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水鏡  作者: 古紫 汐桜
第四章
58/120

晶と三郎太との出会い

 二人が屋敷に連れてこられてから数日が経過した頃、晶は屋敷に見知らぬ子供が下働きしているのを偶然、目にした。

この屋敷には、子供の下働きする者はいなかった。

虐められているのか、大量の洗濯物と一心不乱に格闘している。


いつ、入ったのだ?


晶が不思議に思っていると、その子供と目が合った。

歳の頃は、まだ五つくらいだろうか?

何故、親元にいないのか?と、晶は使用人たちにこき使われている少年に近付いた。

「坊や、歳は幾つだ?」

晶の声に、少年はビクリと身体を震わせた。

自分を見上げた瞳は、明らかに怯えている。

よく見ると、あちらこちらに痣もあるではないか──。


こんな小さな子に───!


晶はカッと頭に血が上った。

「誰か! 誰かおらぬか!」

晶が叫ぶと、慌てて晶に仕えている使用人が飛んで来た。

「この少年を私の専属に付けよ! 身なりを大至急整え、私の部屋に連れて来なさい!」

と晶が続けると、使用人は言いづらそうに

「しかし姫様……、この者は平民の孤児でございます。殿より、殺さず生かせと言われておりまして……」

と答えたのだ。

その言葉に、晶はハッとした。

「……まさか」

「はい。殿の"お気に入り"の、付属品でございます」

使用人の言葉に、晶は茫然とした。

慌てて履き物も履かずに走り寄り、少年の腕を掴むと

「今からこの者は、私の"お気に入り"だ。なんびとたりとも、傷付けるのは許さないっ!」

晶はそう叫び、少年の目の高さにしゃがむと

「名はなんという? 今日からそなたは、友頼殿の身の回りのお世話を手伝ってはもらえぬか?」

と話しかけた。

すると少年は瞳に涙を浮かべ

「若様は……無事なのか? 翡翠様は……?」

と呟いた。

晶は優しく微笑み、頷いた。

「お二人共、無事だ」

と答えると、ボロボロの衣服に、風呂に入れてもらえないのだろう。

薄汚れた少年の顔を、優しく撫でた。

「友頼殿に会うにしても、その姿では心配させてしまう。まずは風呂にはいらなくてはな」

掴んだ手の細さと、泡まみれだった手から泡が落ちて現れた小さな手は、あかぎれだらけだった。

晶はあまりの惨状に、胸が痛んだ。

「一緒に来なさい」

優しく少年の手を握り歩き出す晶に

「奥方様、勝手にそのようなことを──!」

咎める使用人に晶は足を止めると、ゆっくりと振り向いて使用人を睨んだ。

「聞こえなかったの? この子は、私の"お気に入り"なの。殿には、私から伝えます」

 この屋敷に嫁いで来てから、晶は怒った事がなかった。

殿を諌めることはあっても……。

しかし、晶は腸が煮えくり返る程、怒っていた。

その様子に、使用人は怯えた顔をして頭を下げると、逃げるようにその場を立ち去って行った。


読んで下さり、ありがとうございます。

次回更新は明日の7時頃になります。

又、読んで下さると嬉しいです。

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