悪夢の始まり③
二人が到着した場所は、隣村の神社だった。
宮司が現れると
「わ……若様!」
伊蔵のように驚いた声を上げた。
「兄上は……兄上はどこに?」
友頼の言葉に、宮司はハッと我に返り
「若様の兄上様でしたか。……どうりでよく似ていらっしゃる」
話しながら、二人を怪我人の元へと案内した。
二人が駆け付けると、包帯だらけの姿が目に飛び込んできた。
「おそらく……一昨日の雨で、土砂崩れが起きて巻き込まれたようです」
宮司の説明を聞きながら、翡翠は怪我人の状態を確認した。
打ち身が酷いようだが、怪我の止血をすれば大丈夫そうであった。
手際よく薬を調合し、酷い切り傷に塗って行く。
友頼と翡翠の処置のお陰で、数日安静にすれば大丈夫そうだった。
ホッと一息ついて、怪我人の顔を見て翡翠はギョッとした。
双子とは……こんなにも容姿が似ているのだと。
ただ、この人物には友頼の持つ優しい柔和な雰囲気は無かった。
同じ容姿でも、性格が違うと全くと別人に見えるものだな……。
翡翠が冷静に見下ろしていると、ピクリと怪我人の瞼が動き、朦朧とした意識で翡翠と目が合う。
「……天女……様?」
ポツリと呟くと、再び意識を失った彼の眼差しの冷たさに、翡翠はゾワリと恐怖を感じた。
後の処理は宮司に任せ、二人は帰宅する事にした。
「若様、翡翠様、朝早くにありがとうございました」
二人を見送る宮司に
「あの……私たちの事は、決して若様のお兄様には言わないで頂けますか?」
翡翠はあの時感じた恐怖を拭い去るように、宮司にお願いをすると、宮司は柔らかく微笑み
「かしこまりました。お二人共、良き行動をなさいましたね。神様も、感謝しておられますよ」
そう言って、二人を見送った。
しかし翡翠の胸は、怪我人と目が合ったあの瞬間からザワザワと胸がざわついていた。
友頼と同じ容姿をしながら、あの……凍てついた氷のような瞳。
そしてその日から、翡翠は毎晩うなされるようになる。
愛する友頼と同じ顔が、友頼の胸を刀で貫く夢だった。
「翡翠様、大丈夫ですか?」
あの日、怪我を助けて帰宅した二人を、初はもう咎めなかった。
むしろ、血まみれの二人の為に湯を沸かし、お風呂を用意して待ってくれていたのだ。
「……あの、義母上」
戸惑うように声を掛けた友頼に、初は諦めた顔をして二人に
「咎めませんよ……」
とだけ呟いて、温かい食事を出してくれた。
この日以降、二人は決して怪我人の居る神社には近付かなかった。
宮司に頼まれ、替えの薬の用意をして預けるようにしていた。
そして1ヶ月が経過した頃、宮司から怪我人が回復して帰宅するという話を聞いた。
お腹の赤ちゃんも順調に育ち、安定期入った頃だった。
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次回更新は20時30分頃になります。
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