74 オヤジの最果て支店生活 1
オヤジの最果て支店生活1日目、果たしてオヤジはかつての伝説を再現することができるのか!?
今回、オヤジの伝説挑戦にあたり、オヤジの著書を参考に当時の状況が再現されている。
いまオヤジが向かい合っているのは、山の頂上になんとか建っているボロ小屋。
簡素な板で作られたこの小屋こそが、彼に与えられた唯一の備品だったという。
当時の彼が置かれていた立場と、上司の鬼畜さが伝わってくるような状況。
常人ならとっくに逃げ出してもおかしくないはずなのに、我らがオヤジは前向きであった!
リュックサックから金槌を取り出すと、なんと!
「よぉし、まずはコイツをブッ壊すぞ! こんなボロい店じゃ客なんて来ちゃくれねぇからな! うおおおおーーーーーっ!」
まるで文明に襲いかかる原始人のように、ボロ小屋に突っ込んでいったぁ!
「どいつもコイツも、ふざけやがってぇ! 死ねやっ、死ねやっ、死ねやあっ! ゴルァ、ゴルァ、ゴルァァァ!!」
ウエハースのように粉々になっていく壁板、床、そして天井!
これも貴重な資材になるはずなのだが、上司からの施しは受けないのがオヤジ流!
しかしここで、なんとぉ!
「ゴル……ゴルァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!?!?」
興奮のあまり足を踏み外し、岸壁から落ちてしまったぁ!
転がる、転がるオヤジ!
岩山の頂上から転落し、突き出た岩にピンボールの球のように激突!
「がっ!? ぐはっ!? ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?!?」
幕開け早々、オヤジの悲鳴が伝説の地にこだまする!
医療班が駆けつけると、砂埃と血にまみれたオヤジの姿が……!
この伝説のルールとして、オヤジが重傷を負った場合のみ医療班からの治療を受けることができる。
オヤジは治癒魔法を受け、再び不死鳥のように立ち上がったぁ……!
「この程度で……くたばってたまるかよっ、ゴルァァァァァァーーーッ!!」
そして、再び勇ましく金槌を手にしようとするも……。
ここで、痛恨のミスが発覚!
「なにっ!? 金槌がねぇ!? どっかに行っちまったんだ!」
その瞬間を、真写はしっかり捉えていた!
オヤジが転げ落ちた拍子に、遙か彼方へと飛んでいく、金槌の姿を……!
「チクショォッ! まあいい、まだリュックには道具があったはずだ!」
この切り替えの速さこそが、彼が伝説の販売員と呼ばれるようになった理由かもしれない。
オヤジは次はリュックからナタを取り出すと、
「そうだ、先に木材を準備しとくか! 立派な店を作るためのな! ちょうど森もあるし!」
今度は近くにある森の中へと、分け入っていった。
そしてしばらくさまよい歩いたあと、
「よぉし、コイツがいいな! この立派な木からは、きっとすげぇ木材が採れるぞ!」
オヤジは樹齢千年はあろうかという、大木に目を付ける!
この樹木は、実はこの山のヌシとされる伝説の樹。
かつてこの山の頂上付近から発した大火があったのだが、麓への延焼をこの大木が防いだという逸話を持っているのだ。
オヤジはこの山の火事から命からがら逃げ出した経験があり、この木に救われているはずなのだが……。
ななな、なんとぉ!
命の恩人ともいえる木に、容赦なくナタを突きたてたぁ!
「まったく! どいつもコイツも、ふざけやがってぇ! 死ねやっ、死ねやっ、死ねやあっ! ゴルァ、ゴルァ、ゴルァァァ!!」
オヤジの鬼神のごときナタの乱舞が、容赦なく樹皮を削りとっていくぅ!
しかし、30分後……。
「はぁ、はぁ、はぁ……! こ、この野郎……! ぜっぜん倒れやがらねぇ!」
オヤジはすっかりへばって、根元によりかかっていた。
このヌシはオヤジが両腕を広げて、10人は集まらないと届かないほどに大きい。
小さなナタでは、ほんの少し表面をそぎ落とすことしかできないのだ。
伝説と伝説の最初の戦いは、ヌシに軍配!
そしてここで、ある異変が発生する!
「……ん? なんだ、雨か? でもまぁ、この木の下にいりゃ、何とも……ふぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!?!?」
滝のような豪雨が、オヤジを襲う!
まるでヌシの怒りに触れてしまったかのような雨に、オヤジはたまらず走り出した!
「チクショウ! なんだってこんな、急にバカみてぇに降ってきやがるんだ!?」
森を出たオヤジは、リュックが置いてあった場所へと戻る。
しかしそこで、さらなる被害が……!
「ああーーーっ!? チクショウ! リュックが開きっぱなしで、中が水びたしじゃねぇか! 誰だっ、開けっぱなしにしたヤツぁ!? 出てこい、ブッ飛ばしてやるっ、ゴルァァァ!!」
それは、オヤジ自身!
オヤジはまわりに怒鳴り散らしたあと、リュックを掴んで岩山の窪みへと駆け込む!
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……どいつもこいつも、バカにしやがってぇ! ううっ……寒い……! 寒い寒い寒い……! あっ、そうだ、荷物のなかにマッチがあったはずだ。ソイツで火を起こせば……」
オヤジはリュックをひっくり返し、水とともにこぼれ出た道具の中から、マッチを取り出す。
しかしぃ!
「ああっ!? チクショウ! しけって使い物にならねえじゃねぇか! ゴラァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
オヤジはとうとう、駄々っ子のように暴れ出したぁ!
リュックを引きちぎり、中身をあたりかまわずブン投げる!
石壁にビンが当たって割れ、中身を全身で浴びてしまう!
刺激臭のするソレはなんと、油……!
偶然なのか狙ってやってるのかはわからないが、オヤジはさらに大暴れ!
掴んだ火打ち石を、怒りに任せて振り上げたぁ!
「ゴルァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーッ!! どいつもコイツも、ふざけやがってぇぇぇぇぇぇぇーーーーっ!! 死ねやっ、死ねやっ、死ねやあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!! ゴルァ、ゴルァ、ゴルァァァァァァァーーーッ!!」
すっかりおなじみとなってしまったフレーズとともに、石を足元に叩きつけた瞬間……!
……ゴォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーッ!!
「ゴルぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?!?」
景気よく燃え上がったぁぁぁぁぁーーーっ!!
いくら暖を取るためとはいえ、のっけから破天荒、のっけから豪快すぎるぅぅぅぅぅぅぅーーーっ!!
「あぢいあぢいあぢいあぢいっ!?!? あぢぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」
火だるまでのたうち回るという、身体を張った芸を見せてくれたオヤジ!
彼の生ける伝説は、まだまだこれから……!
我らが『伝説の販売員』の、最果て支店生活は始まったばかりだっ!!
次回、オッサンがついに動き出す…!