。



『ギャヒイーーーーーンッ! いだいのしゃぁ、いだいのしゃぁあ!』



『……あっ? だ、誰か……誰か来るのしゃ……!?』



『ふ、不死王様の使い? ぜ、ゼピュロスをここから、出してくれるのしゃ!?』



『えっ? ここから出るためには、装置を持っている1000人全員が、同時に赤いボタンを押さないとダメ……!?』



『そ、そんなの、無理なのしゃ! 不可能なのしゃっ!』



『み、みんな! 石を投げるのしゃっ! このゼピュロスに、石を投げてほしいのしゃぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!!』



『ぎゃひいっ!? ぎゃっ!? ぎゃああんっ!? い、痛いのしゃ! 痛いから、やっぱりやめるの

しゃ! ボタンを押すのをやめるしゃぁぁぁぁぁーーーっ!!』



『……え? ライクボーイズのメンバーが、今この地下迷宮(ダンジョン)にいる……? もし倒すことができたら、仲間が増える……?』



『な、仲間が増えたら、投石を受ける確率が減るのしゃ! やるのしゃ! ゼピュロスがライクボーイズどもを、やっつけてやるのしゃ!』



『ぐ……! ぜ、ゼピュロス……! 貴様、よくもっ……!』



『ボクたちは、キミを助けに来たのにっ!?』



『それなのに、不死王側について、罠にハメるだなんて……!』



『しししししし! 自分たちだけいい格好をしようったって、そうはいかないのしゃ!』



『ぎゃあんっ!?』『いぎいっ!?』『ふぎゃあ!』『うぎゃっ!?』



『な……なんでなのしゃ!? 飛んでくる石に当たる確率が、4分の1になると思ってたのに……飛んでくる石も、4倍になってるのしゃ!?』



『ゼピュロス!? てめぇ、まさか……自分が投石から逃れたいがために……!?』



『ああ、その通りしゃっ! なにが悪いっていうのしゃ!? ライクボーイズは一心同体だと、全国ツアーの時にメスブタどもの前で誓ったのしゃ! ならこの永遠の苦しみも、一緒に味わうべきなのしゃっ!』



『くそっ! この腐れヘタレリーダーをやっちまえっ!!』



『しゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!』



『『『『……ギャフベロバギャベバブジョハバ!!!!』』』』



 ……醜く争う彼らは、思いもしていないだろう。


 今、自分たちをこんな目に遭わせているのが、かつてのファンたちで……。

 そしてその大元は、かつて彼らの馬をつとめ、さんざんバカにし、さんざん足蹴にしてきた、馬のオッサンであることを……!


 ゴルドウルフ、ライクボーイズたちを、まとめて……!


 影縫(キャッチ)(・アンド・)成敗(イレース)……!


--------------------


御神(ごしん)級(会長)

 ゴッドスマイル


準神(じゅんしん)級(社長)

 ディン・ディン・ディンギル

 ブタフトッタ

 ノーワンリヴズ・フォーエバー

 マリーブラッドHQ(ハーレークイーン)


熾天(してん)級(副社長)

 キティーガイサー


智天(ちてん)級(大国本部長)

 ライドボーイ・ロンギヌス

 ライドボーイ・アメノサカホコ

 ライドボーイ・トリシューラ

 ライドボーイ・トリアイナ


座天(ざてん)級(大国副部長)

主天(しゅてん)級(小国部長)

 ジェノサイドダディ(失点40)


力天(りきてん)級(小国副部長)

 ジェノサイドロアー

 ゴルドウルフ


能天(のうてん)級(方面部長)

権天(けんてん)級(支部長)

 ジャンジャンバリバリ


大天(だいてん)級(店長)

小天(しょうてん)級(役職なし)


堕天(だてん)

 ↓降格:ライドボーイ・ゼピュロス

 ↓降格:ライドボーイ・ギザルム

 ↓降格:ライドボーイ・ハルバード

 ↓降格:ライドボーイ・パルチザン


 ジェノサイドファング、ジェノサイドナックル

 ミッドナイトシャッフラー、ダイヤモンドリッチネル、クリムゾンティーガー

 ライドボーイ・ランス、ジャベリン、スピア、オクスタン


 名もなき戦勇者(せんゆうしゃ) 159名

 名もなき創勇者(そうゆうしゃ) 60名

 名もなき調勇者(ちょうゆうしゃ) 112名

 名もなき導勇者(どうゆうしゃ) 164名


--------------------


 ちなみにではあるが、投石装置のボタンは、いちどだけ999人が同時に押したことがあった。

 あとひとり……あとひとりが押していれば、彼らは自由になれていたかもしれない瞬間があったのだ。


 しかしいずれにせよ、その瞬間は、永遠にやって来ることはない。

 なぜならば……。



「あ……あれぇ? ツアーのお土産にもらった、わんちゃんの木箱……どこに行ったんだろう? ツアーの時、ボタンをいっぱい叩いたら、みんながほめてくれたから……練習しようと思ってたのに……。私、よく物をどこかにやっちゃうから、またなくしちゃったのかなぁ……?」



 それは、彼女の部屋の押し入れの奥深くに眠っていて……二度と掘り起こされることがなかったからだ。


ゼピュロス編、これにて終了となります!


このあとは今章のファイナルとなります、ジェノサイドロアー編…。

ジェノサイド一家の最期となります!


でもその前に、少しお休みを頂きたいと思います。

いい区切りですので、ここで感想や評価などを頂けると嬉しいです!


ちなみにですが、このあとのジェノサイドロアー編は、それほど長い話にはならない予定です。

まだ書いてないのでわかりませんが、あとは最後のざまぁを描くだけなので、10話もかからずに終わるのではないか…と思っております。

しかしあっと驚く真実が明らかになりますので、ご期待ください!


そして宣伝なのですが、私がもうひとつ書いているお話、


『賢者学園のアウトロー 胆石が賢者の石になったオッサン、少年に戻って賢者学園に入学して、等価交換も寿命も無視した気ままな学園生活!』


こちらもだいぶ話数が進んできました。

違ったタイプのスカッとするお話を目指しているので、この機会に読んでいただけると嬉しいです!

このあとがきのすぐ下に、小説へのリンクがあります!

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― 新着の感想 ―
[一言] 後になって申し訳ありません。 ヘタレたちの最後に関しまして、言わなくてもいいかと思っていたのですが、やはり一言言わせて頂きます。 個人的にはヘタレたちのこのフザけた態度は頂けませんね。 生…
[良い点] 『美しき者は美しく咲き、醜き者は醜く散る』 ・・・ツアー前にヘタレが言っていた通りになりましたね♪(笑) まあ付け加えるなら 『美しき野良犬は美しく咲き、醜き勇者は醜く散る』 ・・・…
[一言] ロアーには慈悲を!
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