━ヒール・ライフ━
ブライトとシードはしばらくお互いに顔を見つめあわせ、無言の時間が続く。
冷たい風が木の葉を揺らし、草の間を抜ける。ブライトはときたま身体を震えさせていて、寒さを感じさせる。
「…寒いのか?」
シードがブライトに話しかける。
「ええ、寒いわ。そういえばあんたはロボットだから寒さとかとは無縁なのね」
「そうでもない。確かにこの程度なら関係ないが、あまりにも極端だと私の動力炉に影響が出る」
「どうなるの?」
「あまりにも暑いと動力炉がオーバーヒートするし、あまりにも寒いと停止してしまう。もちろんそれに対応した造りになっていれば別だが」
「ふぅん。ロボットはロボットで大変なのね」
「人間よりはマシだ」
「まぁ、そうね」
さらに時間がすぎた頃。
「…ん、うう…」
「あっ」
ブラックが目を覚ました。
「俺は…今まで何を」
「今まで眠ってたのよ」
「そうか」
ブラックは上体を起こし、周囲を見回す。すぐに自分と同じように横になっている少女の姿が目についた。
「あいつは…?」
「メタリカだ」
「お前は…さっきの。それに、メタリカって…あの女の事か?」
「そうだ。私はシード。先刻は悪い事をした。私もあの時は気が立っていたんだ」
「いや、まぁ…別にそれはもう構わねぇんだけど、あの女がもしかして俺達の探していた女なのか?」
「そうらしいわ。だから、あんたの力を借りたいの」
「俺の? …ああ、そうか。わかった」
「助かるわぁ。あたしはそういう力がないから…」
「…この力も本当は俺のもんじゃないがな」
「へ?」
「こことは前にいた世界でな、『癒魔』を名乗る女と一緒に旅をする機会があって、そいつに教えてもらったんだ」
「へぇ。あんたも隅に置けないわね」
「そいつはいろんな世界で仕事やってるらしいから、もしかしたらこの世界にも来てるかもな」
「ぜひともお目にかかりたいわね。あんたが誰かと一緒に旅してたなんて、よっぽどの変わり者よね」
「別にそんな事はない。それより、ちょっとだけ黙っててくれるか」
「わかったわ」
「━始めるぞ」
ブラックは少女の身体に手をかざし、目を閉じる。すぐに、辺りの空気が渦巻くのがわかった。
「これは…」