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110 ビッグバン・ラヴ

 このハールバリー小国において、すべての女の子の憧れといえば、やはりお姫様(プリンセス)である。

 しかし現実を知る年代になると、それも少しずつ変わってくる。


 小学生のときは、白馬の王子様とお姫様を夢見ていた彼女たちも……。

 中学、そして高校ともなると、努力すれば近づける存在に憧れを抱くようになるのだ。


 かつてそのナンバーワンは、『大魔導女学園』の女子高生師範にしてカリスマモデルである、ミグレア・ダーディサッドであった。

 しかし彼女は不幸な事故により一線を退き、今は後進の育成などを行っている。


 そして彼女がプロデュースしたなかで、彼女の人気に取って代わったのが、同学園のカリスマモデル……。


 『バーニング・ラヴ』と、『ブリザード・ラヴ』……!


 バーニング・ラヴは、よく日焼けした肌にピンクの巻き毛の、ハートフルギャル少女。

 ナイスバディに、スラムドッグ製のビタミンカラーの制服(ローブ)が栄える。


 ブリザード・ラヴは、雪のように白い肌にストレートの青髪の、クールギャル少女。

 スレンダーな身体で、スラムドッグ製のパステルミントの制服(ローブ)をバッチリ着こなしている。


 ちなみにふたりは双子の姉妹である。

 彼女たちがハールバリーにある『スラムドッグマート1号店』に現れたときは、騒然となった。


 なにせすべての女子中高生たちにとって、カリスマ中のカリスマ。

 一挙手一投足、頭のてっぺんから足のつま先まで、余すところなく注目されているファッション教祖(リーダー)なのだから。


 しかし彼女たちは周囲の反応など気にもとめず、



「へぇーっ! ここがあーしらのガッコの制服売ってる『スラムドッグマート』!? なんか『ゴージャスマート』に比べるとビンボくさくなくなくなくない!?」



「ふーん、チープじゃん」



「あらあら、まあまあ、かわいいお嬢ちゃんたち、いらっしゃい!」



「うわっ、マジマザーじゃん! 噂はマジだったんだ! へぇーっ! ってか、マジおっぱいでかっ! あーしよりずっとでかくなくなくない!?」



「ふーん、ビッグじゃん」



 ちなみにマザーは学校にこそ通っていないが、年齢的には彼女たちと同じ高校生である。



「うふふ、このお店にはお嬢ちゃんたちにピッタリのものがたくさんあるのよ。ほら、これなんてどうかしら?」



「へぇーっ、なにこれなにこれ!? どれもマジカワじゃなくなくない!? あっ、なにこの杖!? 犬の形してる! これイイ! マジ良くなくなくない!?」



「ふーん、ドッグじゃん」



「ブリっちは、猫派だもんねー」



「ねこちゃんの杖もあるわよ、ほら」



「えっ、マジで!? って、コレ、猫のかぶりものした犬っ! なんでそんなややこしいデザインなん!? マジウケるんですけど! あっはっはっはっはっ!」



「ふーん、やっぱりドッグじゃん」



「同じ柄のローブもあるのよ、ほら、かわいいでしょう?」



「あっはっはっはっはっ! こっちも猫のかぶりものした犬っ! なんでそんな徹底してるん!? マジおかしくなくなくない!? あっ、そうだ、あーしのローブ、ちょーど傷んでたところだったんだよねー!」



「ふーん、買えばいいじゃん」



「ってかマザー聞いてよ、ブリっちってばローブ破れても買い換えずに、繕って使い続けるんだよ。マジありえなくなくない!? しかもいつも縫い目がボロボロだから、あーしが繕ってあげてんの!」



「ふーん、大きなお世話じゃん」



「あらあら、ふたりともいい子なのねぇ。でも魔力がかかっているローブは、普通の服みたいに繕っちゃダメなのよ。ちゃんとした魔法の糸と針で、専用の魔法を掛けながらでないと、ローブの魔力が落ちちゃうの」



「へぇーっ!? マジでっ!? 知らなかった!」



「でもね、このお店で買ったローブなら、持ってきてくれれば魔力を落とさずに修繕してあげるわ。新しいのを買うよりもずっと安いのよ。それにね、今なら無料キャンペーン中なの」



「ふーん、お得じゃん」



「えっ、タダで直してくれんの!? マジでありえなくなくない!? ブリっち、お願いしちゃいなよ! あーしはまた胸がキツくなってきたから、新しいの買わなきゃ……えっ? お直しもタダなん!?」



「ふーん、マジでお得じゃん」



「じゃあ、新しいの一着買って着替えて、古いほうを直してもらおうよ! ……あっ、この小さいぬいぐるみみたいなのも、わりとイケてなくなくない!?」



「ふーん、キュートじゃん」



「これはぬいぐるみ型のカイロなのよ、最近は暖かいから使ってないんだけど、こうやって使うの」



「あっはっはっはっはっ! なにそれなにそれ!? オッパイに挟むって! マジありえなくなくない!?」



「ふーん、ホットじゃん」



「ってかブリっち、さっきからそればっかじゃなくなくない!? ブリっちがコミュ障なのは知ってるけど、もっとなんか言いなって!」



「べつに言うことなんて、特にないし」



「じゃあブリちゃんには、これなんてどうかしら? このわんちゃんのしっぽみたいなのは、付けた人の感情にあわせて動くのよ」



「なにこれなにこれ!? ブリっち、マジしっぽバタバタしてなくなくない!? やっぱり、あーしと一緒でマジ楽しいんだね、あっはっはっはっはっ!」



「べつに、普通だし」



「ってかコレも買おうよ! ブリっち、他になにが欲しい?」



「べつに、どれも必要ないけど……。コレとコレとコレとアレとアレとアレとソレとソレとソレ」



「全部っ!? あっはっはっはっはっ! やっぱりブリっち、スラムドッグマートがマジでお気に入りじゃなくなくない!? じゃあ、あーしも全部買っちゃおっと!」



「あらあら、まあまあ。ふたりともいっぱい買ってくれて、ありがとう! うれしくってママ、ギューッてしちゃう!」



 ……この出来事は、絶大なるインパクトを世間に与えることとなる。


 なにせ、あのカリスマモデルである『ビッグバン・ラヴ』が……。

 ふたりそろって制服だけでなく、私服までスラムドッグマート一色になったのだから……!


 そのうえ、大聖女がふたりをギュッとしているところを、とある新聞がスクープした。

 それどころか、三人そろって『ゴルドくんカイロ』を胸に入れ、姉妹のようにはしゃぎあっている所まで……!


 これにより、第二次『ゴルドくんカイロ』ブーム、ふたたび……!

 しかも今度は関係者間のローカルではなく、国内規模……!


 いまや敬虔なる聖女も、ミステリアスな魔導女も、男勝りの女戦士も、胸に抱くは野良犬のぬいぐるみ……!


 ラヴ姉妹様々であるが、彼女たちの活躍はこれだけにとどまらなかった。


 ……ふたりはCMのあと、さらに信じられない行動に……!?

もうバレバレかもしれませんが…次回、ギャルたちの活躍!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しそうやなこの三人組は・・・(笑) 特にマザーは楽しそうやなあ・・・。 マザーは本当はこんな風に姉妹でワイワイはしゃぎたいんでしょうねえ・・・(特にオッサンの話題で) でもプリムラさんは…
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