表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水鏡  作者: 古紫 汐桜
第四章
44/120

結ばれた二人

「友頼!

──お前を愛しているのだ」

ポツリと呟いた翡翠の言葉に、友頼は息を飲んだ。


「怖かった……。

この気持ちを知られたら、お前が私の前から消えてしまうのではないかと……。

でも、お前と同じ性別にはなりたくなかった」

声を詰まらせ、嗚咽をこぼす翡翠を前に、もう友頼は自分の気持ちに嘘がつけなくなってしまった。

目の前で泣き崩れていく翡翠の身体を、友頼はかき抱いた。


「翡翠……私だって……」

思わず吐き出した言葉に、友頼はハッと我に返って翡翠を引き剥がした。

「友頼……」

縋るように自分を見つめ、自分に愛を乞う翡翠を拒むことは、友頼にはできなかった。

「翡翠……」

ずっと愛し焦がれた相手が、自分を求めている。

強く抱き寄せ、どちらからともなく唇を重ねた。


初めて触れた翡翠の唇に酔いしれるように、ゆっくりと翡翠の身体を押し倒した。

翡翠の白く細い手が、そっと友頼の頬に触れる。

友頼は翡翠の手を掴み、翡翠のてのひらに唇を当てた。

「翡翠……愛しています……」

決して告げてはならない禁忌の言葉。

翡翠は目を見開き、漆黒の瞳から涙を溢れさせ

「夢じゃ……ない?」

そう呟いた。

「友頼がいなくなってから、毎晩、毎晩夢を見た。手を伸ばしても、友頼が捕まらない……」

涙を流し、空をつかもうと伸ばす翡翠の手を友頼は握り返した。

「夢じゃないです……。今、こうしてあなたの前に、私はいます」

溢れ出す涙が、頬を伝う。

たった一週間なのに、痩せたような気がする。

「痩せましたか?」

「友頼がいないと……食事も喉を通らぬ……」

翡翠の言葉に、友頼の胸が切なくきしむ。

もし、禁忌を犯すなら、友頼は翡翠に自分の話をしなければならないと思った。

「翡翠……、私はあなたに言わなければならないことが……」

そう口にした友頼の唇に、翡翠の細い指が触れた。

「今は……私だけを見て……感じて……」

囁かれた言葉に弾かれたように、友頼は翡翠の身体を強く抱き締めた。


友頼の指先が触れるたび、体の奥が燃えるようだった。

ずっと……触れたくても触れられない遠い人だった。


「翡翠……」


甘く掠れた声が名前を呼ぶだけで、自分の名前が愛おしく思える。

逞しい友頼(愛しい人)の背中に回した手で、必死にしがみつき、燃えて灰になりそうな身体を繋ぎ止める。


重ねた手が……唇が……身体が……

ゆっくりと一つに溶け合っていく


それはまるで、失った半身を取り戻して一つになるようだと翡翠は思った。


この日、二人は遂に夫婦になった──。

読んでくださり、ありがとうございます。

次回更新は明日の7時頃になります。

又、読んで下さると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