兄と弟と、白雪姫
「正直言うと、めちゃくちゃ腹が立ちました。
……だけど、冬夜さんにとって、気持ちを言葉にするのがどれだけ大変か、ここに来てやっと分かりました。だから、今回は許します。」
そう言われて、冬夜がホッと息を吐き出した。
すると幸太はニヤニヤしながら
「え? なんです? 冬夜さんったら、僕に嫌われるのがそんなに嫌なんですかぁ?」
いつもの軽口を言われ、冬夜は小さく笑った。
「まぁな……」
素直に認めた冬夜に、今度は幸太が面を食らった顔になる。
「え? 本当に冬夜さんですか? なんか素直過ぎて気持ち悪い」
と言われてしまう。
「……お前なぁ」
溜め息まじりに呟くと、冬夜は大きく息を吐き出し
「明日は、俺も一緒に遥を探す」
そう言って幸太を真っ直ぐに見つめた。
幸太は冬夜のこんな変化が、何故か凄く嬉しい自分に苦笑いした。
いつの間にか、自分に取っても冬夜という存在はかけがえのない仲間になっていたのだと……そう思った。
「冬夜さんって、案外無自覚な人たらしですね」
「は? なんだそりゃ……」
呆れた顔をする冬夜に
「遥先輩の件、ありがとうございます。でも、遥先輩は僕一人でなんとかします」
幸太は真っ直ぐな瞳で答えた。
「だって悔しいじゃないですか! 今のままだと、白雪姫を救う王子様ポジは冬夜さんになっちゃうでしょう? 僕、7人の小人ポジは嫌なんで!」
笑ってそう言った幸太の顔は、ここに来るまでの、まだあどけなさが抜けない少年の顔ではなく、すっかり覚悟を決めた男の顔になっていた。
(こりゃあ……遥もうかうかしてられないな……)
冬夜は心の中で呟き
「バ~カ! お前はずっと、王子様ポジだったよ」
そう言って幸太の頭を撫でた。
「え? この対応で王子様ポジって、なくないですか?」
「うるせぇな! 俺には、可愛い弟みたいなもんなんだよ」
「えーっ! 冬夜さんが兄貴って、絶対に嫌だ」
「なんだと!」
「顔面偏差値で、毎回負ける弟ポジでしょう?
……負け確のモブじゃないですか!」
「…………俺、時々、お前が何言ってるのか、理解不能になるよ」
この日の夜、鬼が来ていたことさえも気付かない程、屋敷では男二人の会話がいつまでも続いていた。
こんばんは。
今日も読みに来て下さり、本当にありがとうございます。
年齢を重ねると、どうしても体調の回復がゆっくりになってしまいますね……。
もう少し回復したら、いつものように元気にご挨拶できるよう頑張ります。
次回更新は、明日の朝8時になります。
引き続き読んで頂けたら嬉しいです。




