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あの夏の日

作者: ミッキー

友達と山にバーベキューをしに来たはずの藤沢 木乃葉は何故かその山にある底無し沼に惹かれていった。

誰かが手招きしているように…


(コノハ…コノハ…取り替えっこだね)



またこの夢…



夏のこの日になると、いつも同じ夢を見る。


1996年8月

私は藤沢木乃葉。

某N女子大に通う1年生である。

これから語る出来事はこの夏の日の夢に関わる不思議な話である。



大学1年の夏、自然愛好会というサークルに入っていた私は田舎でキャンプをすることになった。

自然愛好会と言ってもバーベキューや花火を自然の中で楽しむゆる〜い学生らしいサークルだ。



私の祖父母の家が田舎で、学生である私達は節約のため

私の祖父母の家にお泊まりキャンプをする事になった。



「木乃葉、麻美、準備できた?」




「絵里子ー、バナナはおやつに入る?」




「はいはい、おやつ制限はないから、ご自由にぃー」




私達のサークルは全員で3人、と言うのも絵里子と麻美は高校が一緒の仲良しで、同じ大学に入り自分達でサークルを作ったからだ。



ガタン、ガタ、ゴトン。



電車に2、3時間揺られながら到着した。



「うっわ〜、木乃葉のお祖父ちゃん家、超山中じゃん…」



「まぁね、…麻美、着いたよ 起きなよ」



ゆさゆさ…



「ふぇ…もう朝?」



「昼だよ!!ここから歩きだからシャキッとしてね?」



そんなこんなで駅から歩き始めた。

山道は昔のままで、木漏れ日が差し込み気持ち良く歩いていった。



「ねぇー木乃葉ぁーまーだー?」



「あと少し、ガンバ麻美!」



「麻美は体力ねーもんな」



「えーひどぉーい、絵里子がありすぎなんだよぉ」




そんな事を話てる間に祖父母の家に到着した。



「おやおや、コノちゃん、よぉ来たねぇ」



「お婆ちゃん、久しぶり!元気そうだね!

あっ、こっちの気の強そうなのが絵里子、そっちのオットリ系が麻美」



「何だよ、その紹介‼︎

あっ…木乃葉さんの友達の近藤絵里子です」



「林麻美です、3日間よろしくですー」




「ええ、ええ、どうぞお上がりになって下さいな」



こうして楽しいキャンプになるはずだった…



「じゃあ、さっそく行こっか?

此処ねキレイな湖があるの、そこでバーベキューしよ!」



「よし!ゴー!!」



「コノちゃん、その前にサトちゃんにお線香あげてきなさい」



「あっ…」



「私は小さく嗚咽をもらした。

サトちゃんとは藤沢悟、私の兄だった人だ。

子供の頃私は兄が好きでいつも兄の後ろにくっ付いて回っていた。

でもある夏の日、兄は不慮の事故で死んだ…」




「…は…のは、木乃葉!大丈夫?」



「…ん?あぁ、平気平気 行こっ!」



少し気持ちが重くなりつつ、みんなと湖に出掛けた。

湖に着くと、そんな気持ちも吹き飛んだ。水面はキラキラ光り空気は澄んで気持ち良い

そこで私達はバーベキューをする事にした。



「麻美ー、炭持ってきてー」



「はーい」



「じゃあ私は野菜でも切って…」



その時麻美がこっちに走って来た。



「ねぇねぇ、向こうに可愛い女の子が居たけど地元の子かな?

一緒にバーベキュー誘わない?」




「女の子?この辺に子供は居ないと思ったけど…」



「でも、あそこに………あれっ?」



「麻美は時々ボーッとしてるからなぁ」



「もー!絵里子またバカにしてぇ」


アハハハッ



私は少し気になったがそのまま流し

バーベキューも終わりお腹もいっぱいになった私達は湖で泳ぐ事にした。



「よし、絵里子!麻美!ちゃんと水着着て来たかな?!」



「もちの!」


「ろん!」



「宜しい、では…」



バッ‼︎


「キャー!絵里子のビキニちょーダイターン!!」



「ていうか、麻美の胸デカすぎ…」



「…お二人さん、ここ男子校の合宿所あるんですケド…」



「げっ…!マジかっ!!」



「イヤーーァァ!!」



「冗談‼︎」



「木乃葉ぁー‼︎コラー!まてー‼︎」



ザァバアァァァ!



ワー、ワー、キャーキャー、ヤメロー!



