いざ! 鬼ヶ村へ
あれから数日、幸太を中心に「鬼ヶ村」の調査を続けていた。
そこは現在、立ち入り禁止区域となっている──。
鬼神祭の度に殺人事件が起き、最後の事件からすでに四十年が経っていた。
山は閉鎖されているらしい。
「どう山に入るか……」
遥はモニターを見ながら呟く。
「でも、山ですからね。入り方はあると思うんです。ただ、ひとつだけ気になることがあって」
「気になること?」
「えぇ……」
幸太はそう言うと、机の上に写真を並べた。
「今まで殺された人が送られてきた写真は一枚。今回は三枚なんですよ」
「……ということは?」
「まるで、僕らが来ることを分かっていたみたいなんですよ」
幸太の言葉に、黙って聞いていた冬夜が2人の顔を見た。
「なるほど……」
幸太の言葉に、遥は納得したように頷く。
「どういうことだ?」
冬夜が二人の顔を見ると
「あの日から、私は毎晩同じ夢を見るようになったんだ」
「僕もです」
と、神妙な顔をして答えた。
「夢?」
冬夜が呟くと
「多分、お前も見ているんじゃないのか?」
遥がそう訊ねた。
確かに、最初に写真が送られてきてから、毎晩、湖に和服姿の女性が祈るように歌を歌っている夢を見る。
その女性の顔は見えないが、何故かとても懐かしく感じた。
月に祈るように歌うその人は、いつも最後に涙を流し、
『若……、来てはなりませぬ』
そう言って消えていく。
「お前らも、あの歌を聞いているのか?」
思わず呟くと
「歌? いや……、私は十二単を着た女性が『殿を助けて』って泣いているんだ」
遥はそう呟いた。
「お前は?」
冬夜が幸太に聞くと
「昨夜──恐らく冬夜さんの夢に現れている女性だと思います。
湖で歌を歌うその方が、『間もなく結界が弱まる』と教えてくれました」
そう呟き
「でも……逃げられない運命なのは、理解しました。
この数日、僕の夢に──この湖へ続く道が現れるんです」
と続けた。
そして
「恐らくですが、僕らがこの場所へ行こうと決めた日は、本来なら鬼神祭が行われる日だったのだと思います」
二人を真っ直ぐに見つめ、幸太が言い切った。
「今回、何の因果かは分かりませんが、僕たち三人が選ばれたんです。
だからこそ、三人で生きて帰って来ましょう」
幸太の言葉に、冬夜と遥は無言で頷いた。
三人の小指が静かに絡まり、それぞれの思いを込めたまま、そっと離れた。




