━インテンス・ライフ━
ブライトは少女を見つめる。
「どうかしたのか」
「なんでもないわ。ただ…」
「ただ?」
「なんというか…不思議な雰囲気を感じるから」
「当然だ。彼女も含めてあの姉妹は全員魔法使いだからな」
「それは知ってるけど、この子の力は…あの二人よりずっと強いわ。魔力がそんな簡単にここまで増幅するとは思えないから、たぶん最初からこれだけの力を持っていたんだろうけど、だとしたらどうやってこんな量を溜め込んでいられるのかしら」
「私はロボットだからそのあたりの事はわからない。貴様はどう考えているんだ」
「魔力っていうのは、身体の中にそれを溜める器のようなものがあるの。基本はその器以上に力を溜める事はできないんだけど、この子の身体にこんな量の魔力を溜められる器があるようには思えないのよね。だから…何か特別な方法で器を大きくしているとか、邪推しちゃう」
「その…器とかいうもの以上に魔力を溜めるとどうなるんだ?」
「さて、どうなるのかしら。ブラックも似たような事を言っていたけど…たぶん、魔力を身体が抑えきれなくなって暴走するでしょうね。でもこれに関しては本人の問題でしかなくて、あたしたちがどうこうできる問題じゃないの。本人の魔力なんか、本人にしかコントロールできないし、考えるだけ無駄ってもんよ」
「…」
「どうしたの?薄情者とでも思ったかしら。言っておくけど、こればかりは本当にどうしようもないんだからね。あたしも、ブラックも、手の出しようがないわ」
「…人間というのは、不便なものだな」
「そうね。それに関しては間違いないわ。でも、人間だからこそ実現できることだってあるのよ。例えば、今あんたがここにいられるのは人間が造り出したからよ。これは他の生き物には成し得なかった事」
「だが、今そのロボットによって人間が攻撃されていると聞いている。なぜロボットは自分達を造ってくれた人間を攻撃するんだ?」
「さぁね。『飼い犬に手を咬まれる』ってのは、こういうことなのかしら?まぁ実際はもっと複雑な事情があるんでしょうけど。人間同士の間で確執や嫉妬みたいな感情が生まれるくらいなんだから。ましてや、心を持っているなら尚更よ。心や感情がある限り、永遠にそういう争いが絶えることはないわ」
「それは…なぜなんだ?」
「簡単な事よ。だって『自分で考える』事ができるじゃない。心や感情がなければそういう余計な事に至る経路はないから、まずそんな発想に至らないし、そもそも発想することさえもできないから絶対にその段階に達することはないわ。でも心や感情があるなら、その『一線』を楽に越えられる。その先に待っているものはさっき言った『確執』とか『嫉妬』みたいな『負』の感情になるわ。あんたも心を持つ以上、人間と同じように考える事ができるわけじゃない。だから…まぁ、せめて、余計な考えは起こさないで。それで後悔するのは、きっとあんただけじゃない。この森の奴らや、あの姉妹たちも…」
「…考えておく」
「わかったわ。いい答え、期待してるから」