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馬鹿な親友

月宮誠也視点です。


 女子には常に優しい奏汰だが、その優しい言葉には意味がない。ただ、優しい言葉を囁いて、女子を喜ばせているだけだ。彼自身は、優しくない。

 それが、月宮誠也が思う親友である奏汰の印象だった。


 なぜ、二人が親友と言われるほど仲が良いのかというと、高一の時に誠也に一番最初に話し掛けたのが奏汰だったからだ。

 無表情の誠也は人に誤解されやすい。対照的に、よく話す奏汰もまた、人に誤解されやすかった。

 奏汰はよく女子と一緒に居ることが多い。常に周りに女子が居る。そのため、女子同士の争いもあった。

 奏汰に好きな人が出来ないのは、こういうことも関係しているのかとも思った。奏汰がたった一人だけを選んでしまったら、他の女子はその子をどうにかして、奏汰に近付けないようにするだろう。

 高一の時に彼女が居た時があった。その子は他の女子からのいじめで、肉体的にも精神的にも傷付いた。それを見て、奏汰も傷付いていた。

 奏汰は優しい。そんなことがあっても、奏汰は他の女子を許してしまっている。

 その優しさが残酷だということを奏汰は気付いていない。だから、奏汰は優しくないんだ。



 高二になって、そんなある日。誠也は奏汰の様子が変だということに気が付いた。

 妙にそわそわしたり、急に落ち込んだり、どこか遠くを見たり、まるで恋する乙女のようだ。

 そんな日々が続いた時、誠也もある女子生徒と出会った。その女子生徒は一日で二回もぶつかってしまった。

 何だか、ほっとけなくて構ってしまいたくなる子だった。


「小動物みたい」


 ぴょんぴょんと慌ただしくて、すぐに驚いたり、はらはらさせる子だ。

 見ていて飽きない。それが、彼女に対する想いだった。


 初めて会った日から随時と時間が経ち、その女子生徒とまた出会った。それは、親友である奏汰の想いに気付く日でもあった。

 英語以外は普通の点数の奏汰に勉強を教えるため、図書室で勉強をしていた時だった。彼女が来たんだ。

 最初に気付いたのは奏汰だった。奏汰もまた、彼女と知り合いだったみたいだ。

 普段は見られない奏汰の世話焼きが彼女相手だと見れて、心底驚いた。

 そして、誠也は気付いたのだった。自分の親友と女子生徒がお似合いだということを!


 誠也は常に無表情で居るため、クールと思われがちだが、実は可愛いものが大好きという乙女チックな思考の持ち主だ。小動物はもちろん、その他の動物も、可愛いと思われるものは好きなのだ。

 そして、最近の誠也のブームといえば、大型犬と小動物の観察である。

 大型犬と小動物というが、本当の動物ではない。奏汰と女子生徒ーー東堂海砂のことだ。

 二人は見ていて飽きない。

 奏汰が彼女に勉強を教えているところなんかは、じゃれ合いにしか見えない。可愛くてたまらない。


 テストが終われば、夏休みだ。夏休みにある補習最終日の行事に、奏汰は彼女を誘いたいみたいだ。いつも以上にそわそわしている。

 そんなに一緒に行きたいのなら、誘えばいいと正直に思う。もうすぐで夏休みが始まってしまうので、早い人はもう誘っているというのに。

 奏汰は実行に移すのが、苦手のようだ。本気になればなるほど、余計なことを考える癖がある。


「だから、僕は考えたのですよ」


 二人が誰にも邪魔されない場所を作ればいいのだと。

 彼女を放課後呼び出して、奏汰が誘いやすい環境を作ればいいのだと。

 でも、その前に彼女には確認を取っておきたかった。彼女が既に誘われているのか、そうでないかを。

 もし誘われていたら、奏汰はどう出るのだろうと。


「さて、奏汰はどうするのですか?」


 誠也は自身でも知らず知らずの内に微笑んでいた。

 持っていたケータイに「送信完了」の画面を見つめながら、彼は彼女が来るのを楽しみしながら、本を開いた。


「図書室で東堂さんが危ないですよ。すぐに来て下さい、奏汰」


 馬鹿な親友ほど、応援したくなるのは何でなのでしょうか?


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