小太りの男
「この写真を見てください。」
刑事から手渡された写真には、
小太りの男。
「あの。一目で違ってわかりません?
夫は、こんなに太っていません。」
「あっ、いや、それはカメラの問題で。。。
それより、この着ている服とか、
智幸さんのものではありませんか?」
「私は、見たことありません。
。。。と、いうか、夫の服、
どんなものを持っているのか、
はっきりとはわかりません。」
「えっ? 夫婦でしょう?」
そんな事を言われても、
元々、同棲生活からの結婚で、
普段、着る服は、
いつも似たようなものばかり。
私と暮らしはじめてから、
ただ、持っているだけで着ていない服って
かなりあるんじゃないだろうか?
「それじゃ、このジーパン!
同じもの、いや、同じ色のものを
持っていませんか?」
ジーパン。。。
一瞬、夫が捨てたというジーパンの事が、
頭をよぎった。
いや。。。 いや、いや。
ない ない ない
そんなわけない!
でも、安易に話してしまったら、
ますます、夫が疑われる。
「同じ色かと言われても。。。
ジーパンですから、
どれも似たようなものでしょう?
有るとも無いとも言えません。」
車の中では、
私の味方みたいな感じの事を
言っていたけれど。。。
私を見る目は、
完全に疑っているとしか思えないものだった。
『 ダマサレナイ 』
再度、心に強く違う誓う。
『 ダマサレル モノカ 』
トン トン トン 。。。
しばらくして
ドアをノックする音が聞こえる。
刑事が扉に向かい、
ドアの外にいた人と何か話している。
あっ、やっぱり無罪だったのね。
ねえ、早く、私達家族を帰してよ。




