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テスト終了にお手伝い


 初日にあった英語を桐島先輩と月宮先輩のおかげで何とか乗り切り、テスト最終日も今終わった。


「海砂ちゃん、お疲れ様」

「琴葉ちゃーん!おつかれー!」


 勢いよく琴葉ちゃんに抱き付く。最近は抱き付くことが習慣となってきてる。

 嫌がることはなく、琴葉ちゃんは女神の笑顔で私の頭を撫でてくれた。これぞ、至福の時。


「琴葉ちゃん、まじ女神。いや、天使か?」

「どっちでもないよ、もう」


 ぷくっと頬を膨らまかして怒った。その姿が可愛すぎて、危うく鼻血が出そうだったので鼻を押さえる。

 もう、琴葉ちゃんは可愛すぎる。


「じゃあ、東堂は小悪魔だな」


 後ろから聞こえる美声に反応して、後ろを振り返る。そこには担任の柳葉先生が立っていた。


「小悪魔みたいな可愛さないんですけどー!」

「小悪魔海砂ちゃん、似合うと思うよ?」

「琴葉ちゃんが天使格好してくれたらいいよ!」


 琴葉ちゃんのコスプレー!と盛り上がっていたら「ちょっと、それは」と拒否された。

 ガクッと肩を落として先生に助けを求めたら何かを一生懸命考えていた。あまりにも真剣だったので、先生の顔の前で手を振って「せんせー?」と言っていたらハッと意識が帰ってきた。


「せんせー、大丈夫ですか?」

「ん?あぁ、東堂がお手伝いをしてくれたら具合が良くなるな」


 おい、ただの雑用の相談かよ。

 今日はテスト最終日だったので昼までだ。琴葉ちゃんは昼から華道だし、私は用事がない。


「仕方ないから、手伝ってあげましょう!」

「なぜ、上から目線なんだ?」

「先生が私にいつも雑用を押し付けるからです」

「はいはい。有り難う御座います」


 ポンポンと頭を撫でられる。

 琴葉ちゃんは私達のやり取りを見て微笑んでいた。まじ女神。


「琴葉ちゃん、また明日ね!」

「うん、海砂ちゃん頑張ってね」

「ありがとー!」


 琴葉ちゃんが教室を出るまで手を振って別れを惜しんだ。

 恒例となった雑用内容を聞き出すために、くるりと先生の方を向く。


「今日は何ですか?」

「このプリントをここに書いてある分だけコピーをして、クラス別にしてほしいんだ」

「了解です!」

「終わったら、俺の部屋に持って来てくれ」


 俺の部屋というのは職員室とは別にある先生専用の小さい部屋のことだ。この部屋は先生一人につき一部屋あるので、結構の数がある。

 だが、この学校は一つの校舎がデカい。広くて、つい迷子になる時がある。噂だが、西棟の方には地下室もあるという。


「了解でーす。でも、そろそろお手伝い料をもらってもいいと思います」


 そう言ってみたら、先生はフッと余裕のある笑みを浮かべた。


「今日な、同僚からお土産で貰ったロールケーキがあるんだ」

「な、んだと!?」

「お前が頑張ったらあげても…」

「分かりました!すぐに終わらせます!」


 やっほー、ロールケーキ!とテンションが上がってきた。

 先生からコピーするプリントを受け取り、駆け足で印刷室へと急いだ。先生が「転ぶなよー」と注意していたが、スルーを決め込んだ。


 印刷室に着いた私はコピーをして、プリントをクラス別にする。いつもより、凄いスピードで雑用を片付けた。

 ハイテンションで先生の部屋のドアをノックする。「どうぞー」と言われたので少しだけ開いて中を覗く。

 ここに来たのは今日で二回目だ。一回目の時は愛莉姫と玖珂先輩が屋上に居たので、そちらに気を取られていて中を見てなかった。

 改めて中を覗けば、狭いながらも立派なものだった。小さいがキッチンもあり、プチ冷蔵庫もあった。

 それを見た私の感想は一つだ。金かかってんな。


「ささっと入ってこい」

「はーい」


 ドア付近で中を覗いていたら、ため息を零された。

 仕方がないのでドアを閉めて、先生の近くに来る。


「もう少しで終わるから、そこに座っといてくれ」

「はい、失礼します」


 指定されたというより、先生が座っている椅子を除けばあと一つしか椅子はない。そこに座れば、目の前の小さなテーブルが気になってしまう。テーブルの上は紙が散らばっていて、汚い。


「ここって片付けていいんですか?」

「ん?あぁ、助かる」


 チラッと小さなテーブルを見て頷いた。

 先生が小さなテーブルよりも大きい机で作業をしている最中に私は小さなテーブルの上を片付けていった。テーブルの上が片付く頃には、先生の作業も終わっていた。

 コピーしてきたプリントを先生に渡すと先生は「ちょっと待っとけ」と言って、お湯を沸かし、冷蔵庫からロールケーキを取り出す。


「ほら、お手伝い料だ」

「わーい!ありがとうございますっ!」


 小さなテーブルにロールケーキと紅茶が出されて、手を合わせて「いただきます」と言い、ロールケーキを一口食べる。


「んー!美味しいです!」

「そうか、それは良かった」


 先生も私の向かい側に椅子を持ってきて座る。先生の前には紅茶しかない。


「先生は食べないんですか?」

「甘いものはちょっとな」

「へぇー、勿体ない」


 甘いものが苦手な人はいったい何を食べてるのか気になる。甘いものは美味しいんだー!

 もぐもぐとロールケーキを食べていたら、ブッと先生は吹き出した。


「どうしたんですか?」

「お前、ここにクリームが付いてるぞ」


 自分の頬をツンツンとつつき、クリームが付いてる場所を教えてくれた。その仕草が様になっていたので、ついケータイを探してしまったが見つからなかった。

 私がもたもたしていたので、先生は手を伸ばして私の頬に付いたクリームを親指で取った。その指を自身の舌で舐めとる。


「甘い…」


 色っぽい大人の魅力が先生からに溢れている。

 内心で、格好良すぎる先生!と叫びまくった。まさか、私が「付いてたぞ?」と言ってクリーム類を拭き取られるとは思ってもみなかったため、心臓がバクバクとうるさい。


「どうした?」

「なな、何でもないですー!」


 自分がした行動に気付いていない先生の馬鹿ー!

 赤くなった顔を隠すために残っていたロールケーキと紅茶を飲み干した。先生が紅茶を飲んでしまうと、そのカップを奪って綺麗に洗い、平常心に戻ろうとしたが無理だった。

 無理だったので、逃げるようにお礼を言い、先生の部屋から出て行った。


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