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19 三男、ノックアウト…!

 今回の放火事件で逮捕されたのは、すべて『ゴージャスマート』の店員たち。

 ようは、ポンプのないマッチだったということである。


 そして、それが明るみになった今、親玉であるジェノサイドナックルに突きつけられていたのは……。


 ゼロ……!


 店舗再建のアテにしていた火災保険が、放火がバレてパァになってしまったという書面だった……!


 もはや泣きっ面にハチであるが、悪行の精算は、まだまだ終わらない……!


 彼は延焼のフォローを一切しなかったせいで、近隣住民から訴訟を起こされてしまったのだ……!


 ちなみに例のオッサンのケースの場合、延焼はしなかったが、彼は菓子折りを持って謝罪行脚を行っていた。


 そもそもスラムドッグマートのマニュアルには「店外の掃除は、前の通りだけでなく、全方位三軒先まで」と書かれている。


 そうやって普段からの近所付き合いを大切にしていたので、火事になっても近隣住民からの反感はそれほどでもなかったのだが……。


 翌日には組織のトップであるゴルドウルフが頭を下げに来たので、むしろ好感を抱かれるほどであった。


 もちろんそんな気の利いたことを、かの『王様の店』がするはずもない。


 しかし火事でもなんでも、放置というのは最悪の対応である。

 しかも放火をしておきながら、謝罪もなしというのは、もはや凶悪犯レベル……!


 大きな反感が、さらに大きな波乱を呼んでしまう。

 ルタンベスタだけでも100を越える店舗のゴージャスマートたちは、物理的にもイメージ的にも大炎上。


 1000を越える近隣住民から、すべて訴えを起こされ、ついには集団訴訟にまで発展してしまったのだ……!


 そしていよいよ『ゴージャスマート』のシェアは、ゼロの領域へ。

 いや、むしろマイナスの世界へと突入する……!


 それはそうだろう。

 店舗や商品どころか、客の信用すらも失ってしまったうえに、いまや憎悪の対象。


 全店撤退を余儀なくされるどころか、そのマイナスイメージが消えるまでは、関係者は近付くことすらできなくなってしまった……!


 王様は、野良犬以下のホームレスになるどころか……。

 民の手によって、この地より完全追放されてしまったのだ……!


 これにより、『スラムドッグマート』のシェアは99%に到達。

 不動なる、絶対王者の地位を手にするに至った……!


 我らがオッサン……!

 アントレアの街を完全制覇した時と同じく、ルンタベスタ領を完全制覇……!


 完・全(パーフェクト)()勝・利(ゲーム)、ふたたびっ……!!


 ……。


 …………。


 ………………。


 ……これで、めでたしめでたし……?


 否っ……!


 まだ当事者である、ジェノサイドナックルが残っている……!


 すでに彼は、泣きっ面にハチどころか……泣きっ面に航空機が突っ込んできたような、大惨事となっていたのだ……!



「うぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?!? なにもかも、なにもかもなくなっちまったど!?!?!? なんでだなんでだなんで、なんでだどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」



 鉄骨で組み上げられた『方面部長室』の中で、自分の拳が砕けるのもかまわず、頭蓋骨にヒビが入るのもかまわず、鉄柱に八つ当たり……!


 そのオンボロ本部のまわりは、すでに憲兵たちに取り囲まれているとも知らず……! 


 そう……白状していたのだ。

 捕らえられた放火魔が、全員……!



「スラムドッグマートの放火も、自分がやりました! 方面部長の命令で! やらないと、首をねじ切るって脅されたんです!」



 そうなると当然のように及ぶ、取り調べの手。

 彼は里に降りてきたクマのように暴れ、催眠魔法まで持ち出され、取り押さえられてしまった……!


 しかし彼は、認めなかった。

 鎖に繋がれた取調室のなかで、駄々っ子のように首を左右に振り続けたのだ。



「しらないしらないしらない! おで、なんにもしらない! なーんにもしらないど!」



 彼が本当に愚かなのは、疑いようもない事実である。

 しかしそれが純粋さから来るものであれば、まだ良かった。


 素直に罪を認めれば、まだ『更生の余地あり』と判断されていたかもしれない。

 『有責カウンター』の加算は、ここでストップしていたかもしれない。


 しかし、彼は……!

 彼はすでに、腐りきっていたのだ……!



「そうだ! きっとかってにやったんだ! おでにないしょで、店員たちがこっそりと! だからおでは、ぜんぜんわるくない! わるいのはぜんぶ、あいつらなんだど!!」



 なんと、自分が助かりたいがために、罪をすべて実行犯になすりつけたのだ……!


 これにはさすがに、彼の下で働いていた従業員たちも目を覚ました。


 無理もないだろう。

 放火の指示をしておきながら、明るみに出たら見苦しく言い逃れする上司など、もはや無価値……!


 焼け残った、鉄クズ同然……!


 いままでは、どれだけ理不尽な暴力受けても耐えていた店員たちが、次々と退職。

 彼らはようやく、長きに渡る洗脳から解放された。


 ジェノサイドナックルは保身に走るあまり、『人材』までも手放してしまったのだ……!


 無能な彼は、それがどれだけ大切なものか、気づくこともないだろう。

 そして彼にはもう、なにもない……?


 いや……!

 今までどんなに彼がクソバカでも、決して見捨てなかった人物がひとり、残っているではないか……!



