ベッドの下には……?
ふと閃いたティーネが何やらベッドの下を漁っています。
やはり例のブツを探しているのでしょう。
だがしかし!
「ふーにー……あ、そういえばー」
ベッドでぐったりしていたティーネが唐突に起き上がり、敷布団をめくり、マットもめくる。
一ヶ所にとどまらず、数ヶ所をめくっては首を傾げる。
「あーれー、おかしいなー」
「なにが?」
不審な動きをしげしげと眺めていた菜緒が問いかけると、ベッドの上でティーネがちょこんと女の子座りで、唇に指を当てていた。
「んとー、人間界の男性はー、こういうとこにヤラシーの隠すって教わったんだけど、ないなーって」
「私もそう聞いてますわね。本当にないんですの?」
興味が湧いたのかなんなのか、電源のないコタツもどきから脱したゲネスはティーネを押しのけ、ベッドの上でティーネの時と同じようにめくっては『ヤラシー』のを探し始める。
「あのねぇ……」
眉間を押さえた菜緒。
必死で探している2人を前に頭を振る。
「そんな典型的な所にあるわけないでしょ? 布団干したりとか、誰か来てそんな感じに探されたらばれちゃうところに、透が隠すわけないじゃない」
コホンと咳払い。
「昔見つけてしまったけど」
「やっぱりあったんだー」
ゆっさゆっさと身体を弾ませベッドを軋ませる。
「やめなさい」
ゲネスが額に爪をぷすりと突き立てると、額を押さえのけぞるティーネ。
だが、負けてはいられないと右手で額を押さえつつも左手の手刀が、ゲネスの脇腹にざっくり突き刺さる。
「ぬぐっ……小癪ですわね、ティーネさん」
「ティーネちゃんがやられっぱなしでいるわけないんだよー!」
額を付きあわせ、ゴリゴリと音が鳴りそうなほどの力で押し合いを開始。大人びたゲネスだが、こんな時ばかりは譲れないらしい。
そんな事を思いながら肩をすくめた菜緒は立ち上がると、本棚へ向かう。
「透が隠すとしたらそんな所より、こうやって乱雑に置かれている教科書の中で……」
背表紙がこちらに向いていない本を一冊一冊、確認。何冊目かでぴたりと手が止まった。
「ビンゴ」
教科書と同じくらいのサイズだが、表紙カバーがめくってある怪しげな本を手に取る菜緒は、それをコタツの上に置く。
「さーて。昔は水着グラビアだったけど、いまはどうかしらね」
本を開こうとすると、いつの間にかゲネスもティーネも横に正座で、菜緒の手元にある本を覗き込んでいた。
2人とも実に真剣な表情である。
「本邦初公かーい」
もったいぶらず、楽しげにバッと開くと――眼鏡をかけた黒髪の女性こちらに微笑みかけている写真が。当然裸である。
「おおー……とうとう透も、ここまで買う様になったんだなぁ」
多少複雑な心境ではあるが、感慨深げにうんうんと菜緒は頷きながらも、次々ページをめくっていく。
数人の女性がいるが、どれも当然裸。
そしてもう1つ、共通点があった。
「なにやら、眼鏡をかけた女性しかいらっしゃらないですわね」
「だねー。透は眼鏡かけた人が好きなのかなー?」
パタン。
本を閉じた菜緒。
ゆっくりとした動きで制服のポケットから取り出し、さも当たり前の様に眼鏡をかける。
「準備が良すぎますわよ、貴女!?」
透君、眼鏡っ娘スキー疑惑発生中。
彼の嗜好が赤裸々に。
でも仕方ない。健全な高校生だし。