気持ちの確認
実は菜緒最強伝説。
「それで確認だけど、2人とも透が好きになった、そうみていいのかしらね」
菜緒がパリパリかじりつつ、目を左右に。
「少し違いますわね。好意を多少抱いた、それくらいでしょうか」
海苔から口を離し、人差し指を唇に当てては触角を揺らす。
不規則な動きの触角は、ほぼそのままゲネスの心情を表している――そう菜緒は感じ取った。
「ティーネちゃんも、もう少し知りたいかなーって思う程度だよー」
海苔が気に入ったのか、目を閉じ、味わう様に口をもにもに動かしている。
時折アホ毛がピンピンと、跳ねていた。
「ふーん、そう……」
涼しい顔で聞き流し、新しい海苔を取り出すとかじり始める菜緒。
「っく!?」
「いたぁ!?」
突如ゲネスとティーネが悲鳴を上げ、何を思ったのか天板に突っ伏して手のひらでバンバン叩き始めた。
「う……痛みに耐性はあまりないのですから、もう少し優し……くぅ!」
「の、の、の、の、伸びる伸びる、伸びて戻らなくなっちゃうー!」
コタツ布団の中がもそもそと動き、コタツ全体がガタガタと揺れるが、菜緒は変わらず涼しい顔をしていた。
「どうしたの、2人とも」
本当にわからない、そんな顔をしながらニッコリと笑顔を作る。
「す、好きですわ! 一歩手前な気もしますけど、透さんが好きですわよ!」
「ティーネちゃんも、透が一緒に居て欲しいって思ってます―!」
「やっぱりね。正直に言わなきゃ、フェアじゃないもの」
白状すると菜緒が満足げに頷き、暴れていた2人はやっと静かになる。
2人のその目には涙を湛え、突っ伏したまま半眼で菜緒の顔を睨み付けていた。
「何かの文献で、日本人は足の指も器用とか聞きましたが、恐るべしですわ」
「これがどえすってやつなんだ、ねぇぇぇぇっ!?」
ティーネだけが再び、握り拳を作って天板に額をこすりつけてもがき苦しむ。
「禍の元ですわよ……」
ひきつるような笑みを浮かべ、ゲネスは身を起こすと親指で涙をぬぐい、菜緒に真顔を向けた。
「本当に、まだ好きだとかはっきり言える段階ではない、それだけは理解してくださいまし」
「のぉぉぉぉぉぉ!」
「ん、それはわかった。まあまだ出会って間もないしね」
「ほぉぉぉぉぉぉ!」
「そうなのですよね。だから貴女にイニシアチブがあるのですけれども、私は負けませんから」
「はわぁぁぁぁぁ!」
「望むところよ」
「ほにぃぃぃぃぃ!」
「うるさいわですわ」
「静かに」
もだえ苦しんでいるティーネの後頭部に、菜緒とゲネスの手刀――静かになった。
ティーネ、撃チーン。
気分転換ですので。一応本編のキャラはそのままですけど、本編では見れないお姿かも?