表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/97

姫の告白

姫野愛莉視点です

 私、姫野愛莉は胸をドキドキと高鳴らせ、人生最大の告白をしようとしていた。

 さっきまで一緒に帰っていた親友の東堂海砂ちゃんから「頑張って!」と応援を受けたのはいいが、鼓動がドキドキからドクンドクンと激しさを増している。胸が痛い。

 こんなんで告白なんか出来るのか!と自分で自分を叱咤する。


「蓮見晃樹先輩っ!」


 数歩前を歩いていた想い人ーー晃樹先輩を大声で呼び止める。因みに、ここは通行が多い道中だ。

 周りが私をちらちらと見る。それに気付き、元から赤くなっていた顔を更に赤くさせた。


「愛莉チャンはホント急だね」

「あっ」


 パシッと手を取られ、晃樹先輩は私を引っ張りながら走り出す。私が決して転けないように私に合わせて走った。


「ほら、走って!愛莉チャンと二人きりなのに注目浴びたくないんだ」

「はいっ!」


 走るスピードは決して速くないのに私は凄く気持ちがよかった。

 繋がれた手、私よりも遥かに大きくてしっかりした男の人の手だ。

 それにさっき言ってくれた言葉。どれだけ私を喜ばせればいいのだろう、この人は。


「晃樹先輩、走るのって気持ちがいいですね!」

「そうだね、ボクもこんなに気持ちがいいの初めてだよ」


 走りながら笑った。端から見れば、ただの馬鹿に見えるだろう。だけど、それが楽しかったんだ。嬉しかったんだ。



 私が蓮見晃樹を好きになったのはゲームをした時だ。乙女ゲームでサブキャラを好きになるのはよくあることだ。それで、彼がよく出てくる蓮見陽輝と玖珂陸翔ばっかり攻略していた。

 そして、私はこの世界に前世の記憶を持って転生した。

 攻略キャラには近寄らず、だけど彼に会うために陽輝くんと玖珂先輩と仲良くなる。きちんと最初の内に私が彼のことを好きだからと言って協力をしてもらうことを忘れずに。

 二人は優しい人物だから私を助けてくれた。それに途中からは海砂ちゃんも琴葉ちゃんにも助けてもらい、今の私がいる。


 二人で走ってたどり着いた先は小さな寂れた公園だった。公園で遊んでいる人は誰もいない。

 忘れられた公園なのだろうか。そう思うと寂しくなる。


「あっ!」

「どうしたの?」


 見つけたのはそれほど高さがあるわけではないジャングルジムだ。

 いいことを思い付いた。そう考えるのと同時に寂れたジャングルジムを登る。すぐにてっぺんまでたどり着いてしまった。


「晃樹先輩が小さいでーす!」

「ちょっと、愛莉チャン!スカートの中が見えるって!」

「降りてもいいですけど、その代わりに私の話を聞いてください!」

「分かった、聞くから降りてきて」


 危ない、危ないよーとジャングルジムの下で晃樹先輩が叫ぶ。それほど高さがあるわけではないのに晃樹先輩は心配症だ。

 クスクスと笑いながら、私は晃樹先輩に向かって叫んだ。


「晃樹せんぱーい、受け止めてくださいね?」

「えっ、はっ…ちょっと愛莉チャン!」


 飛び降りる準備をする私に戸惑いながら「ちょっと、待って!」と叫び晃樹先輩。それが面白くて私は笑う。

 だけど私が言いたいことはそんなことではない。受け止めてほしいんだ、私の気持ちを。


「私、晃樹先輩が好きです!私の気持ちを受け止めてくれるのなら、私を受け止めてください!」

「愛莉チャンッ!」


 別に怖いという気持ちはなかった。なにせ、この高さから落ちても怪我はしないと分かっているから。

 だけど、私は地面に落ちる前に抱き締められた。勢いが付いていたので、私を受け止めた人ごと地面に倒れ込む。


「晃樹先輩……」

「愛莉チャンはセコいよ。ボクが愛莉チャンを受け止めないと思ってたの?」

「だって、晃樹先輩は」

「ボクは誰よりも愛莉チャンに…姫野愛莉に惹かれている。好きだよ、愛莉チャンが」


 あぁ、これは夢なのだろうか。決してゲームでは愛を囁いてくれない蓮見晃樹が私に囁いてくれている。

 それがどんなに嬉しいことなのか。きっと誰にも分からないはずだ。私以外は誰にも。


「ボクは愛莉チャンが好きだよ。だから、ボクを姫の騎士ナイトにしてくれないかな?」

「なんですか、ナイトって」

「えぇ~、ダメかな?」

「ナイトって馬鹿みたい」


 地面に倒れたまま、ギュッと晃樹先輩に抱き付いた。そうすれば、晃樹先輩も私を抱き締めてくれた。

 顔を見合わせて二人一斉に笑い出した。


「あぁ、なんかボクたちバカだね。こんなところで地面に倒れ込み、抱き締め合うなんて」

「でも、それが私達です。馬鹿でどうしようもないぐらい」

「そうだね」


 だけど、それがどうしようもなく楽しくて、嬉しいのだから仕方がないんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