「小説家になろう」は宗教だ!
「またまた、いきなりどうしたんですか。僕は運営会社のヒナプロジェクトさんがイエスキリストだとは流石に思えないですけどね」
「まあ聞きたまえ。いいかい?そもそも、宗教とは何のためにある?」
「そうですね。人が豊かに暮らして行くためではないですか?」
「そう。豊かに暮らすため。それは間違いじゃない。だがそれよりも、笑顔で死ぬためにこそ、宗教が必要なのだと私は考えた」
「『笑顔で死ぬ』ですか」
「そうだ。私もそれほど詳しい訳ではないがね、多くの宗教は死後の世界が信じられている」
「いいことをすれば天国に、悪いことをすれば地獄にってとこですか」
「その通り。多くの信者は戒律を守り、その戒律を守る事によって、自分は『天国に行ける』と安心して死を迎えられるのではないかと」
「なるほど」
「そう、つまり『小説家になろう』は宗教だ!」
「これまた飛躍しましたね。どうしてそうなったのか、一応聞きましょうか」
「うむ、異世界転生を信じて、笑顔で死ぬことができれば、それはもう一つの宗教なのではないかと」
「いささか暴論ですね。つまり、小説家になろうが聖書って事ですか」
「そう。聖書もたくさんの人によって書かれている。例えば、聖書というくくりの中で、旧約聖書を書いたのはモーセだ。それと同じように、小説家になろうという聖書の中で、無〇転生を書いた理不尽な〇の手になる訳だ」
「無茶苦茶な事を言ってる自覚はあるんですか。仮にそうだとしたら小説家になろう何万文字あるんですか。膨大すぎるでしょ」
「要約すれば、『人を助ければ転生できる可能性があるから、進んで人助けをしましょう』って内容が多いからまとめてくれればいい」
「他の作者の方に喧嘩売ってるんですか。名作をそんな気軽にまとめようとしないでください」
「そもそも、多くのなろう小説は神の存在をほのめかしているだろう?キリストには触れる事で病人を癒すエピソードがあった。小説家になろうではチートという神の力のエピソードがちょっと多いだけだ」
「いい加減にしろ。それだと異世界召喚とかはどういう扱いにするんですか」
「それは、いつ異世界に召喚されても内政チートができるように知識を蓄えておきましょう、と読み解く」
「こじつけじゃないですか」
「まぁ、つまり」
「つまり?」
「辛い勉強も、ちょっと見方を変えてみて、毎日楽しく生きようぜって事さ」
「はぁ……」
そして、先輩は去って行った。
もしかしたら、勉強のやる気が出ずに悩んでいた僕を、遠回しに慰めてくれたのかもしれない。
「まぁ、異世界で知識チートする為にも、二次関数から頑張りますか」
僕はくるりとペンを回して、机に向き直った。
神父さんとお坊さんと飲んでる時にいろいろ話を聞いて、思いついたお話でした。