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いらない誤解です

文章が分かりづらいかもしれません。すみません。

 私は先日に続き、先輩方に呼び出されました。これで三回目です。場所は毎回変わっていて、今日は西棟の屋上である。

 過去二回と違い、先輩方は申し訳なさそうに頭を下げている。


「「ごめんなさい!!」」

「へっ?」

「私達、あなたが奏汰狙いと思っていたの。だけど、奏汰を通して会長を狙っていたのね!」

「はぁ…」


 なぜ、桐島先輩を通して会長が攻略出来るのかが分からない。二人には接点はなかったはずだ。

 だが、現実では仲がいいのかもしれない。


「奏汰と仲良くして、月宮君と仲良くなって、会長に近付こうって思っていたんでしょ?そうでもしないと、会長には近付けないもんね」

「はぁ、そうなんですか」

「もうっ、最初からそうだって言ってくれればいいのに」


 私の言葉は聞こえてないぐらいに先輩方はキャッキャッと勝手に妄想していた。

 ここまで先輩方が盛り上がれる要素があったのだろうか、と心の中で考えるが答えは出てこない。

 それよりも、桐島先輩を通して月宮先輩と仲良くなって、会長に近付くとか。随分と遠回りしないと会長には近付けないのか。高嶺の花過ぎるだろ。私って、もしかしなくても運が良かったのか?

 未だにキャッキャッウフフしている先輩方に疑問に思ったことを聞いてみた。


「先輩方は何でそんなにテンション高いんですか?」

「会長ファンってね。居るには居るんだけど隠れなのよ。あんな堂々としているなんて、惚れ惚れしたの!」

「そうなんですか」

「そうなのよ!普段から私達って奏汰狙いの子をやっちゃってるんだけど、あなたみたいに堂々と好き宣言している子は居なくてね。私達はあの堂々した姿に惚れ惚れしたのよ!」

「はぁ…」


 確かにあの時は必死で、しかも会長が聞いているというのに大声で叫んでたな。

 それで、先輩方は私に惚れ惚れしたのか?先輩方は案外、馬鹿なのか。それとも、単純に私が桐島先輩狙いじゃないので申し訳なさから飲酒でもしてテンションが高くなったのか。

 最後の一つは違うだろと自分でツッコミながら先輩方を見る。


「ほら、会長って近寄りがたい雰囲気を持っているでしょ?女子っていったら、円城寺先輩と生徒会の子しか話している姿を見たことないし」

「まぁ、そうですね」

「あなたみたいな子だったら、会長に近付けるんじゃないかなぁ~って私達楽しみなの!現にあの時だって、私達が居なくなった後に話したんでしょ?」

「はぁ」


 先輩方のテンションに付いていけない。会長に女子が近付くことがそんなに嬉しいことなのか。

 今の先輩方を見ると、恋バナを楽しんでいる普通の女子だ。やっぱり先輩方は桐島先輩が好き過ぎただけで、恋バナに花を咲かせる女子だと分かる。

 私は誤解ですとも言えず、先輩方が楽しんでいるので諦めることにした。きっと、時間が経てば忘れるだろうという軽い気持ちで、のほほんと先輩方を見ていた。


「あっ、もうこんな時間になってた。ごめんね、私達もう行かないと。また、話聞かせてね!」

「はぁ、またの機会があれば」

「絶対だよー」


 そんな言葉を言いながら、先輩方は屋上を出て行った。

 いつの間にか、先輩方の恋バナの餌食となっていて疲れた。

 この現状を一言で表すのならば、どうしてこうなった、だ。

 屋上のフェンスに身を預け、疲れた体というより精神を休ませる。ボケーッと空を見上げていたら、錆びた扉特有のギィィという開く音が聞こえた。

 先輩方が忘れ物でもしたのかと思い、空から扉に視線を向ける。そこには先輩は先輩だが、さっきまでの先輩方とは違う先輩が居た。

 赤い髪に挑発的なオレンジ色の瞳。私を見た瞬間に眉を寄せ、思いっきり睨む男子生徒ーー玖珂くが 陸翔りくとだ。

 かなり前に柳葉先生と一緒に遠くから見たとき以降全く見なくなった男がそこにいた。しかも、私を敵認識している。


「アンタは、あの時の」


 すみません、どの時ですか?私には記憶がないです。くっそー、玖珂先輩に敵認識されるとは何したし!


「すみません。私とどこかでお会いしましたか?」

「いや、オレが一方的に見てただけだ。アンタと碓氷をな」


 碓氷って会長ですよね。てか、いつ見たの!私と会長をいつ見たんですか!?

