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補習と先生


 ただいま、補習中です。今は英語の時間であり、必死にプリントを解いている最中です。

 皆さんはお気付きだと思いますが、英語の時間です。英語の時間なのです。私が苦手な英語の時間だ。

 クラスメイトは難しいプリントをすらすらとはいかないが、それなりに解いている。私はというと、最初の一問目から分からない。

 忘れていたが、前回の英語のテストは桐島先輩と月宮先輩のおかげで、56点という高得点だった。

 ん?その点数は高得点とは言わないと?そんなわけはない。私にしたら、高得点だ。残念ながら、英語で学年一位をとることは出来なかったが。

 二人に勉強を教えてもらったところはテスト範囲だけだ。こんなプリントでしているようなテスト範囲外のところは分かるわけがない。


「おいおい、進んでないな」


 私のプリントを覗き込んだ柳葉先生。

 柳葉先生は英語の教師だ。担任が英語担当とか、もう逃げられない。


「いや、もう無理です」

「諦めんなよ。目の前に教師が居るんだぞ?」


 ようするに、先生が教えてくれることなんだろう。だが、英語は苦手だ。勉強なんかテスト前しかしたくない。

 先生どっか行けー、と念じていたら補習が終了する時間がきた。今日は英語で補習終了だったので、帰れる。英語を勉強せずに帰れると思った。


「東堂、帰れると思うな」

「へ?」

「お前は一問も解けてないんだ。俺がお前の面倒を見る」

「えぇぇ!」


 先生はクラスを見渡して「他にも教えて貰いたい人が居たら、残れよー」と言っていたが、クラスメイトはサッと目を反らした。どこからか「もう勉強したくない」と囁く声が聞こえる。

 補習は授業と違い、先生方が容赦ない。容赦なく難しい問題を笑顔でもってくるんだ。

 補習という言葉を辞書で調べてみると、正規の学習以外に学力を補うために授業をすること、と書かれている。だから、先生方も容赦なく補習をしているというのが現状だ。

 補習が終わったあとは、誰しもが勉強をしたくなくなる。それが、我が校の補習だ。


「私もしたくありません」

「お前はしなくてはいけないだろ」


 クラスメイトは柳葉先生の言葉に、うんうんと頷いた。

 私を犠牲にして帰る魂胆が丸見えだな。イケメンな先生と二人きりになるチャンスだぞ。いいのか、面食い女子よ。

 そう思うが、残って学習をしようとする人物は現れない。イケメンより、楽を選んだな。


「海砂ちゃん、頑張って!」

「琴葉ちゃーん!」

「私は華道があるから無理だけど、応援してるよ」


 華道と嬉しそうにしている。最近、琴葉ちゃんは華道が楽しくて仕方ないみたいだ。華道がある時は、ウキウキしているのが目に見える。

 琴葉ちゃんの声援に励まされながら、私は裏切ったクラスメイトを見ると愛莉姫と目が合った。愛莉姫はケータイを手に持っていて、こちらに向けていた。

 何がしたいのかな?愛莉姫は。


 そんなことがありながら、クラスメイトは全員帰り、今は先生と私だけだ。ここは私じゃなくて、ヒロインの愛莉姫でいいじゃないか。

 先生も先生だ。わざわざ、自分の仕事を増やさなくてもいいじゃないか。


「ちゃんと、聞いてるか?」

「いえす!」

「じゃあ、ここの訳は?」

「分かんないです!」

「……人の話はよく聞くように」


 もう一度、説明をし出す先生を見て、どこかで見覚えのある光景だなと思ったら、桐島先輩を思い出した。

 柳葉先生と桐島先輩の教え方は似ている。親戚といってもあまり実感のわかない二人だが、英語を教える時は似ていた。


「どうした?」

「いえ、ただ桐島先輩と似ているなぁと思いまして」

「奏汰と俺が?」

「まぁ‥」


 先生はキョトンとしたが、すぐに笑って「そう言われると、嬉しいものだな」と呟いた。


「俺にしたら奏汰は弟みたいなもんだからな」


 確かに二人は兄弟みたいだ。反抗期の弟を諭す兄。似合いすぎて、何もいえない。


「で、お前は奏汰の話で俺の気を削ごうとか思ってたのか?」

「うっ」


 なぜ、バレたし!

 せっかく、楽しくお喋りをして勉強をしなくてもいいようにするためだったというのに。

 ガックリと肩を落としたら、先生は笑みを浮かべた。その笑みが私に勉強を教えていた時の桐島先輩にダブった。


「じゃあ、英語を楽しくしよう」


 完璧に柳葉先生と桐島先輩は血が繋がってると思う。もう、そっくりだ。

 逃げれなくなった私は、先生の言葉に小さく頷いた。



 やっと、終わったころには私はヘトヘトになっていた。

 先生は私の頭をポンポンと撫でている。


「よく頑張った」

「疲れた…」


 今日は、本当に疲れた日であると同時に、桐島先輩と柳葉先生は似ているということを改めて知る日であった。


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