女子トーク!
今日は、琴葉ちゃんと愛莉姫と私で喫茶店でお話をしている最中だ。夏休みの最初ということで、私達は楽しくしている。
琴葉ちゃんと愛莉姫は仲良くなったみたいで、二人とも名前で呼んでいる。
女子だけで集まるとなると、やっぱり話す内容はあれしかない。
「まさか、琴葉ちゃんの想い人が蓮見くんだったとは…」
「もうっ、何回も言わないで」
同じクラスの蓮見陽輝。人懐っこい笑みでクラスの人気者だ。
彼は琴葉ちゃんが通う華道教室に五月の末から来ているそうだ。同じクラスっていう接点しかなかった琴葉ちゃんは、蓮見くんの優しさに惹かれたらしい。
「それにしても、二人が蓮見兄弟にやられるとは…」
「じゃあ、その蓮見兄の親友の玖珂先輩とはどうなったのかな?」
「くっ、どうにもなってないわー」
どうもこうも、愛莉姫は私と玖珂先輩をくっつけたいみたいだ。だが、玖珂先輩は私のことが嫌いなのでそれはない。
琴葉ちゃんは私達のやり取りをにこにこしながら聞いている。時々「玖珂先輩ってどんな人?」と聞いてくるので、答えに困る。
正直に答えるなら、玖珂先輩は誤解魔の怖い人だが優しい時が稀にある人だ。
「あっ、そうだ!二人とも!」
何かを思い出したように、愛莉姫はテーブルをバンッと叩いて立ち上がる。
他の客や店員が大きな音に反応してこちらを向く。すぐに愛莉姫に座るように言ったら、興奮気味に座る。
「二人とも、来週の火曜から金曜まで空いてる?これが聞きたくて呼んだんだよね~」
思い出して良かったー、と満面の笑みで私達の返答を待っているみたいだ。
「私は大丈夫だよ。海砂ちゃんは?」
「私は、多分大丈夫!お兄ちゃんも補習後には帰ってくるって言ったけど、きっとお盆ぐらいしか帰ってこないし」
私の言葉に愛莉姫はピクッと反応して「お兄ちゃん」と小さく呟く。だけど、すぐに笑みを浮かべる。
「良かったら、お泊まりしない?経費は必要ないよ。むしろ、来て!」
「おぉー、お泊まり!」
「楽しそうだよね」
愛莉姫は私達の反応にニヤリとした笑みを浮かべた。
「陽輝くんも玖珂先輩も来るもんね」
「はっ!?」
「うそ…」
「本当だよ。他にも来る人いっぱいだけど、いまさら行かないはないよね?」
私達は愛莉姫に騙されたみたいだ。女子だけのお泊まり会と思っていた。
そして、ふとゲームの記憶が頭をよぎる。
私が思い出した記憶は、攻略キャラ集合の夏合宿だ。夏合宿は三泊四日で、我が学校の生徒なら誰でも参加OKのやつだ。朝と夜に勉強をして、昼間は遊ぶ。
「じゃあ、そうと決まれば、水着だね」
その愛莉姫の一言で夏合宿参加決定だ。
喫茶店から場所を移動して、今は水着売り場にいる。
今ここで、一番楽しんでいるのは間違いなく愛莉姫だ。だが、意外なことに琴葉ちゃんも結構楽しんでいる。
「海砂ちゃんは、これがいいと思う!」
「あっ、いいと思う!」
「絶対ない」
愛莉姫が持ってきたのは赤いビキニ。胸の大きさが一目で分かるやつだ。
私は買うなら、もっとこう。胸の大きさが分かんないやつがいい。
そのことを伝えると二人は一つの水着を持ってきた。胸のところにふりふりが付いた赤い水着だ。
「いや、なんで赤なの?」
「玖珂先輩カラーだよ、海砂ちゃん。この色で玖珂先輩の心を鷲掴みだよ」
「海砂ちゃん、頑張って」
二人に応援されながら、私はなぜかその水着を買う。決して、私は流されやすいとかではない。水着が可愛かったからだ、と意味もない言い訳をした。
愛莉姫は水色、琴葉ちゃんはオレンジの水着をそれぞれ購入した。
水着姿の二人は可愛いんだろうけど、私は何だか水着の選択を誤った気がする。
女子だけの会話でした。