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水鏡  作者: 古紫 汐桜
第五章
98/120

遥救出大作戦

幸太は昔、鬼ヶ村があった場所に来ていた。

屋敷は結界が張ってあり、鬼には中の様子が分からないらしい。

すると、どこからともなく翡翠が現れ

「あの……薄井さん」

声を掛けられ、幸太は振り向いた。

どことなく儚げで、今にも消えそうな頼りない感じのする女性だと……幸太は思った。


(冬夜さんは、こういうタイプが好みなんだ……)


どこか覚めた目で見ていると

「遥さんの居場所が分かりました」

そう呟かれて

「え! どこですか!」

思わず幸太は翡翠の肩を掴んでいた。

彼女は驚いた顔で幸太を見上げると

「本当に遥さんが大切なんですね」

そう言って微笑んだ。

「私にとっても、冬夜さんは大切な人です」

ポツリと言われ、幸太は眉を寄せた。

「まだ……会って間もないのに?」

思わず出た冷たい言葉に、幸太はハッとした。

「すみません」

慌てて頭を下げた幸太に、翡翠は小さく笑って首を横に振った。

「あなたは変わらないのね。真っ直ぐで、純粋で……」

ポツリと呟く翡翠に、幸太は首を傾げた。

彼女の瞳は、いつも現在(いま)を生きていないように遠い。


「遥さんは、鬼の屋敷に捕らえられているわ。

……しかも、鬼の力で夢の世界の住人になってしまっているの」

「夢の中の住人?」

「えぇ……。その人の深層心理の中にある願望を見せる、恐ろしくも美しい世界よ」

翡翠はそう言うと、そっと幸太の手を取り

「そこから遥さんを救えるのは、あなただけよ」

真剣に訴える翡翠に、幸太は眉間のシワを濃くして

「なにを企んでいる?」

そう呟くと、翡翠は悲しそうに笑い

「私を疑うわよね。でも、信じて。私はあなた達の味方よ」

と訴えた。

「味方って……」

「私はね、鬼の本体なの。翠は、私が死んだら滅ぶ存在。私は千年前に死にかけて、友頼様に命を救われた。その時、瀕死の私は身体を再生する為に、長い眠りにつく必要があったの。その時、私の代わりに生まれたのが翠だった」

「え? じゃあ、翠は……」

「そう、実体のない身体なの」

予想外の事に幸太は混乱した。

そんな幸太を他所に、翡翠は話を進める。

「実体がないとはいえ、触れるし感触もあります。体温もある。でも、それは……あくまでも仮の姿。翠を殺すには、私の心臓を止めなければなりません」

翡翠の言葉に息を飲んだ。

「もう……長いこと生きてきました。私が復活したのは、百年目の時でした。世界は変わり、友頼様も死んでいる世界に蘇った時は絶望しました」

遠くを見つめて語る翡翠の顔を、幸太は黙って見ていた。

「死のうとした事も……何度もありました。でも、死ねないんです。友頼様の魂じゃないと、私を殺せない。だから私は……、どんなに苦しくても……辛くても……生き続けなければならないのです」

翡翠の言葉に、幸太は胸が締め付けられるように苦しくなった。


こんばんは。

今日も読みに来て下さり、ありがとうございます。


今回は、幸太と翡翠が初めて深く向き合う回でした。

翡翠が抱えて来た長い時間の孤独や痛みを知り、幸太がどう変わっていくのか──

物語の大切な転機になれば嬉しいです。


次回更新は、明日の朝8時になります。

またお会い出来たら嬉しいです。


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