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委員とお友達と私と先生


「今日は最初に委員を決めたいと思う。まずは学級委員だ。なりたい人は申し出ろよ」


 柳葉先生の言葉でクラス内がざわざわとし始めた。話している内容は「学級委員だってー、やる?」「嫌だよ、めんどくさい」やらだ。

 私も学級委員だけはやりたくない。めんどくさいし、何よりも学級委員は生徒会の下につく形になるんだ。忙しすぎて、ヒロインと攻略キャラのイチャラブが見れなくなってしまう。

 それだけは阻止しなければ!

 だが、ここで思い出したのだが、このクラスにはヒロインの愛莉ちゃんが居るではないか。

 確かゲームでは愛莉ちゃんは学級委員長になってたはずだ。どんな風に学級委員長になったかは覚えてないが、学級委員長にはなっていた。

 チラッと愛莉ちゃんを見るが、にこにことしながら前を向いていた。


「お前達なぁ、ここは自分がしますとかないのか…なら、俺がクジで決めるからな」


 クジとは‥!

 柳葉先生は小さい箱に入った紙を皆に見せびらかして、箱の中に手を入れる。

 てか、用意周到だな先生よ。生徒が立候補とかしないと最初から分かっていたのかよ。

 箱から一枚の紙が引かれ、先生はその紙に書いてあったものを見て、クラス名簿を見つめる。

 誰が学級委員長に選ばれたのか分かると、誰かを探すようにキョロキョロと見回す。ある人物に目を向けると、いい笑顔で名前を呼んだ。


「姫野 愛莉、良かったな。学級委員長だぞ」

「はい!」


 元気よく返事をする愛莉ちゃんは可愛いな。声を初めて聞いたけど、可愛らしい女の子の声だ。

 にやける口元を押さえながら、私は疑問を感じた。

 愛莉ちゃんの元気のいい返事は、まるで最初から学級委員長に選ばれることを知っているみたいで、戸惑いとかは一切感じなかった。

 いやいや、気のせいだよね?


