やはりそこに行きつくか
眼鏡の話が何でこんな感じに……
「少し誤解があると思うわね。もともと私は眼鏡かけてたのよ」
「あら、そうなのですか」
一度眼鏡をかけた菜緒だが、再び外すとレンズを自分に向ける。
この間に閉じられた本を手に取り、まじまじと真剣に眺めているティーネは時折、
「むぎっ」とか「むがっ」と謎の奇声をあげながら、ページをめくっていた。
「中学上がる前までは、眼鏡かけてたのよ。中学生になったからと、コンタクトに変えたんだけどさ」
眼鏡をかけ直し、久しぶりの感触を確かめる様に両手の指で位置を調整。ただし、渋い顔である。
「やっぱり普通に目がいいと、眼鏡とかはきついわね……」
「目が悪いからおかけになっていたのでは?」
「そうなんだけどさ。でも力に目覚めてから、視力も回復しちゃって。
今はコンタクトも眼鏡もなしで、両目とも2.5かしら」
ほんの少し得意げな顔をするが、ゲネスは首を捻るばかりである。
「その数字の意味合いがわかりませんが、恐らくは私よりも低いのでしょうね」
「や――」
身を乗り出して口を開きかけた菜緒だが、動きを止めると、ストンと腰を戻し腕を組んで目を閉じる。
「んー、確かにそうなんでしょうね。人間とは基本的に構造が違いすぎるし、肉体の劣化もないんだっけ?」
「そうですわね。肉体の成長はあっても、衰えるというのはほぼないですわ」
「ほぼ?」
「年老いて寿命が近づけば、一気に衰えがやってきますわ。衰えが来る、イコール死期が相当近い、ということですわね」
「なるほど……」
眼鏡を外し、天板の上に置いて目をぐしぐしとこする菜緒。
置かれた眼鏡をゲネスがひょいと手に取り、まじまじと眼鏡を観察していた。
その様子に「かけてみたら?」と笑顔の菜緒が言うと、興味津々だけあってゲネスは手で感触を確かめ、菜緒の眼鏡をかけてみた。
そしてニコリと微笑み――ぐらりと身体が傾く。触角もぶるぶる震えていた。
「こ、これは本当に辛いですわ」
すぐに外し、頭を振って天を見上げる。口が小さく開いている所が、菜緒の目には妙に可愛く見えた。
ただ、背中をのけぞらしたためひときわ目立つすぐ下の、立派なモノに目を奪われてしまう。
「目が悪くなるというのは、大変ですわねぇ」
目を閉じ上を向いたままのゲネスが悪魔のくせして同情的な言葉をもらすが、菜緒の視線はずっと一点を見たままである。
「そうなのよね――さっき、成長はするって言ってたけど、その状態からもっと成長するのかしら?」
「一応、ですわね。でももう見た目の変化はほとんどないはずですわ。
天使も悪魔も、これくらいの状態で止まるはずですから」
「止まる……」
2人の視線はおのずと、なぜか半泣きでやらしー本を読みふけっているティーネに向けられていた。
否、ティーネの胸部に注がれている。
「成長してなくて悪かったな、てけしょー!」
そんなわけで、ティーネさんは弄られ確定のようです。
もはや不動でしょう。