ひとときの幸せ②
「若様のところ、まだ子供が出来ないのかい?」
「翡翠様って、もしかして石女じゃないのかね」
「どんなに美しくても、子供ができないんじゃね~」
穏やかな日々が三年目になった頃、村ではこんなウワサが流れるようになっていた。
ウワサしているのは、友頼に懸想している若い村娘たちだ。
「翡翠様、気にしちゃダメですよ」
民が必死に翡翠を慰めるが、翡翠は心を痛めていた。
夫婦の営みはあるが、子宝に恵まれないのは……自分の身体がまだ未完成だからなのかもしれないと──。
そんなある日のことだった。
三郎太が体調を崩し、民が仕事を休むことになった。
そんな中、翡翠も身体がだるくて体調が悪かった。
顔色が悪い翡翠を心配して、友頼が民のお休みの間、ずっと傍にいて看病してくれていたが、翡翠は不安でたまらなかった。
もし、自分が何か悪い病気だとしたら……
三郎太の病気は、自分が感染させてしまっていたら……
鬼ヶ村のみんなを裏切り、自分だけこんなに幸せな生活を送っているバチが当たったのだと翡翠は自分を責めていた。
一週間が過ぎ、民が仕事に復帰して来た。
友頼が翡翠が何か悪い病気になったのではないかと心配して民に相談すると
「嫌だよ、若様、翡翠様。お腹に赤ちゃんを授かったんですよ!」
と笑われてしまった。
「赤ちゃん? 私のお腹に?」
驚く翡翠をよそに、友頼は翡翠を抱き締め
「翡翠……ついに私たちに家族が増える」
そう言って、涙を浮かべて喜んでいた。
「安定期に入るまでは、身体に気をつけて」
と民に言われ、友頼は早速、豪鬼に翡翠が妊娠した旨の手紙をしたためた。
すると翌日、養母の初が翡翠の母親を連れて現れたのだ。
安定期に入るまで……という約束で、二人が交互に翡翠の面倒を見にやって来るようになった。
この時の二人は、この先の未来が明るいものだと信じて疑わなかった。
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