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水鏡  作者: 古紫 汐桜
第四章
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再会

 翡翠との別れから、一週間が過ぎた日のことだった。

いつものように田畑を手伝い、民が用意してくれた風呂をいただき、夕餉の支度をしていたとき──

突然、部屋の中が眩い光に包まれた。


「なっ……!?」

あまりの眩しさに、友頼は思わず目を覆う。

視界が真白に焼き切れ、感覚さえ奪われる。

その直後、

「キャーっ!」

と悲鳴と共に、何かがドサリと友頼の上に落ちてきた。


 光がゆっくりと収まり、目が慣れてくる。

そこにいたのは──漆黒の髪を持つ、美しすぎる女。

その姿に、友頼は息を呑んだ。


「……え?」

「イタタ……」

 女はゆっくりと顔を上げ、友頼を見つめた。

「友頼? 本当に友頼か!」

 次の瞬間、彼女は勢いよく友頼の頬を両手で掴み、涙を滲ませながら抱きついた。

「バカ友頼! なんで黙って消えるんだよ!」

 そう叫びながら、大粒の涙をこぼす。


 その声は──ずっと、聞きたかった声だった。


「……まさか、翡翠か?」

問いかける友頼に、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしたその女は叫んだ。

「お前! 一週間で私を忘れたのか!? 

この裏切り者!」

胸ぐらを掴まれ、揺さぶられながらも、友頼は呆然と呟いた。

「翡翠……お前、容姿が違う」

「ようし? なんの話だ!」

「見た目だよ……お前、女になったのか?」


「えっ?」

翡翠は自分の体を見下ろし、そして驚愕した。

「……胸? 友頼、私、胸があるよ!」

両手で胸を確かめる翡翠に

「やめなさい翡翠!」

真っ赤になって友頼が止める。


「でも……なんで?」

「それは、私が聞きたい」


 二人は顔を見合わせ、ただ息を整える。


「……母上の部屋に鏡がある。

まず自分の姿を見てきなさい」

「鏡?」

 翡翠は首を傾げながら、パタパタと部屋を飛び出していった。


 しばらくして──

「ぎゃーっ!!」

と悲鳴が響く。

「友頼! 顔が……姿が……変わっておる!」

「だから言っているだろう」

 至って冷静な友頼に、翡翠は混乱したまま問い詰めた。


「どういうことだ?」

「それは私が聞きたい。それに、なぜここに?」

 向かい合って座ると、翡翠は俯き、か細い声で呟いた。

「……だって、友頼が消えたから」

「翡翠。きみは鬼一族の鬼神になるべき存在だ。

こんな所に来てはならぬ」

 優しく諭す友頼に、翡翠は縋るような瞳を向ける。

「友頼は……私が嫌いになったのか?

だから、突然消えたのか?」

「それは……」

「なにが嫌だった? 

私がそんなに疎ましいのか?」

翡翠は友頼の腕を掴み、泣き叫んだ。

「嫌だ! お前がいないと、私は生きている意味がなくなる!」


 その声に、友頼の胸が張り裂けそうになった。

本当のことを言えば、彼らを裏切ることになる。

友頼は、吐き出したい気持ちを必死に飲み込む。


「なぜ黙っている!? 友頼!」


 泣き叫ぶ翡翠の声に、友頼の喉の奥が熱くなった。

叫びたいほどに、切なかった。


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