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水鏡  作者: 古紫 汐桜
第三章
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いざ! 鬼ヶ村へ

 あれから数日、幸太を中心に「鬼ヶ村」の調査を続けていた。

そこは現在、立ち入り禁止区域となっている──。


 鬼神祭の度に殺人事件が起き、最後の事件からすでに四十年が経っていた。

山は閉鎖されているらしい。

「どう山に入るか……」

遥はモニターを見ながら呟く。

「でも、山ですからね。入り方はあると思うんです。ただ、ひとつだけ気になることがあって」

「気になること?」

「えぇ……」

幸太はそう言うと、机の上に写真を並べた。

「今まで殺された人が送られてきた写真は一枚。今回は三枚なんですよ」

「……ということは?」

「まるで、僕らが来ることを分かっていたみたいなんですよ」

幸太の言葉に、黙って聞いていた冬夜が2人の顔を見た。

「なるほど……」

幸太の言葉に、遥は納得したように頷く。

「どういうことだ?」

冬夜が二人の顔を見ると

「あの日から、私は毎晩同じ夢を見るようになったんだ」

「僕もです」

と、神妙な顔をして答えた。

「夢?」

冬夜が呟くと

「多分、お前も見ているんじゃないのか?」

遥がそう訊ねた。

確かに、最初に写真が送られてきてから、毎晩、湖に和服姿の女性が祈るように歌を歌っている夢を見る。

その女性の顔は見えないが、何故かとても懐かしく感じた。

月に祈るように歌うその人は、いつも最後に涙を流し、

『若……、来てはなりませぬ』

そう言って消えていく。

「お前らも、あの歌を聞いているのか?」

思わず呟くと

「歌? いや……、私は十二単を着た女性が『殿を助けて』って泣いているんだ」

遥はそう呟いた。

「お前は?」

冬夜が幸太に聞くと

「昨夜──恐らく冬夜さんの夢に現れている女性だと思います。

湖で歌を歌うその方が、『間もなく結界が弱まる』と教えてくれました」

そう呟き

「でも……逃げられない運命なのは、理解しました。

この数日、僕の夢に──この湖へ続く道が現れるんです」

と続けた。

そして

「恐らくですが、僕らがこの場所へ行こうと決めた日は、本来なら鬼神祭が行われる日だったのだと思います」

二人を真っ直ぐに見つめ、幸太が言い切った。

「今回、何の因果かは分かりませんが、僕たち三人が選ばれたんです。

だからこそ、三人で生きて帰って来ましょう」

幸太の言葉に、冬夜と遥は無言で頷いた。

三人の小指が静かに絡まり、それぞれの思いを込めたまま、そっと離れた。

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