晶と三郎太との出会い
二人が屋敷に連れてこられてから数日が経過した頃、晶は屋敷に見知らぬ子供が下働きしているのを偶然、目にした。
この屋敷には、子供の下働きする者はいなかった。
虐められているのか、大量の洗濯物と一心不乱に格闘している。
いつ、入ったのだ?
晶が不思議に思っていると、その子供と目が合った。
歳の頃は、まだ五つくらいだろうか?
何故、親元にいないのか?と、晶は使用人たちにこき使われている少年に近付いた。
「坊や、歳は幾つだ?」
晶の声に、少年はビクリと身体を震わせた。
自分を見上げた瞳は、明らかに怯えている。
よく見ると、あちらこちらに痣もあるではないか──。
こんな小さな子に───!
晶はカッと頭に血が上った。
「誰か! 誰かおらぬか!」
晶が叫ぶと、慌てて晶に仕えている使用人が飛んで来た。
「この少年を私の専属に付けよ! 身なりを大至急整え、私の部屋に連れて来なさい!」
と晶が続けると、使用人は言いづらそうに
「しかし姫様……、この者は平民の孤児でございます。殿より、殺さず生かせと言われておりまして……」
と答えたのだ。
その言葉に、晶はハッとした。
「……まさか」
「はい。殿の"お気に入り"の、付属品でございます」
使用人の言葉に、晶は茫然とした。
慌てて履き物も履かずに走り寄り、少年の腕を掴むと
「今からこの者は、私の"お気に入り"だ。なんびとたりとも、傷付けるのは許さないっ!」
晶はそう叫び、少年の目の高さにしゃがむと
「名はなんという? 今日からそなたは、友頼殿の身の回りのお世話を手伝ってはもらえぬか?」
と話しかけた。
すると少年は瞳に涙を浮かべ
「若様は……無事なのか? 翡翠様は……?」
と呟いた。
晶は優しく微笑み、頷いた。
「お二人共、無事だ」
と答えると、ボロボロの衣服に、風呂に入れてもらえないのだろう。
薄汚れた少年の顔を、優しく撫でた。
「友頼殿に会うにしても、その姿では心配させてしまう。まずは風呂にはいらなくてはな」
掴んだ手の細さと、泡まみれだった手から泡が落ちて現れた小さな手は、あかぎれだらけだった。
晶はあまりの惨状に、胸が痛んだ。
「一緒に来なさい」
優しく少年の手を握り歩き出す晶に
「奥方様、勝手にそのようなことを──!」
咎める使用人に晶は足を止めると、ゆっくりと振り向いて使用人を睨んだ。
「聞こえなかったの? この子は、私の"お気に入り"なの。殿には、私から伝えます」
この屋敷に嫁いで来てから、晶は怒った事がなかった。
殿を諌めることはあっても……。
しかし、晶は腸が煮えくり返る程、怒っていた。
その様子に、使用人は怯えた顔をして頭を下げると、逃げるようにその場を立ち去って行った。
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