 もしかして、敵認識されてたのって会長と一緒に居るところを見られてたからか。玖珂先輩は会長のことが嫌いみたいなので納得だ。会長と繋がっていそうな人は敵なんですね。

 妙に納得した私はすっきりとした表情で玖珂先輩を見た。

 すっきりとした私の顔を見て、玖珂先輩は眉を更に寄せた。


「アンタは危機的な状況にいるのに焦らないんだな」

「えっ?私って危機的な状況下にいるんですか?」

「分かってないのか?碓氷の女なのに」

「はぁ!?」


 聞き捨てならない言葉が聞こえた。

 まだ可愛い女子に誤解されるのは可愛いからいいが、男子に誤解されるのは嫌いだ。しかも、会長の女に間違えられるとはヤバい。会長が聞いたら、何かしてきそうでヤバい。


「私は会長の女じゃないですよ!」

「碓氷の女だろ。頬にキスしていた。どっからどう見ても、碓氷の女だ」

「あれは、私に対する嫌がらせですよ!私は一度も会長の女になった覚えはありません」


 凄い形相で睨んでくるので、負けじと睨み返す。

 言い合いをしていたら、いつの間にか目の前まで玖珂先輩が来ていた。


「まっ、普通はそう言うよな。だけどもうバレているんだから、別に碓氷の女宣言してもいいんだぜ?」

「……はぁ!?だから、誤解ですよ!」


 苛々として強気で言葉を返したら、ますます睨まれた。

 雰囲気がさっきよりもピリピリとしたものに変わり、私は今更ながらに自分の失態に気付いた。

 玖珂先輩が問題児と言われているのは、短気ですぐに暴力沙汰にいってしまうからだ。さっきまでの私の態度だったら、いつ殴られてもいいと思うのに、よく無事なものだ。

 だけど、今の玖珂先輩はめちゃくちゃキレているみたいで、私の無事が保証されない。


「………いい加減うぜぇ」


 鼓膜を震え上がらせるぐらいの低い声。

 玖珂先輩は勢いよく手を振り上げた。反射的に目をギュッと閉じたら、風がきれる音とガッシャン!という音が重なった。

 殴られると思っていたので、自身に何も痛いところがないのが不思議でたまらない。

 恐る恐る目を開くと、すぐ目の前に炎のように揺れるオレンジの瞳を見つけた。


「…ぁ」


 その瞳までの距離は数センチだ。それでやっと私は玖珂先輩はフェンスに手を付き、私に顔を近付けていることが分かった。


「アンタが碓氷の女じゃないことは、アンタの体に聞けばいいことだ」


 更に顔を近付け、形のいい唇が歪んだ笑みを浮かべた。

 私はこの状況からどうにかして逃げなければならない。そうしなければ、何か大切なものがなくなりそうで怖い。

 だが、ここは西棟の屋上だ。まず人が来ることはないだろう。来たところで、この体勢は恋人か何かに間違われる。

 目の前には、私の顔の横のフェンスに手を付いている玖珂先輩。逃げることはまず不可能だ。

 このまま玖珂先輩の言いなりになるのも駄目。なら、この状況をどうにかするのには一つの方法しかない。不本意だが、この方法しか思い付かない。後からの身の安全より、今の安全を私はとる。


「わ、わたし、会長のおお、女です!だから、退いてください!もう退いて!さっさと退けー!この言葉が聞きたかったんだろ、だから退け。いえ、退いてください!」


 精一杯の力で玖珂先輩を押す。私の言葉と行動に呆気を取られた玖珂先輩の隙をついて逃げ出した。

 途中で立ち止まってはいけない。逃げろ、逃げるんだ。

 私は猛スピードで屋上を出て、階段を下り、東棟まで逃げ延びた。玖珂先輩は追いかけて来ないようだ。

 ホッと一息付いて、私は最後の言葉に激しく後悔をする。


「はぁぁ、もう嫌だな。なんで、私が認めなくてはいけないんだよ」


 ああ言わなければ、きっと逃げれてはいなかっただろう。玖珂先輩は他のことでは隙は生まれなかった。

 今まで認めなかったことを認めたので隙が生まれたが、玖珂先輩は確実に誤解した。誤解して、会長の弱点を見つけたぜーいえーい、と思ってる。


「どうしよう…」


 この一件が会長の耳に届いたら、会長は私に何かを仕掛けてくるだろう。それが私の自惚れだったらいいが。

 それと、玖珂先輩は一番に気を付けなければならない。

 今気づいたんだが、三年の攻略キャラは危険人物しか居ないのか?


「もう、帰りたい」


 私は嫌な気持ちを抱えながら、とぼとぼと家へと歩き出した。


どうして、こうなった。

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