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水鏡  作者: 古紫 汐桜
第三章
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冬夜の生い立ち③

 その時に出会った弁護士も良い人で、何かと冬夜を心配してくれていた。

その弁護士──大津憲二という男は、冬夜を食事に誘ったり、何かと面倒を見てくれていた。

だが冬夜は、杉の子園の園長夫妻や彰人のように、また不幸にしてしまうのではないかと恐れ、大津弁護士を避けていた。

どんなに反抗しても、無視しても、彼は変わらず冬夜を気に掛け続けてくれた。

冬夜が遥の職場に就職した時も、まるで自分のことのように喜んでくれた。

本当は──とても大好きな人だった。


 けれど冬夜は、決して深く関わらないようにしていた。

そして、その大津弁護士も、事件に巻き込まれて帰らぬ人となってしまったのだ。


 それ以降、冬夜は恋人を作らなくなった。

元々、告白されて、その時に彼女がいなければ付き合う、という程度の付き合いだった。

冬夜自身が心から誰かを好きになったことはなかった。


 それでも……少し気になる女性が現れたことがあった。

高校二年の秋。

クラス委員で、明るく真面目な彼女と文化祭をきっかけに仲良くなり、もしかしたらこのまま付き合うかもしれないと思った矢先、彼女は階段から落ちて大怪我をした。


 冬夜が気持ちを持たない相手とは何も起きない。

だが、心がほんの少しでも傾くと、相手に怪我や原因不明の病が起きる──。

そんなことが何度も続き、冬夜は“誰かを好きになる”こと自体を諦めたのだ。


 だから、遥の気持ちに気付いていても、受け止めるわけにはいかなかった。

遥に対しては、異性としてではなく、人として好意を持っていた。

明るくて誰に対しても優しく、しっかり者。

それでいて、どこか危なっかしい面も持っている。

そんな遥を助けたいと思うし、手を貸してほしいと言われれば貸してやりたいと思う。

だがそれは、決して“女性だから”ではなかった。


 本来はとても綺麗な女性なのに、女性であることを否定して男っぽく振る舞う。

おそらく冬夜への感情にも、気付いた時はかなり苦悩したのだろう。

いつも強がって、決して人に隙を見せないから、冬夜には想像することしか出来なかった。

──そんな遥を、他の誰にも目もくれず想う相手がいるのなら、応援したいと冬夜は思っていた。


 だから、幸太のことを遥に勧めたのだ。

幸太は一見ぼんやりして見えるが、仕事は丁寧で正確。

誰に対しても穏やかで、決して相手を不快にさせない。

(そう……俺以外はな)

冬夜はぼんやりとそう思う。


 実際、遥は知らないだけで、幸太はけっこうモテている。

お育ちの良さと、誰にでも優しくできる性格を狙っている女性は少なくない。

けれど、幸太の目には遥しか映っていなかった。

それは、誰が見ても明らかだった。


 そんな幸太よりも、自分を選ぶ遥の気持ちが、冬夜には理解できなかった。

だから、自分より幸太を選べと、あの日に伝えたのだ。


 長い付き合いの中で、初めて遥の泣き顔を見た日。

冬夜はその想いに応えてやれたらと思いもした。

だが、遥を不幸にしてしまうかもしれない──。

そう思う気持ちと、遥という友人を失うのが怖かったのだと、冬夜は思った。


 だから、冬夜は二度と誰も好きにならないし、付き合うこともやめた。

そしておそらく……その原因が、今回の鬼である「翠」と繋がっているように思えてならなかった。

冬夜はそれを確かめるために、この村へ来ることを決意したのだった。

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