4話 家族裁判 開廷![しかし人数が足りない]
前回で省いた話を書かせて貰いました。
ロリ神が朧月家にやってきたお話です。
冬流の家族が出てきます。
「冬流くん……」
「お兄ちゃん……」
「は、はい、何でしょう……母さん、美春……」
「「正座」」
「はい……」
幼馴染みと、ロリ神に見守られる中……
俺は母と妹の前で正座させられていた。
こうなってしまったのは、現在ソファで俺を見つめているロリ神、イワナのせいだ。
こいつを天界に返すために、俺はラブコメをしなければならない。
そのために、どうすれば良いかを話すために家へ招き入れたのだ。……誰にも言わずに。
だってそうだろう?いきなり幼女を連れてきて、こいつ神で返すためにラブコメをします、その作戦会議をします、なんて言えば警察か病院行きだ。
家族にバレないよう、イワナを担いで2階にある自室へ向かった。しかし、そこへ偶然隣の部屋から出てきた俺の妹、朧月美春にバレてしまったんだ。
「お兄ちゃん……その子、誰? 」
「あ、いや、これは……」
「だれ? 」
「ひぃ!! 美春! 頼むからその手に持ったハサミをチョキチョキしながらお兄ちゃんの股間見ないでくれるか!? 」
ふわ、とウェーブのかかった桃色の髪に常に眠そうな瞳、小さな体の8歳児。
それが俺の妹、美春なのだがどうやら機嫌が悪いらしい。
ヤンデレを彷彿させるような表情で俺と背中に居るイワナを見ている。
もちろんそれだけに留まらず……。
「あらあら、冬流くん……ついに犯罪をしでかしたのね」
「母さん!? 」
ご飯ができたと妹に知らせに来た母さんに見つかってしまった。
それが原因で……。
「冬流くん、母さんは悲しいです。可愛い息子が幼女に手を出すなんて」
「違う!俺はそうじゃなくて……! 」
「お兄ちゃん……ろりこんさん? 」
「違うんだ春美ぃぃ! 」
母と妹から善からぬ疑惑をかけられているのだ。
学級裁判ならぬ家族裁判開廷か……どんなお仕置きされるんだろうなぁ。
一方その頃、この家族会議の原因であるイワナは幼馴染みの由紀とソファでゲームの話をして盛り上がっている。
いつの間に打ち解けたのだろうか。
スパーンッ
「ぶべっ!! 」
「冬流くん、説教中に余所見ですか? 」
「すみません!反省してます、はい!」
この人は俺の母、朧月秋螺。
いつも聖母のように微笑んでいて優しいのだが、感情が露わになるとドSで、すぐに手が出る恐ろしい母なのだ。
(なんせ……死んだ親父の死体に『起きて、ねぇ、起きてよ』とビンタしてたからな……)
ただ、この母が居てくれるからこそ……家の中では"本当"の自分を出すことが出来る。
ただ、状況が状況なだけに本当に怖い。
「あの、母さん……俺の話を聞いてくれ」
カチカチカチカチ
「お兄ちゃん、私を忘れてるよ……? 」
「春美も! 」
お願いだからカッターの刃を出すのやめてくれ。
「コイツ、イワナは……なんか、天界から堕とされた神様らしくて、俺がラブコメをしないと帰れないらしいんだよ!だから、どうすればいいのか話すために部屋に入れようとしたんだよ! 」
信じて――――と頭を下げる。
顔を上げるのが怖い。
なんと言われるのだろうか、またビンタをされるのだろうか。通報されるのだろうか、病院行きになるのだろうか。
俺は答えを待つ。
それから何秒たっただろうか。
一秒一秒が長く感じる。
そして、母が口を開いた。
「わかりました、母さんは息子のことを信じます」
「へ?」
返ってきた言葉に俺は素っ頓狂な声を出してしまう。
「聞こえなかったの? 信じるって言ったんだけど……」
「で、でも……」
「お兄ちゃんは嘘をつかないって私も、母さんも……由紀お姉ちゃんも知ってるから」
「美春……母さん……」
名前を出された由紀本人は「え? ボク? 」とこちらを見て首をかしげている。
よかった……信じてもらえたんだな……。
「それに、冬流くんが恋が出来るようになるなんて……ふふ、最高じゃない? 」
「む?話はまとまったのか? 」
痺れを切らしたのか、由紀と話していたイワナがこちらに歩いてきた。
「ふふ、イワナちゃん……と言ったわね、私の息子をよろしくお願いしますね? 」
「ちょっ、母さん!? 」
突然、意味深に聞こえる言葉を投げる母に驚きの声をあげる。
「ふむふむ、つまりトールはラブコメ展開を迎えなきゃならないんだねぇ、これはボクも頑張らないと! 」
「由紀、茶化すのはヤメロ!! 」
「お兄ちゃん……ふぁぁ……お兄ちゃんは誰にも渡さない 」
「お願い、少し黙っててくれない!? 」
ツッコミが追いつかねぇ…ヤバイぞ。
「かっかっか、よし、しっかり働いて貰うぞ、冬流よ! 」
「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
こうして、ツッコミどころ満載の家族裁判は閉廷し、無事疑いが晴れたが、イワナ騒動はそれだけでは終わらなかった。
「そういえば……イワナちゃんの住む場所……どうすればいいのかしら」
「……お兄ちゃんが、ろりこんさんじゃないなら、お兄ちゃんの部屋でいいと思うよー……? 」
「おい!? 」
なんて事を言う、妹よ!
「私は一向に構わん! 」
なんで偉そうなの、お前は……いや神だから偉いけど。
「はぁ……仕方ないな……」
「はいはーい、話がまとまったようなのでー、ご飯にしましょう! 」
キッチンから顔を出した由紀が料理を運んできてテーブルに並べ始める。
あぁ、また騒がしくなるんだな……。
厄介な物件を授かったが、これはこれでいいのかもしれない。
ラブコメ展開は拒否してやるけどな?
「む?!う、うまい! 」
「ふふーん、ボクの手作りだからねぇ」
「由紀ちゃんいつもありがとうね? 」
「……おいしい」
騒がしい食卓、
いつも食べている幼馴染みの料理が、普段より美味いような気がした。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
楽しみながら執筆していますが、誤字脱字があるかと思われますので、気付いたら教えてください!
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