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水鏡  作者: 古紫 汐桜
第四章
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養父──豪鬼との別れ

 豪鬼は深い溜め息を一つ落とすと、ゆっくりと翡翠の顔を見つめると

「これから人として暮らすお前たちに、肝に命じて欲しいのは、人間は私利私欲の為に平気で裏切り命を奪うということだ」

そう呟いた。

豪鬼の言葉に翡翠が首を傾げると

「言っておくが、友頼は人間だが特殊だ。

友頼の母が、友頼に命の大切さを問うていた。

そして何より、我々と暮らして来たのだ。

友頼は人間でも、我らに近い存在なのだ」

そう続けた言葉に、翡翠は頷いた。

「友頼、お前は母の願いでもあったが、鬼ヶ村で暮らした為に、人間なのに純粋過ぎる。

それは素晴らしいところでもあるが、人間相手には苦労するかもしれぬ。

良いか。身内でも、人間を信じてはならぬ。

たがこの先、災いが来て対処できない事があるだろう。良いか、二人とも。村を出ても友頼は俺の息子だし、翡翠は俺が守るべき鬼ヶ村の子供だった。それに、今では息子の嫁だ。どうにもならなくなった時は、遠慮せずに頼りなさい」

豪鬼は二人を真っ直ぐに見据え、そう言い切った。

「……父上。私の父上は、あなた一人です」

涙を浮かべ呟いた友頼に、豪鬼は優しく微笑むと

「達者で暮らせよ」

そう言い残し、村へと帰って行った。

二人が見送る中、豪鬼は帰り道を歩く足をふと止めると

「翡翠……、人間の世で生きると決めたなら、何があっても人を恨んだり、憎んだりするなよ」

と呟いた。

「え?」

「俺たちは、人を殺めてはいけないんだ。それだけは忘れるな」

それは言い聞かせる……というよりは、誓約に近い言葉だった。


翡翠は胸に広がる不安を押し殺すように、ギュッと両手を胸の前で合わせると

「分かりました」

と、短く答えた。

友頼にそっと抱き寄せられ、優しくも頼もしい豪鬼の背中が、村の結界の中へと消えて行くのを見守っていた──。

読んで下さり、ありがとうございます。

次回更新は明日の7時頃になります。

又、読んで下さると嬉しいです。

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