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二学期開始と衝撃的な事実

 二学期が始まりました。今は始業式でございます。生徒会長の言葉です。

 壇上に上がる会長は爽やかに微笑み、女子生徒の、いや女性の先生方もうっとりとしていた。甘さを含んだ声も腰にきそう。

 私も生徒会長の姿の碓氷悠真は格好いいと思う。あくまで見てる分にはだ。

 その辺の女子生徒と一緒に会長の声にうっとりしていると、会長の雰囲気が変わった。甘い空気から全生徒に言い聞かせようとする空気に変わる。


「皆さんの噂で流れている十年に一度の年というのは、今年のことです」


 おおー!と上級生が声に出して喜んでいるのが分かる。その代わりに一年生は意味が分からずにきょとんとしていた。

 私はというと、その言葉をどこかで聞いた気がした。確か、名前も知らない生徒がそんなことを言ってた気がする。


「分からない方もいるかと思います。だから、皆さんにはヒントを与えましょう。二学期には何の行事がありますか?」


 二学期といえば、体育祭と文化祭が大きい行事だろう。周りの子もそんな風に言っている。


「二学期には体育祭と文化祭があります。十年に一度というのは、その二つの行事の一つである文化祭が他校との合同で行われる年のことをいいます。今年は全寮制で生徒の自立性を高めている、龍ヶりゅうがおか高等学校と合同で文化祭を行います」


 『龍ヶ丘高等学校』通称、おか高である。因みに我が高校は、さく高である。

 その高校の特徴は、全寮制。山の上にあるため、土地がかなりあるので校内も広いし、寮も立派だ。

 しかも、金持ち学校としても有名である。お金があれば入れるという噂の所為で生活態度が悪い人も入学しているらしい。

 だが、学校側は学力アップと生活態度が悪い人をなくすために特待生制度をより多く取り入れている。学年に何人も特待生が居るみたいだ。

 そして、なんと私のお兄ちゃんといとこの終壱くんが通っている学校である。因みに、二人は特待生だ。


「問題行動がないようにしていきましょう」


 いつの間にか、会長の話が終わっていた。代わりに壇上には生徒指導の先生が居て話をしていた。

 私は会長の話を聞いて力の入った手から力を抜いた。

 まさか、こんなことがあるなんて。正直、信じられなかった。


 クラスに戻ったみなさまは、昼から課題テストがあるというのに話に夢中だった。まぁ、私と愛莉姫と琴葉ちゃんも話し始めたので人のことを言えないのだが。

 愛莉姫はどこか暗い表情をしていたので、聞いてみると、おか高の生徒が嫌いみたいだ。

 確かに、私も前におか高の生徒に絡まれたことがある。それは玖珂先輩に助けてもらったが、そのあとにいろいろあったな。あのころの玖珂先輩は勘違いがひどくて怖い先輩だった。今は私に対する態度が優しくなったので、そういう出来事を忘れていた。

 クスリと笑うと、二人の視線が私に注がれる。私は愛莉姫を見て、言葉を発した。


「でも、良い人もいると思うよ?」

「そうだけど……」


 腑に落ちないといった顔の愛莉姫。私と琴葉ちゃんは互いに顔見合わせて、首を傾げた。

 愛莉姫は本当に嫌そうだ。なぜこんなにも嫌なのか分からないが、過去に絡まれたのだろう。愛莉姫は美人さんだから、ナンパもされると思うし。

 「嫌だなぁ…」と呟く愛莉姫を慰めながら、私達は課題テストの勉強をし忘れていた。クラスメイトも合同行事のインパクトの大きさでテストを忘れていたみたいで、開始時に驚いていた。

 一日目のテストは散々だったが、昨日までで頭に詰めたものがあったので少しは助かった。明日こそはちゃんとしようと思ったが、愛莉姫があまりにも落ち込んでいるので三人でどこか行くことにした。

 「アイスが食べたい」と言った愛莉姫のために、公園で売っているアイスを買い、その辺のベンチに腰かける。

 私は断然ミルク派なので、口いっぱいに広がる濃厚なミルクを堪能しながら、愛莉姫を琴葉ちゃんと一緒に慰めた。


「そんなに嫌なの?」

「嫌なのは嫌なの!だって……」


 琴葉ちゃんの問いかけにベンチから立ち上がる。愛莉姫は言いかけた言葉を飲み込み、私をチラッと見る。

 なんと言っていいのか分からないといった顔で私を見た愛莉姫が印象的で忘れきれない。


「ごめん。ちょっと、嫌なこと思い出して……」


 本当に落ち込んでいることが分かる愛莉姫に首を振りながら、出来るだけ優しく頭を撫でる。「ありがとう」と小さく笑う愛莉姫に少しだけ安心する。


「理由は分からないけど、愛莉ちゃんが嫌って言うなら…私が、私達が愛莉ちゃんのことを守るよ!」

「うん、守るよ!」

「海砂ちゃん…琴葉ちゃん、ありがとう」


 嬉しそうに笑う愛莉姫に私達も笑い返した。

 なぜ、愛莉姫は嫌だと言ったのか。今の私には分からない。

 だけど、少しだけ頭痛がする。痛みに耐えながら、私は愛莉姫を安心させるために笑みを絶やさなかった。


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