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水鏡  作者: 古紫 汐桜
第五章
93/120

動き出した闇

 その日、遥は帰って来なかった。


冬夜が帰宅すると、幸太が慌てた顔で家から飛び出して来た所だった。

「冬夜さん、遥先輩を見ませんでした?」

そう聞かれても、つい先程まで翡翠と過ごしていた冬夜には知る由もない。

「いや、見なかったな」

「そうですか……。昼前に、ちょっと息抜きに散歩して来ると言って湖の方へ行ったきり、戻らないんです」

心配する幸太の言葉に、冬夜は一瞬ドキリとした。


もしかして、翡翠と一緒にいる所を見られたのかもしれない──


しかし、冬夜はすぐにこう思い直した。


もし、遥が見ていたとしたら、声を掛けて来るに違いない──と。


冬夜は遥の一部分しか知らない。

嫉妬も妬みも、彼女はいつも上手に隠していた。

本当は遥も、好きな人の一語一句に喜怒哀楽を見せる“普通の女性“であることを……。


「どうしたんだろう? 遥先輩……」

心配する幸太に

「大丈夫だろう? 遥だって、子供じゃないんだから……」

と軽く笑い飛ばす冬夜に、幸太はカチンときた。

「何言ってるんですか? 遥先輩、ここに来てから不安定だったの知ってますよね?」

怒り出した幸太に、冬夜はハッとして

「すまない、他意はないんだ」

素直に謝罪する冬夜に、幸太は怒りを鎮める為に一つ溜め息をついた。

あまりにも心配そうにする幸太に、冬夜は見落としがないか記憶を辿る。

そしてふと

「俺も湖にいたけど……遥には会ってないな……」

と呟いたのだ。

その瞬間、冬夜の言葉に幸太が目敏くツッコんだ。

「冬夜さん……“遥先輩には“会ってないって……、誰と会っていたんですか?」

再び幸太の目に怒りの炎が燃え上がる。


冬夜が視線を外すと、幸太は胸ぐらを掴み

「まさか、翡翠さんと出会って密会していたんじゃないでしょうね!」

幸太の胸ぐらを掴む力が強くなる。


「あなたがそんなんじゃ!」


幸太が一際高く叫んだ。


そして目に涙を浮かべると

「あなたがそうやって……僕たちを裏切るんじゃ、どうにもならないじゃないですか」

悲しみとも怒りとも取れる声で、幸太は呟いた。

握り締めた拳が、小刻みに震えている。

冬夜は幸太の言葉で、自分がしていた事が二人を裏切る行為なんだと知った。


──ただ、愛する人と同じ時間を共有したかっただけなのに……。


冬夜は幸太に殴られる覚悟で、黙って幸太を見つめていた。

すると幸太は、胸ぐらを掴んでいた手を離し

「遥先輩を探して来ます」

と言って、冬夜に背を向けた。

冬夜は幸太の背中に

「殴らないのかよ!」

と叫ぶと

「殴るのは、僕たちを信じてくれる仲間だからです。

裏切った人間に、殴る価値なんてありません」

振り向きもせず、幸太はそう言い捨てて飛び出していった。


冬夜はその場に座り込み、捕まれた胸ぐらを自分で掴み

「痛ぇ……」

小さく呟いた。


冬夜は初めて知った。

殴られるよりも、殴られない方が痛いのだと……。


昨夜から少し体調を崩してしまい、

本日の更新ができませんでした。

定期的に見に来てくださっていた皆さま、本当に申し訳ありません。


無理をしても良いものは書けませんので、今日はしっかり休ませていただきました。

また明日から、いつも通り更新していきますね(ˊᵕˋ)


次回更新は、明日の朝8時になります。

どうぞよろしくお願いいたします。


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