「……お願いだ! ジェノサイドナックルは俺のかわいい息子なんだ!」



 ジェノサイドダディは勇者上層部の前で、生まれて初めての土下座をしていた。

 非情の皆殺しオヤジも、さすがに人の親であったようだ。


 しかしその息子はというと、遠く離れた地にある憲兵局の取調室のなかで、



「あっ! 思い出したど! オヤジだ! オヤジが店員にめいれいしてたんだ!」



 絶賛、オヤジを売り渡し中……!

 親の心、子知らず……!



「アイツはなんも悪くねぇ! 悪いのはゴージャスマートのシェアを奪った野良犬どもだ!」



 必死にかばうオヤジ、それとシンクロするかのように、



「おではなんも悪くねぇ! 悪いのはオヤジと、そのオヤジにだまされた店員どもだ!」



 三男は、かばうオヤジの背中を押しまくる……!



「もちろん、方面部長からは外す! 俺の元で、いちからやり直させる!」



「あのダメオヤジは、そのうちクビになるんだど! おでが『ぶちょう』になるから、つかまえるなら、あっちにするんだど!」



「ルタンベスタの穴も俺がなんとか埋めるから、堕天だけは……! 極刑だけは勘弁してくれ! ゴルァァァァァ!!」



「すぐにつかまえないと……いや、ころさないとたいへんなことになるんだど! あのオヤジはまた火をつけるんだど! なにもかも、もやしてしまうんだど!」



 ある意味、『この親にしてこの息子あり』といった、往生際の悪さ……!


 しかし皮肉にも、これが功を奏す。


 この世界での勇者の証言は、庶民よりも遥かに重い。

 いくら100人をこえる実行犯たちがジェノサイドナックルを告発しても、彼自身が認めないかぎりは有罪にできないのだ。


 勇者の証言をも吹き飛ばすほどの、確たる証拠がない限りは……!


 しかし、表の司法はそうであっても、その裏にいる勇者たちの上層部は甘くはない。

 オヤジの一世一代の土下座も虚しく、ジェノサイドナックルには即日極刑が言い渡された。


 さらにその任命責任として、ジェノサイドダディに『失点10』が課せられる……!


 ……ここで、失点1の重さがどのくらいものものか、簡単に説明しておこう。


 ようは、ヤクザの『オトシマエ』。

 1点につき、身体のある部分がひとつなくなる。


 ……さて、そろそろお気づきになっただろうか? 

 あの(●●)オッサンの、影を……!


 オッサンは、敵のシステムである『勇者の賞罰』を、逆に利用していた。

 法の手が及ばない存在を、もはや自ら罠など仕掛けることもなく……。


 闇から闇へと、葬ってみせたのだ……!


 ゴルドウルフ、調勇者(ちょうゆうしゃ)ジェノサイドナックル・ゴージャスティスを……!


 影縫(キャッチ)(・アンド・)成敗(イレース)……!


--------------------


御神(ごしん)級(会長)

 ゴッドスマイル


準神(じゅんしん)級(社長)

 ディン・ディン・ディンギル

 ブタフトッタ

 ノーワンリヴズ・フォーエバー

 マリーブラッドHQ(ハーレークイーン)


熾天(してん)級(副社長)

 キティーガイサー


智天(ちてん)級(大国本部長)

座天(ざてん)級(大国副部長)

主天(しゅてん)級(小国部長)

 ジェノサイドダディ(失点11)


力天(りきてん)級(小国副部長)

能天(のうてん)級(方面部長)

 ゴルドウルフ

 ジェノサイドロアー

 ジェノサイドファング


権天(けんてん)級(支部長)


大天(だいてん)級(店長)

小天(しょうてん)級(役職なし)


堕天(だてん)

 ↓降格:ジェノサイドナックル


 ミッドナイトシャッフラー、ダイヤモンドリッチネル、クリムゾンティーガー

 ライドボーイ・ランス、ジャベリン、スピア、オクスタン


 名もなき戦勇者(せんゆうしゃ) 105名

 名もなき創勇者(そうゆうしゃ) 52名

 名もなき調勇者(ちょうゆうしゃ) 102名

 名もなき導勇者(どうゆうしゃ) 148名


--------------------


 『皆殺し(ジェノサイド)家族(ファミリー)』との4連戦。

 その先鋒である三男を、オッサンはあっさりとTKOテクニカルノックアウト……!


 そして戦いの場は、トルクルム領へ。

 弁立(べんたつ)の方面部長、次男ジェノサイドファングとの全面戦争……!


 ちなみに攻め込むための兵士については、すでに潤沢であった。

 なぜならばオッサンは、ルタンベスタ領の『ゴージャスマート』から大量辞職した店員たちを、すべて雇っていたから……!

ジェノサイドナックルへの末路については、最後の勇者ざまぁ、今章のクライマックスで扱う予定ですのでもう少々お待ちください。


そして第3章の『ジェノサイドナックル編』はこれにて終了になります。

1日お休みを頂いたあと、2話ほど閑話を挟んで、第3章の『ジェノサイドファング編』に入りたいとます。


ちょうどいい区切りですので、感想や評価をいただけると嬉しいです!

それが弾みとなって、さらにパワーアップした新展開をお届けできると思います!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 愚図!! 愚鈍!! 愚劣!! 案の定、呆気なき結末!! 正に愚者!! ジェノサイドナックル!!! ご愁傷様でした・・・!(爆笑!!) そして憐れなり、ジェノサイドダディ!! 正に、この親…
[一言] 泣きっ面にホーネット(F/A-18)… 上手い
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