━シティ・ライフ━
いつしか周りには近代的なオブジェクトが増え、地面も土からメタリックな質感の床に変わっていた。
その地面から伸びる木々は、高いビルに成り代わっていた。この世界がいかにして機械的な発展を遂げてきたかが、よくわかる。辺りを歩く人影も、ロボットらしきものが多く見られる。
近くの看板には、『ディジタル・タウン』の文字。この看板の先はこの街である、という証。
「━なんか、ずいぶん未来的な街ねぇ。あのビルなんか、見上げるだけで首が痛くなりそうね…まぁ見上げなきゃいいんだけど」
「俺は好かんなぁ…何と言うか、もっと自然の多いトコがいいんだ。ずっと、そうやって生きてきたんだ。ずっとな」
「ふぅん…まぁ言いたい事はわかるわ。正直、都会の喧騒なんてずっと聞いてたら気がおかしくなりそうだもん。そんなもんよりはもっとこう、自然的な音がいちばんよね」
「よくわかってるじゃねぇか。ますますお前と出会えてよかったぜ」
「そう言ってもらえると嬉しいわ…ん?」
向こうから、一人の男が近づいてくる。
「君たち、この辺りじゃ見ない顔だけど…」
「ああ、あたしたちは転移者よ」
「そうかい。しかし、嫌な時に来ちゃったねぇ。最近はやたらロボット犯罪が増えてるからね。ところで、ここに来たのなら外れにある魔法使い姉妹の家に行ってみたらどうだい?」
「なんでだよ?」
「なんでだろうね。でも何故か、君たちには言っておかなきゃいけない気がしたんだ」
「そう…って、あれ?今魔法使いって居なくなったんじゃ…」
「力が弱まっているだけさ。全く居なくなった訳じゃない。でも、この今起こっている騒ぎを抑えるだけの力は…ないかな。まぁ魔法の使えない僕が言っても説得力なんかないし、実際に会ってみるのがいちばんだよ」
「まぁ…そうだな」
「おっと、長話が過ぎたね。じゃあ、僕はこれで。いい旅を」
男はそう言うと、人混みの中に溶けた。
「なんか…やけに親切だったわね。でも、なんかいい情報くれたから…行ってみよっか?」
「面白そうだな。そうするか」
二人は街外れを目指した。
少しだけ視界に緑が増えてくる。と同時にポツンと小さめの家が見えてきた。
「あ、あれかしら?」
「だな…って、家の前に誰かいるぞ?」
玄関扉の前に、レインコートを着て傘を持っている女性の姿。
「あの、もしもし?」
ブライトは女性に声をかけた。
「…あなた達は?」
「通りすがりの転移者よ」
「転移者…ですか?本当に?」
「ああ、そうだ」
「…あの、突然で申し訳ないのですが…お願いを聞いてもらえませんか?」
「お願い?」
「はい…実は、私の妹が戻らないのです」
「え?」
「一昨日、森に出掛けたきり…何かいけない事に巻き込まれているのでは、と心配で…」
「お前は探しに行かないのか?」
「探しに行きたいのですが、家を空ける訳には…もう一人の妹も、ずっと家にいる訳ではないので…」
「そっか…じゃあ、あたしたちが探してみようか?」
「本当ですか?助かります…」
「で、俺達が探しに行くとして、その妹さんの特徴を教えてくれよ」
「緑色の髪の毛に、オッドアイの女の子です」
「オッドアイ…ね。わかったわ」
「ありがとうございます。助かります…あ、まだ自己紹介がまだでしたね。私はレイニーズと言います。『水流魔術』という魔法が使えます。話は聞いていると思いますが、私たち姉妹は全員魔法使いなのです」
「ああ、そんなこと言ってたな」
「はい。では…お願いします。もう一人の妹が帰ってきたら、私も探すのを手伝いますので…」
レイニーズは家の中に入っていった。
「…行くか、ブライト」
「そうね」