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水鏡  作者: 古紫 汐桜
第四章
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鬼一族の秘密②

 一方、その頃友頼は、養父である豪鬼から鬼一族の秘密を聞かされていた。

それは鬼一族でも、一部の人間しか知らされていない重大な秘密──


親子は向かい合い、時が止まったかのように言葉もなかった。


「お前に……そんな運命を背負わせたくなかった」


吐き出すように呟かれた言葉に、友頼は深い溜め息をついた。


「父上……翡翠を愛した時から、私はどんな運命さえも受け入れるつもりでした」

「しかし──!」


豪鬼が叫び、片足を上げた時だった。

「お待たせしました」

 翡翠が身支度を整え、二人の前に現れた。

豪鬼は足を戻すと、友頼の隣に座る翡翠を見た。

友頼の隣に並ぶ翡翠は、もう豪鬼の知っている翡翠ではなかった。

友頼と契りを交わしたという事は、人間側に翡翠の身体は作り替えられてしまったのだろう。


やがて……鬼神の力も消える──


代々、豪鬼も含め、鬼一族で力の強い者は男性にならなければならなかった。

鬼神の力を分け与え、後世に残す必要があったからだ。

翡翠はその役目を放棄したのだ。

おそらく翡翠は自分の気持ちに従っただけで、そこまで考えが及ばなかったのだろう。

……とはいえ、これは我々鬼一族への裏切り行為だ。

もう、翡翠は鬼ヶ村に足を踏み入れる事はできないだろう。


「翡翠……お前がやったことは、村への裏切りだ」

豪鬼は重い口を開き、呟いた。

翡翠はビクリと身体を震わせた後、ゆっくりと豪鬼を見つめ返し

「わかっています。……覚悟は、出来ています」

揺るぎのない漆黒の瞳が頷いた。


──豪鬼はゆっくりと瞳を閉じると

「翡翠……お前はもう、人間だ」

そう呟いた。

「え?」

「友頼を受け入れるという事は、そういうことなんだよ」

驚いた表情を浮かべる翡翠に豪鬼はそう伝えると

「友頼と過ごし、子を成したら……完全に鬼の力は失われる。それで良いのだな?」

と、念を押した。


翡翠は豪鬼を真っ直ぐに見つめたまま

「はい」

とだけ、短く答えた。

「……一週間。


たった一週間でも、友頼のいない時間は苦しかった。生きていても、死んでいるみたいだった。

もう、あんな思いをしたくない!」


翡翠の言葉に、豪鬼は言葉を失う。

こんなにも激しく誰かを想うのは……、むしろ呪いなのではないのだろうか?


「翡翠……」

 切なそうに顔を歪める友頼は、もしかすると『鬼』に魅入られてしまい、"愛"という名の呪縛を受けてしまった側なのではないのだろうか……と───


読んで下さり、ありがとうございます。

次回更新は20時30分頃になります。

又、読んで下さると嬉しいです。

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