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お兄ちゃんとの日常

 お兄ちゃんが帰って来ても、私の日常はあまり変わらない。変わるといったら、お兄ちゃんがベタベタしてくるぐらいだ。それは、別に私はお兄ちゃんが好きだから構わない。

 ただ一つだけ面倒くさいことは、お兄ちゃんが私の手料理を食べたがることだ。


「海砂ちゃんの手料理が食べたいなぁ」

「………」

「ねぇ、海砂ちゃん?食べたいんだけど、食べたいんだけど?」

「もうっ、うるさいですよ!私は真剣なんです!」

「ただ、乙女ゲーしてるだけじゃん」


 そう、私は只今乙女ゲームを真剣にやっている。だが、お兄ちゃん分かっているのか!

 好きな声優さんが甘い声で甘い言葉を囁いている最中に邪魔されることが、一番うざいということを!


「ご飯ぐらい自分で作ろうよ」

「海砂ちゃんの手料理がいいんだよ。オムライス食べたいなぁ?」

「却下です」

「えー、じゃあ卵焼きでいいよ」

「まぁ、それぐらいなら…」


 セーブをして、私は卵焼きを作るために台所に行った。


「朝ご飯食べてないの?」

「うん」


 私は何だかんだ言ってお兄ちゃんには甘いかもしれない。

 お兄ちゃんが駄目と言ったら止めるし、お兄ちゃんに何をやってって言われたらやってるし、あれ?私ってお兄ちゃんのいいようにされてる?


「んー?」

「どうしたの、海砂ちゃん?」

「何でもないよー」


 お兄ちゃんは私が作っている間は、ずっと隣で私をにこにこと見つめていた。ちょっと、作りづらい。

 流石に卵焼きだけだと可哀想なので、ベーコンも焼いてあげて、サラダも作った。白飯をよそえば、朝食が出来上がり。汁系は、レトルトの味噌汁で。


「てか、お母さんが用意してたでしょ?」

「あぁそれねぇ。昨日の時点で海砂ちゃんに作って貰うから、朝食はいらないって言っておいたんだー」


 あぁ、ただの確信犯か。

 だから、お母さんはお兄ちゃんの朝食を作らずに買い物に行ったのですね。そういえば、出て行く時に「愁斗を頼んだわよ」と言われた気がする。


「そういえば、今日は起きた時に隣に居なかったね」

「いて欲しかった?」

「いえ、いいです」


 お兄ちゃんが隣に寝てたら、身動きが取れなくて困る。非常に困る。

 ご飯を食べながら、ふぁとあくびを零した。


「眠いの?」

「ん、海砂ちゃんがいないと寝れない」

「いやいや、それはない」


 私がいないと眠れないって、なら普段はどうやって寝ているんだー!

 お兄ちゃんは半分寝ながらご飯をスローペースで食べ終わり、ゆっくりと椅子から立ち上がった。

 お兄ちゃんはテーブルがある椅子に座ってご飯を食べていたが、私はテレビが目の前にあるソファに座って、お兄ちゃんの方を向いていた。そのソファに近付くお兄ちゃん。

 ソファで寝たいのかな?と席を譲ろうとしたら、腕を引っ張られてソファに戻された。

 私を抱き締め、お兄ちゃんは私ごとソファに寝っ転がる。ソファは二人が寝れるほど大きくないので、私はお兄ちゃんのお腹の上で抱き締められている。


「いや、これなんの態勢だよ」

「海砂ちゃんと一緒に寝る態勢かな?」


 ふふっと、甘ったるい笑みを浮かべる我が兄上様。その笑みを私じゃなくて、他の女子にすればもっとモテるだろうに。


「あぁ…海砂ちゃんを抱き締めるために我が家に帰って来たんだよねぇ」

「はぁ……」


 ギュギュッと抱き締めるお兄ちゃんが嬉しそうなので私は何も言わずに、お兄ちゃんのお腹の上で丸くなり、目を瞑った。


「おれの大切な大切な海砂ちゃん…あいつなんかに、あげないよ」


 不吉な予感が漂う言葉をまどろみの中で聞いていた。



 次に目を覚ましたら、私がソファの上で寝ていて、お兄ちゃんがそんな私の顔を覗き込んでいた。


「おはよう、可愛い寝顔だったよ」

「ん…おはよー」


 おはよう、というには遅い。てか、朝に会っただろ。

 時間を確認すると、昼過ぎだった。


「海砂ちゃんのこれからの予定は?」

「んー、宿題でもしようかな」

「なら、おれもしよ。一緒にしようね?」

「うん」


 特に断ることもないし、お兄ちゃんはこう見えても頭がいい。教えてもらえるのだ。

 私達は宿題を居間に持ってきて、し始める。

 お母さんもは買い物から帰ってきて私達を見て「あなた達は、いつまでも仲良しねぇ」と言っていた。


「ん?いつもより、宿題終わってない?」


 いつも、というのは私が長期休暇の宿題を溜めるのでそのことだろう。だが、今回は違う。なにせ、合宿中に玖珂先輩から教わったのだから。


「先輩に教えてもらったんです!」

「……先輩に?」


 ピクリと眉が動いた。

 目に見えるようにお兄ちゃんが不機嫌になっていく。

 あれ、私って何かしたっけ?


「その先輩って、いい人?」

「え?うーん、どうなんでしょう?基本は意地悪なんだけど、優しいかな?」

「へぇー、よく分かったよ」


 にっこりと笑うお兄ちゃんは、ケータイを出し、作業をしてから宿題を再開した。

 不思議に思ってお兄ちゃんを見つめれば、さっきまでの不機嫌さはなくなって、私に笑いかけてきた。


「海砂ちゃん…」

「んー?」

「好きだよ」

「知ってるよー、私もお兄ちゃんのこと好きだし」


 お兄ちゃんが私のことを好きだということは知ってるし、今更言うことではない。

 私の返事に嬉しそうに微笑むものだから、私も嬉しくなり笑った。


「おれの妹、可愛い海砂ちゃん。いつまでも、おれの妹でいてね?」

「私は何があってもお兄ちゃんの妹だと思うんだけど?」

「そうだね。じゃあ、おれだけの海砂ちゃんでいてね?」


 それは私に彼氏を作るなということなんだろう。中学の時に「彼氏はおれ以上の男じゃないと駄目だよ」と言われたし、先日も言われたので。

 まぁ、私はモテたことはないし、大丈夫だよ。心配していることは起きない。

 だが、私は今更ながらにあることを思い出した。


「あっ!」

「どうしたの?」

「いえ、なんでもないです」


 そういえば、私ってファーストキスを奪われているんだった。いや、あれは事故だからカウントには入らないだろう。

 だが、事故でもそのことがお兄ちゃんに知られたら、と思うと不安になる。


「不安なのは、お兄ちゃんだけじゃないんだけどね…」

「なに言ってんの?」

「いやいや、なんでもないです」


 私はふぅと息を吐いて、宿題を見つめた。気を紛れさせるために、問題を解くが分からない。


「お兄ちゃん、ここが分かんない」

「こうして、海砂ちゃんの隣にいれるのは兄の特権だよねぇ」

「お兄ちゃんこそ、なに言ってんの?」

「さぁ、なんでしょう?」


 クスクスと笑みを零し、二人で仲良く宿題を終わらせていった。


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