━リターン・ライフ━
少女の身体が淡い光に包まれる。
「ブラック、これは…」
シードが思わず口にする。
「黙ってろって言ったろ。集中力がいるんだよ」
「す、すまない」
「わかったなら口を開くな」
ブラックはまた意識を少女に捧げる。
数分後。
「━ん、うう… あ、あれ?ここは…」
「あっ、気がついた?」
少女は瞼を開き、上体を起こした。
「メタリカ!」
「え…あっ、シード!?どうして…」
「二日前にお前が近くで倒れてるのを見つけた」
「ふつか…?そ、そんなに?」
「もう目を覚まさないかと心配していたんだ。そこへ彼らが…」
「そういえば、お兄ちゃん達は…?」
「ブラックだ」
「ブライトよ。よろしくね」
「へぇ…あ、えっと、あたしはメタリカって言うんだ。それで…よく分からないけど、助けてくれてありがとう。ところで、どうしてあたしを?」
「頼まれたのよ、あんたのお姉さんにね」
「レインお姉ちゃんに?」
「ええ。妹が戻らないから捜してくれ、ってね」
「そうなんだ…心配かけちゃったかな」
「とにかく、早いとこ元気な顔見せてあげなさい」
「うんっ!」
「じゃあ、さっさと帰るぞ」
「そうね…でも、どこから?」
「はいはーい!あたし、知ってるよ!」
「…まぁ、この森に関してはこいつの方が詳しいに決まってらぁな。道案内、頼んでいいか」
「まっかせといて!こっちだよ、ついてきて!」
メタリカは元気に走り出した。
「ついさっきまで気絶してたってのに、ずいぶん元気な奴だな」
「いいじゃない。元気なのはいいことでしょ」
「そうだぞ」
「まぁ…そうだが」
「何かあるの?」
「別に。ただ…調子が狂う」
「なんで?」
「俺と雰囲気が違いすぎる。…確か、前の世界で一緒に旅してたのもあいつみたいな明るすぎる奴だったよ」
「嫌だったの?」
「違う。俺もあいつの事は悪く思ってなかったし、むしろ気に入ってた」
「なんで?」
「なんでだろうな。俺にも分かんねぇや。ただ…あいつは人を惹きつける何かを持ってた。俺には縁もゆかりもねぇもんだ。ずっと日陰者として生きてきた俺には勿体無さすぎるほどの、な」
「へぇ…そこまで言うんならきっと素敵な子だったのね」
「素敵かどうかは置いといて、間違いなくあいつの存在は俺にとって大きなものだった。ある意味…あの時間が俺の生き方を変えてくれた」
「……」
「な、何だよ?」
「じゃあ、あたしがそれ以上の存在になればいいのね?」
「はぁ?」
「せっかく相棒としてあんたと契約したんだもの、それくらいは…ね?」
「ずいぶんとハードル上げるんだな」
「ふふん。あたしは自分で越えられないハードルは用意しないわ。安心しなさい」
「(…やっぱり、こいつは変な女だよ)」