鬼一族の秘密②
一方、その頃友頼は、養父である豪鬼から鬼一族の秘密を聞かされていた。
それは鬼一族でも、一部の人間しか知らされていない重大な秘密──
親子は向かい合い、時が止まったかのように言葉もなかった。
「お前に……そんな運命を背負わせたくなかった」
吐き出すように呟かれた言葉に、友頼は深い溜め息をついた。
「父上……翡翠を愛した時から、私はどんな運命さえも受け入れるつもりでした」
「しかし──!」
豪鬼が叫び、片足を上げた時だった。
「お待たせしました」
翡翠が身支度を整え、二人の前に現れた。
豪鬼は足を戻すと、友頼の隣に座る翡翠を見た。
友頼の隣に並ぶ翡翠は、もう豪鬼の知っている翡翠ではなかった。
友頼と契りを交わしたという事は、人間側に翡翠の身体は作り替えられてしまったのだろう。
やがて……鬼神の力も消える──
代々、豪鬼も含め、鬼一族で力の強い者は男性にならなければならなかった。
鬼神の力を分け与え、後世に残す必要があったからだ。
翡翠はその役目を放棄したのだ。
おそらく翡翠は自分の気持ちに従っただけで、そこまで考えが及ばなかったのだろう。
……とはいえ、これは我々鬼一族への裏切り行為だ。
もう、翡翠は鬼ヶ村に足を踏み入れる事はできないだろう。
「翡翠……お前がやったことは、村への裏切りだ」
豪鬼は重い口を開き、呟いた。
翡翠はビクリと身体を震わせた後、ゆっくりと豪鬼を見つめ返し
「わかっています。……覚悟は、出来ています」
揺るぎのない漆黒の瞳が頷いた。
──豪鬼はゆっくりと瞳を閉じると
「翡翠……お前はもう、人間だ」
そう呟いた。
「え?」
「友頼を受け入れるという事は、そういうことなんだよ」
驚いた表情を浮かべる翡翠に豪鬼はそう伝えると
「友頼と過ごし、子を成したら……完全に鬼の力は失われる。それで良いのだな?」
と、念を押した。
翡翠は豪鬼を真っ直ぐに見つめたまま
「はい」
とだけ、短く答えた。
「……一週間。
たった一週間でも、友頼のいない時間は苦しかった。生きていても、死んでいるみたいだった。
もう、あんな思いをしたくない!」
翡翠の言葉に、豪鬼は言葉を失う。
こんなにも激しく誰かを想うのは……、むしろ呪いなのではないのだろうか?
「翡翠……」
切なそうに顔を歪める友頼は、もしかすると『鬼』に魅入られてしまい、"愛"という名の呪縛を受けてしまった側なのではないのだろうか……と───
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