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水鏡  作者: 古紫 汐桜
第四章
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取り替えられた命

「二人?」

「はい。生まれても、一生命を狙われて生きるなら……と、私の提案を飲んで下さいました」

晶の乳母、きよの言葉に晶は涙を流した。

「ならぬ! そんなこと、許されるはずが……」

晶がそう叫んだ時

「晶様、翡翠でございます」

襖の向こう側から、翡翠の声が聞こえた。

「おめ通り願えますか?」

柔らかく優しい声に、晶は息を飲んだ。

「どうぞ」

短く答えた晶の部屋の襖が開き、赤子を抱いた翡翠が現れた。

「晶様、頼久様にございます。抱いて上げて頂けませんか?」

小さな命が、晶に差し出された。

壊れ物を抱くように翡翠から受け取ると、小さなミルクの匂いがする赤ちゃんが晶を見上げた。


「あ~……う~……」


小さな手が、晶に差し出された。

晶はそっともみじのような小さな手に指を出すと、ギュッとその手が晶の指を力強く掴んだ。

その瞬間、晶の視界がぼやけていく。

悲しいほど、頼政に瓜二つの子供だった。

晶は赤ちゃんを抱き締め

「母として……この子を立派な領主にすると誓う」

と呟いた。

翡翠は穏やかな顔で晶を見つめ

「はい」

とだけ答えた。

「この命、全てを懸けて愛し護り抜くと誓う」

「はい」

「翡翠……ありがとう」

「……はい」

泣いている晶の手に、そっと優しい翡翠の手が触れた。

「父親似の……母思いの優しい子になると思います」

翡翠の言葉に、晶は再び涙を流した。


きっと、翡翠は晶の揺れていた気持ちに気付いていたのだろう。

「そうだな……きっと……」

この時、晶は自分を救ってくれた二人の恩を、一生懸けて返そうと心の中で誓った──。


 しかし、その誓いが破滅へと向かう引き金にかることを、この時の晶は知る由もなかった。

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