こうして夕暮れまで楽しく遊んでいた。



「そろそろ日も暮れてきたし、戻ろっか?」


その時


「あっ!あの子だよ、ほら白のワンピの子!」



「…ユリカ…」



私はその子の顔を見た瞬間、真っ青になってガタガタ震え出した。

何故なら兄を殺したのは彼女だからである。


私は彼女がこの世の者でないことはすぐに解った、兄が死んでから十数年経つのに昔と変わらぬ姿だったからである。



私はみんなを急かし、祖父母の家に戻った。動揺していた私は帰って来ていた祖父に泣きついていた。

絵里子も麻美も顔を見合わせ困った様子でいる

落ち着いた私は二人に【底無し沼】の話をし始めた。



【底無し沼】そこは禁じられた危険な場所、その沼ではずっと昔から何人もの子供が亡くなっている。

私の兄もその一人だった………



子供の頃、好奇心旺盛だった私と兄は禁じられていた底無し沼によく遊びに行っていたのだ、ある日しばらく沼の周りで遊び帰ろうとした時彼女は現れた。



【ユリカ】と名乗り白のワンピースに長い髪、肌は透き通る様に白く綺麗だった。

歳は2歳上の兄と同じ位だったと思う。

それこら沼の近くでよく3人で遊ぶようになった。


でも、ある雨の日、ユリカが兄を沼に引きずり込んだのだ………その後、村中の人が沼の捜索をしたが遺体はあがらなかった。



この話の後、3人で相談した結果、翌朝帰る事にした。



「お祖父ちゃん、お婆ちゃんゴメンね……」



「ええんよ、落ち着いたらまた来なさいな」



「お世話になりました…」



こうして山道を下っていったが…何故かどおしても沼にまだいる兄の供養をしなければならないという強い思いに駆られた。



最初ふたりは猛烈に反対していたが、私の必死の説得に頷いた。



「あの話の後だと、さすがに…」



「わたし…泣きそうだよ…」




絵里子も麻美もそして私も小刻みに震えている。

そしてようやく沼までたどり着いた。

山道で摘んだ花を沼の脇に供え、手を併せ供養し帰ろうとした時、、



《やっと遊びに来てくれたねコノハ、ユリカ嬉しい…》



私の後ろにユリカが立っている、3人とも硬直した。



《コノハ、もうずっと一緒だね…



その瞬間、ユリカは私を底無し沼に突き落とした。




「イヤヤヤヤヤヤヤァァァァ!!!」



身体が沼にどんどん沈んでいく…そんな中 忘れていた、いや、消し去っていた記憶がフラッシュバックした。そう…沼での真実を…



私は兄が大好きだった。

沼に行き始め、兄は私よりユリカと遊ぶようになった。

家でも兄はユリカの事ばかり話すようになり私は幼いながらもユリカに嫉妬心を抱いていった。


ある夏の雨の日、私は沼にユリカと二人きりで行き



「取り替えっこしよう」



と持ちかけた。


ユリカは前々から私の持っていたブローチを羨ましそうに眺めていた。

そこで、ユリカがいつも付けている髪飾りと交換してもいいと言ったのだ。


ユリカは喜んだ、私はワザとブローチを沼の脇に落とした、そしてユリカがブローチを拾おうとしたとき…

私はユリカの背中を押した。


ユリカは雨の中、沼に落ちていく…

そこに隠れて付けてきていたのか兄が飛び出してきた。

兄はユリカを助けようと沼に飛び込み二人は沈んでいった……

私は怖くなりソコから逃げ出したのだ……


薄れゆく意識の中、私は絶望していった。



「…のは…こは…木乃葉‼︎諦めるなよ‼︎」



…絵里子の手…



「村の人呼んできたよ!!!」



…麻美の声…



「木乃葉ー!!コノちゃーん!竹竿と縄だ‼︎急げー!!!」



…お祖父ちゃん、お婆ちゃん…



祖父母と村の人が私を沼から引きずり出した。

その時私と一緒に子供の白骨遺体が沼から引き出された。




「うっ、う、ゴメンナサァァァァイ!!!ああぁぁ、ゴメンナサァァァァイ」




私はその白骨遺体が兄かユリカか解らなかったが抱きしめ泣いて必死に謝った。






2014年8月

そしてあれから18年後の夏、兄とユリカを供養しに私は沼に向かっている、私の罪が許される事はないが、私を救ってくれた絵里子と麻美のためにも私は生きていく。




END

よく田舎だとあの沼は底無し沼だから近づいちゃいけないと聞きました。


他にも富士山のふもとの池で何処まで深いか潜ったダイバーが居たらしいですが、命綱が切れてもどって来なかったらしいです。

なんでも富士山の地下水脈は広く流れが早くて流れたのではとか、、、


暗く広い、水中に取り残される、考えただけでもゾッとします。

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