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悪夢の始まり②
すると友頼は、ガックリと膝から崩れ落ち
「お願いです。顔も知らぬ兄だが、私には見捨てられない。翡翠、兄上を……兄上を助けてはくれぬか?」
と呟いたのだ。
「友頼!」
初の叫びも虚しく
「若様、分かりました。必ず……必ず、若様の兄上様をお助け致します」
床に崩れ落ちた友頼の手を握り、翡翠は頷いた。
「伊蔵さん、私を怪我人のもとへ」
翡翠の声に
「翡翠様!」
初の咎める声が届いた。
翡翠が初に振り返ると
「知りませぬよ! きっと……あなたはこの行いを後悔なさる」
初は厳しくそう呟いた。
「きっと……助けなくても後悔します。
同じ後悔なら、助けて後悔したいです」
「翡翠、馬を出そう」
翡翠の言葉に、友頼がそう答えて足早に二人が家を飛び出して行くのを、初は黙って見送ることしか出来なかった。
「逃れられぬ運命──か」
シン─────っと静まり返った朝の空気が冷たい中、初はポツリと呟いた。
「神様も……酷い仕打ちをなさる」
初の声は風に溶け、どこか遠くへと消えていった。
この日の空は、やけに澄み渡っていた。
まるで、何も知らぬ神が笑っているかのように。
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