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水鏡  作者: 古紫 汐桜
第五章
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三郎太、覚醒──託された想い

「そんなあなたに……ひとつ、お願いがあります」

そう言って、翡翠はゆっくりと幸太を真っ直ぐに見つめると

「この先、何があっても、彼を……冬夜さんを支えて上げて下さい」

と言って、深々と頭を下げた。

その姿は、見ていて痛々しい程だった。


(もしかしたら……これが鬼の手なのかもしれない。──でも、こんな覚悟を決めた目をした人を疑う人間にはなりたくない)


幸太はそう思った。

「分かりました、約束します」

そう言うと、翡翠は嬉しそうにふわりと笑った。


──その笑顔は、どこか懐かしい笑顔だった。


「これを……あなたに」

翡翠はたもとから短剣を取り出して、幸太に差し出した。

「これは……鬼神が鍛えた刀です。必ずあなたを護ってくれます」

そう言われて、幸太は短剣を手にした。


その短剣は鞘に入ってはいたが、幸太が手にした瞬間に『ヴーン』と低い音を立てた。

青白い光が短刀から仄かに発され、自分に呼応したのがわかった。


その刹那──

三郎太の記憶が幸太の中に流れ込んで来た。


ずっと見守るだけで、助けられなかった二人。

翠を、危うい状態で長い年月を一人残さなければならない悲しみ。

それらは幸太の中で一つの光の塊になって、やがて弾けた。


幸太は涙を流しながら

「ありがとう……三郎太」

ポツリと呟いた。


三郎太の魂は、長い間、翠の傍で、悪鬼に堕ちかける彼を必死に止めようとしていた。

そして今、幸太として、この輪廻の輪を断ち切る為に転生したのだと……。

ただ、幸太をこの運命に翻弄させたくなくて、前世の記憶を封印していたのだと知った。

そして弾ける寸前に

『どう生きるのかは、自分で決めて良い』

と、言葉を残した。

「クッソ! 前世の俺、カッコ良すぎかよ!」

そう呟いて、涙を拭った。


三郎太を吸収してから翡翠を見ると、不思議と一番心強い味方のような気がして来た。


「翡翠さん、一緒に鬼退治と行きますか!」

そう言って笑った幸太に、翡翠は笑顔で頷いた。

(待ってろよ、翠。もう、誰も悲しみの涙を流させないからな!)

幸太は預かった短剣を腰に差し、翡翠と頷き合った。

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