終わる伝説
闇を一身に受けた様な漆黒のローブを纏った剣を片手に持つ傷だらけの男は、目の前で嫌みったらしく微笑む謎の男の目の前で、切り刻まれた自分の体から流れる血と激痛で立っている事もままならず、黒いローブを血に染めながら跪いていた。
戦いに敗れ、情けなく跪くローブの男を見下ろす男は、勝ち誇った顔でこう言った。
「世界を恐怖に陥れた黒いローブを羽織った殺人鬼『ダーク・ローブ・マン』、君の死はほんの僅かな時間世界を揺るがすだろう、でもそのほんの僅かな時間が過ぎれば世界は再び回っていく……まるで君は存在しなかった様に、その程度なんだよ、君は」
その言葉に、ローブの男はいまだ消えない野獣の様な目つきと虚ろ笑いの中でこう言い返した。
「クッ、それは俺がこのままいなくなればだろう? 終わらねえよ、俺の伝説は!」
その言葉と共に、今一度ローブの男が立ち上がろうとした。だが。
「いや、終わるんだよ」
ローブの男の前に立っている謎の男は、躊躇いもなく背中に携える剣を抜き、ローブの男の最後の抵抗も空しく、無情にも真一文字に斬られた。
斬られた傷口からは、見るも恐ろしい量の血が吹き出した。
「あれだけ血を流しておいて、まだこんなに血が出るんだ……血の気が多いねえ」
完全に勝ち誇った男はケラケラと笑い、そのローブの男のプライドを完全に踏み躙っていく。
だがそれでもまだ終わらない。斬られた男はそれでもまだ完全には倒れなかった。
そして振り絞る様な声でこう言った。
「終わらねえんだよ……俺の伝説は」
「いや……終わったから伝説なんだ、君はもう伝説だよ」
今度こそ本当のとどめだ。
ローブの男の心臓を剣が刺し貫いた。 しかしそれでもまだ倒れない。
そのしぶとさを見た男は、さすがにも呆れた表情でこう言い捨てた。
「弔いだよ」
近くに咲いていた枯れかけの上に、血で塗れているユリを引っこ抜き、ローブの男に向かって高らかと投げつける。
そして、その花が地面に落ちたのがまるで起爆剤の様に、遂にローブの男。通称『ダーク・ローブ・マン』はこの世から姿を消したのだった。