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水鏡  作者: 古紫 汐桜
第五章
88/120

断ち切る思い

 冬夜の頬を、知らぬ間に涙が伝っていた。

翠の感情が流れ込む。悲しみ、憎しみ、絶望、そして千年の孤独。

───千年の時は、翠を壊すには充分な時間だった。

「そこで三人に、お願いがあります」

村長はそういうと

「どうか、この呪いにも似た悪循環を断ち切って欲しいのです」

と告げたのだ。

「もし……今回、冬夜様が翠に喰われたら……世界は破滅します」

村長の言葉に、遥と幸太が息を飲んだ。

「今、翠は悪鬼として完成しつつあります。

世界を襲う災害は、全て翠によるものです。

どうか……どうか……、翠を眠らせてあげて下さい」

床に頭をつけて頼む村長に、幸太がそっと手を取った。

「大丈夫です。

……だって、今回は僕が居ますから!」

胸を叩く幸太に、何故か冬夜が救われた気持ちになった。

すると幸太は冬夜を見ると

「……という事ですから、冬夜さん。

僕に感謝して下さいね」

と、いつもの軽口を言って笑った。


──本音を言えば、幸太も不安だった。

でも……千年だ。

千年も翠を待たせたのは、三郎太の生まれ変わりである自分にも責任があるように思えた。


そして一つ、疑問も浮かんだ。

何故、三郎太は千年も友頼の魂の傍に生まれなかったのか?


もし、自分なら、早く生まれ変わって翠を探したのではないか?

何故、自分はこんなにも翠のことを思い出せないのか?


幸太には分からないことだらけだった。

又、遥の傍に生まれ変わった意味も考えていた。


『夫婦は共にいないとな……』


ふと、翠の言葉が脳裏を過った。

まだ何か、パーツが足りない。

この不幸の連鎖を断ち切るには、まだ……何かが足りない。

漠然とだが、幸太はそんな風に考えていた。

その時だった。


『コトリ』

──何かが置かれる音がして、村長がハッと我に返った。

「……おっと、いけません。

歳を取ると、つい話が長くなってしまう。」

そう言って、村長は静かに襖を開いた。


 村長の話を聞いているうちに、外はすっかり昼の光に満ちていた。

襖の外には、湯気を立てる味噌汁の匂いと、焼き魚の香ばしい香りが漂っている。

三人はそれぞれ、用意された膳を運び入れ、静かに箸を取った。

幸太は食事をしながら、ふと

「……そう言えば、この食事って誰が用意して下さっているんですか?」

と、疑問を口にした。

すると村長の顔が強ばり、少しの間の後に

「ワシの孫娘が……」

と呟いたが、ここには三人以外は年寄りしかいない。

……ふと、幸太は冬夜に

「冬夜さん、ここに来てから誰かに会いませんでしたか?」

と質問すると

「あ……?」

冬夜は箸を止め、しばらく考え込んだ。


……そしてゆっくりと顔を上げると

「会ったな。……翡翠に」

と呟いた。

5つの連載を同時に抱えているため、こちらのあとがきがなかなか書けず申し訳ありません。

ひとつ連載が完結しましたので、「水鏡」も少しずつ、あとがきを添えながら更新していければと思っています(ˊᵕˋ)


次回更新は 明日の朝8時30分 の予定です。

また読みに来て頂けたら嬉しいです。


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