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水鏡  作者: 古紫 汐桜
第三章
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冬夜の生い立ち②

 冬夜は引き取られてから、他の杉の子園のみんなの話を彰人から聞いた。

彰人の話では、杉の子園で一緒だった他の子達は、冬夜以外は幸せな生活をしていたらしい。

新しい家族に引き取られたり、本当の親が迎えに来たり。

どうやら彰人は、全員の無事を確認してから仕事に戻るつもりだったらしい。

冬夜を養子として引き取った彰人は、戦場カメラマンだった。

世界中を駆け回り、日本にはあまり居ない人だった。それで、杉の子園のことを知るのが遅くなったという。


 しかし、冬夜を引き取ってからというもの、世界を離れ、日本中をカメラ片手に旅して回った。

義務教育はきちんと受けさせてくれて、転校は多かったが彰人との生活は楽しいものだった。

彰人は様々な風景や、美しい景色。

花、空、全てを冬夜に見せてくれた。

「冬夜。カメラはこの景色を、事情があって見られない人に届ける事ができるんだ」

そう言って、彰人が目に見る世界を教えてくれた。

それは二年間という短い期間だったが、冬夜にとって貴重な体験だった。

冬夜が中学生に上がる頃、冬夜は自分のために仕事を抑えるのはやめて欲しいとお願いした。

彰人にとって、戦場で現場の状況をカメラで伝える事が命を懸けてやりたいことだと分かっていたからだった。

その代わり、「自分にもカメラを教えて欲しい」そう伝えて、冬夜は彰人のお下がりのカメラをもらった。

戦場へ行くまでの間、彰人から写真の撮り方を教わり、冬夜の夢は彰人と世界中を回る事になっていた。

家事全般が苦手で、冬夜が居ないと何も出来ない人だった。

それでも、冬夜に溢れんばかりの愛情を与えてくれた。

血の繋がりもないのに、冬夜にとっていつしか本当の父親のように思えた。

彰人はどこに居ても必ず無事の連絡をくれて、冬夜は連絡が入る度に胸を撫で下ろしていた。

 そんな生活が四年続き、冬夜が高校二年の夏だった。

毎年、年末には必ず帰宅する彰人を待っていたあの日。

彰人は交通事故で帰らぬ人となってしまったのだ。

年に一度しか戻らない癖に、帰ると鬱陶しいくらいに冬夜に構ってくる彰人。

変わり果てた姿に、冬夜は絶望した。

「オヤジ……。何で戦場じゃなくて、交通事故で死んでるんだよ」


泣き崩れる冬夜に、返事は返って来なかった。


その日を境に、冬夜は一つの思いに囚われるようになる。



俺と深く関わった人は死んでしまう


そう思うようになっていた。

その後、彰人が冬夜の為に生活出来るだけの貯金や、学資保険を掛けていたのを知る。

後見人だと言う弁護士から、必ず高校は出る事。

希望があれば大学に行けると言われたが、冬夜は彰人の意思を継いでカメラの学校へと進学を進めた。

ただ、彰人から遺言が遺されていた。

彰人は戦場カメラマンという立場から、いつ死んでも仕方ないと覚悟を決めていたらしい。

そこで、親友だったその弁護士に冬夜の未来を託したのだと聞いた。

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