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水鏡  作者: 古紫 汐桜
第四章
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別離②

「友頼──!」

 真実を養父から聞かされ、友頼はひっそりと生家へ帰る支度をしていた。

神出鬼没な幼馴染みは、そんな友頼の部屋に突然現れた。

慌てて身支度していた荷物を隠しながら、友頼は苦笑する。

「翡翠。お前、玄関から入れと何度言えば分かるのだ?」

「……何かあったのか?」

人の機微に敏い幼馴染みは、心配そうに友頼の顔を覗き込んだ。

「いや、別に……。

それよりも、久しぶりに笛を吹こうと思っているのだが」

「本当か! 聞きたい!

友頼の笛の音は、天下一じゃ!」

嬉しそうに笑う翡翠の笑顔に、友頼の胸が鈍く痛んだ。


 ──別れに吹くこの笛は、きみの幸せを願って奏でよう。


友頼は自らの悲しみを胸の奥に押し込み、ただ翡翠の幸せを願って笛を手に取った。


愛しいきみの幸せを願い、

私はこの村を去るよ──


 その音色は、聴く者すべての心を震わせた。

美しく、優しく、どこか胸を切なくさせる旋律。

鬼ヶ村に静かに降り始めた霧雨のように、

その笛の音は、ゆっくりと夜の帳へ溶けていった。


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