「じゃあ副委員長は、蓮見はすみ 陽輝はるきだ。しっかり仕事しろよ?」

「えー、僕ですか!?」

「そうだ、お前だ」


 がっくりとわざとらしく肩を落とすのは、明るい茶髪にふんわり癖毛の可愛い系の少年だ。

 先生が言った通り、蓮見 陽輝と言う。勿論、彼も攻略キャラだ。

 見事に委員となった二人は前に出て進行を進めていた。


 私は保険委員になり、只今昼休み中だ。

 皆は「一緒に食べよう」とか話しかけているみたいだが、私はそれよりも見なくてはいけないものがある。

 愛莉ちゃんと蓮見くんが話しているのをガン見しなければならない。


 蓮見くんは人懐っこい笑みを浮かべ、愛莉ちゃんの机の前まで来る。

 どうしたの?と首を傾げる愛莉ちゃん。


「一緒に学級委員やるから、仲良くなりたいと思ってね!」

「良かった!私も蓮見くんと仲良くしたいと思ってたの」

「ほんと?嬉しいなぁ」


 嬉しそうに笑い合うお二人様。周りに、ひまわりが咲いてそうだよ。

 蓮見くんは愛莉ちゃんの方に手を差し伸べた。


「握手だよ、愛莉ちゃん!」

「愛莉ちゃん‥?」

「僕のことも陽輝って呼んでね。仲良くなるんだよね?」

「うん!ありがとう、陽輝くん」


 そう言って、愛莉ちゃんは蓮見くんの手を握りかえした。


 可愛らしいなぁ。

 にやにやと二人を眺めていたら、急に肩を叩かれてビクッとして振り向いたら、可愛らしいショートボブの眼鏡を掛けた女の子が居た。


「東堂 海砂ちゃんだよね?一緒にご飯食べない?」


 女の子は手に持っていた弁当箱の袋を上に上げて聞いてきた。

 駄目かな?と目で訴えてくる女の子に私は一目惚れした。


「喜んで!」

「本当に?ありがとう!」

「いえいえ、こちらこそありがとう」


 彼女は、ひいらぎ 琴葉ことはと名乗った。

 この子もゲームの中に出ていなかったなと考えたが、これは現実なので当たり前にゲームの中に居なかった人物も居る。私のように。

 こんなに可愛らしい子が居るなんて、この世界はどうなっているんだ。美男美女揃いではないか。


「そういえばさっき、姫野さんを見てたよね?」

「うん、美人さんだなぁと思って」


 琴葉ちゃんはチラッと愛莉ちゃんを見た。私もつられて見るが、既にそこには蓮見くんは居らず、愛莉ちゃんともう一人女の子が居た。

 その女の子に私は見覚えがある。彼女はヒロインである愛莉姫ーー何かちゃん付けはヒロインと感じがしないので愛莉姫と呼ばせて貰おうーーの親友である三条さんじょう 千尋ちひろではないか。彼女は攻略キャラの情報などを教えてくれる心強い親友だ。

 意識が違うところにやっていたら、視線を感じた。見ると、目の前に居る琴葉ちゃんは不思議そうに私を見ていた。


「海砂ちゃん、大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ!ご飯ちゃっちゃと食べちゃいましょう!」

「そうだね」


 そうやって、初めてのお友達をゲットして楽しい昼休みは過ぎ去っていった。


 放課後になり、学級委員である二人は先生に呼ばれてどこかに行ってしまった。

 イベントかと思い、私は二人を探すため校内を彷徨いていた。

 随分、時間が経ったと思い、私は二人を探すのは諦めることにした。イベントならまだいっぱい見る機会があるんだ。へこたれるな自分、と頬をぺしっと叩いたら、笑い声が聞こえた。

 不思議に思い、顔を上げると担任の柳葉先生が目の前に居た。


「うぉ、柳葉先生じゃないですか」

「なんだ、その驚き方は…」


 呆れた表情をして先生はため息を零した。

 先生が目の前に居るということは、学級委員の二人は帰ったことになる。なにせ、先生が二人に来るようにと言ったのだから。


「せんせー、ため息吐くと幸せ逃げますよ?」

「なら、東堂が俺のため息を回収してくれ」

「へ?どうやって?」


 真剣に考えるがため息を回収する方法は思い付かない。

 首を捻る私に先生は口角を上げ、薄く微笑んだ。

 ゾクッと全身の鳥肌が立つ。

 何か無性に嫌な感じがする。

 先生は私の肩に手を置く。力は全く入ってないのに、動けない。

 肩に手を置いたまま、先生は顔を近付ける。


「俺がため息を零す前にお前が俺の口を封じればいいんじゃないか?」


 薄く微笑みながら先生は甘い声で囁きかける。

 全身が熱い。きっと今の顔は真っ赤に染め上げられているだろう。


「せ、せせんせー!セクハラです!訴えますよ!」

「俺は、せせせんせーじゃないぞ?」

「とにかく離れて!離れて下さい!」


 軽く先生を押すと、簡単に離れられた。

 ビックリした。あんな近くに先生が居るとか、心臓に悪い。

 未だに真っ赤な顔で先生を睨むと、肩を竦ませて笑みを浮かべられた。


「悪い悪い。冗談の度が過ぎたな」

「本当ですよ!私だからいいものを、他の女子にやったら勘違いしますよ」

「勘違いねぇ…東堂はしないのか?」

「私はモテませんから!」

「ふぅん、そうか」


 何故か先生は嬉しそうに笑い、私の頭をポンポンと撫でるように叩いた。

 警戒しながら先生を見上げると、若干狼狽えた先生は私の頭から手を退ける。


「じゃあ、もう遅いから気をつけて帰れよ?」

「…はーい」


 いきなり先生面した柳葉先生が去っていく姿を見ながら、結局愛莉姫は見つからなかったなと考えていた。

 てか、先生って何がしたかったのだろうか?


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