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新たな発見と理由

 私は担任の柳葉先生に頼まれて、久しぶりに資料室へと足を運ぶ。

 ファイルにプリントを挟めながら、私は独り言を呟きたい気持ちになり、言葉を発する。


「なんで、二人三脚って男女でやるんだろう」


 月宮先輩の所為で会長が二人三脚で出ることを了承して、月宮先輩が私を誘った所為で私が出ることになるなんて。誰が想像出来たのか。

 それに、会長もよく分からないことがある。出たくないと思っていたはずなのに出ようと思ったことが気になる。

 会長と二人三脚とか、まじ会長ファンごめんなさい。

 会長ファンは多いが、会長が話しかけづらいため、直接話しかける人はいない。この情報は前に桐島先輩の周りにいる先輩方に聞いた情報だ。なにせ、先輩方は私を会長ファンと思っているのだから。


「もう、なんで同性同士じゃないんだ」

「そんなに異性とやるのは嫌か?」

「嫌ですよ…なんで異性なんですかね?」


 私は一体誰と会話していた?

 はい、正解は会長です。会長がいつの間にか、資料室に入って来ていたらしい。

 私をジッと会長が見つめる。艶っぽい紫の瞳に私が映し出された。

 毎回ながら、紫の瞳は綺麗だ。誰でも魅了してしまう危険な瞳。玖珂先輩の燃えるように温かい夕日のような瞳とは違う。会長は人形の瞳のように澄んでいるのに複雑で、その中に艶のある色を含んでいて、とても危険な瞳だ。


「昔からだからな。生徒も嫌そうではないから変わらないのだろう」


 だが、喜ぶのは一部の生徒だけだと思うのは私だけなのか。

 異性とくっついてやるというのは、あまり理解が出来ない。しかも、私の相手はこの生徒会長だ。果たして、無事に体育祭が出来るのか不安だ。


「それよりも、口を開けてくれないか?」

「え、口ですか?」


 何気なしに口を開いたら、口の中に何かを入れられた。ハッとすぐに口を閉じるが、口の中が甘い味に支配される。

 これはチョコだ。私が好きなお菓子のベスト5までに入るものだ。舌の上でチョコを溶かしながら味わう。


「う、うまい!」

「そうだな。私もこのメーカーのチョコは美味しいと思う」


 チョコを包んであった紙袋がチラッと見て、私は今度は我が目を疑った。あれは、あの紙袋はかの有名なお菓子のメーカーのものだ。安くて美味しいのが売りなので、私もよく買う。

 そのメーカー美味しいですよね。と笑いながら会長に言う私ではない。だって、会長が市販のお菓子を食べるなんて想像出来ない。


「会長が…食べるんですか?」

「私以外に誰がいる?」

「そ、そう、ですよね」


 やっぱり会長は市販のお菓子を食べるんだ。

 初めて知った衝撃な事実に愕然としている私の唇に会長の手が伸びる。反応に遅れた私は指が唇を拭うところを見事に回避出来なかった。


「え、はっ?何事ですか?」

「唇にチョコが付いていた」


 クスッと笑みを零し、会長はどこからか取り出したティッシュで私の唇を拭く。

 初めからティッシュで拭けばいいのに、なぜ最初は指で拭いたのだろう。


「君は本当に見ていて飽きない。今から体育祭が楽しみだ」

「……どうして、会長は二人三脚に出ようと思ったんですか?」


 私は楽しみではないです。という言葉を飲み込み、さっきまで疑問だった言葉を言った。

 一瞬キョトンとした目で私を見たので、珍しく会長が可愛く見えた。だが、すぐに意地悪な笑みを浮かべる。二人三脚をしようとお申し出だ時に見せた爽やかな笑みとは真逆の笑みだ。


「月宮と君がくっついている姿を想像したら妬けたからな。どうせなら、私が君と二人三脚をする」

「へっ?」


 何を言われたのか分からなかった。

 会長が嫉妬する?誰に?

 私の問いかけに答えるように、私の頬を優しく撫でる。顔を覗き込むように近付けて、会長はさっきとは違い優しく微笑んだ。


「私が君と一緒にいたい。それが理由では駄目か?」

「ふぇ!?」


 そんなご自慢のお顔を近付けないでいただきたい。

 私は気が動転していて、会長の胸を押しながら自分から離す。


「み、身分が違いすぎますっ!」

「…くっ、なんだそれ」


 体をぷるぷると震えさせ、口を手で覆い、笑っていることが分かる。会長が爆笑している姿をよく見る。こういう姿を見ると、親近感がわく。


「身分はないな。身分は…」

「うっ…」


 そう何度も身分身分と言わないでほしい。さっきは会長の顔が近すぎて、何かを言わないといけない気がしたんだ。

 実際、私が言ってることは正しいと思う。会長はお金持ちで、私は一般市民だ。ほら、身分違いじゃないか。


「女子は身分違いというのに弱いのだろう?」

「はっ?いやいやいや、それは漫画や小説やゲームの世界だけですよ」


 現実はただめんどくさいだけなんではないのだろうか。

 会長は「そうなのか」とキョトンと私を見ている。なんだが、今日の会長は可愛いぞ。いつぞやに感じたギャップ萌えが再発してきたか。


「君は金持ちと結婚したいとは思わないのか?」

「全く思いませんね」

「そうか…なら、どういう人と結婚をしたい?」

「え、うーん?えっと、好きな人?」


 誰と結婚したいとか、どういう風に結婚したいとか。私はよく考えたことがなかった。好きな人と結婚したい!と言う人はいるけど、未だに好きな人がいない私には分からないことだ。

 そういう思いで好きな人の後に疑問符を付けてみたのだが、その意識は確実に伝わってないみたいだ。

 会長は何かを言おうと口を開くが、すぐに口を閉じた。


「どうしたんですか?」

「いや、少し考え事をしていただけだ。そろそろ、私は失礼する」


 会長は資料室を何事もなかったように出て行ってしまった。

 私は手を止めていた作業を再開し、さっきの会長のことを考える。

 結婚どうとかと言っていたけど、やっぱりお金持ちは今から考えないといけないことなのかな?婚約者もいるぐらいだし。

 会長も大変なんだろうと結論を付け、私はファイルにプリントを挟めていった。


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