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水鏡  作者: 古紫 汐桜
第二章
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届いた招待状

「せんぱ~い、冬夜さ~ん。

まだ歩くんですか?

少し休みましょうよ~」

 叫ぶ幸太に、冬夜は無言で近付くと

「お前なぁ~。

山登るのに、そんな大荷物で来るから……」

そう言うと、幸太の背中に背負われた大きなリュックの取っ手に手を伸ばした。

「よこせ、俺が持つから」

「冬夜さん……」

涙目で見上げる幸太の顔を見て、冬夜がブッと吹き出すと

「何て面してんだよ」

そう言って幸太の鼻を摘む。

「……にしても、何入ってんだ?」

リュックを背負いながら呟いた冬夜に

「山登りグッズですよ!」

と、鼻息荒く幸太が答える。

幸太の言葉に、ぼんやりと山に入る前にハッカ油で作った虫除けスプレー(幸太作)を着けてくれたのを思い出す。

「お前……」

と呟く冬夜に、幸太は得意気に胸を張った。

「女子か!」

呆れた声を出した冬夜に

「ええ~っ! 褒めて下さいよ~」

と、幸太が前を歩き出す冬夜に叫ぶ。

「あ~はいはい。凄い凄い」

「気持ち、こもって無いですよね!」

 あの日以来、幸太は少しだけ冬夜に心を開き始めているようだった。

そんな二人を微笑ましく思いながら、遙は胸に広がる不安を拭えずにいた。


 この取材を始めてから、おかしな事が多すぎる。

写真の景色と同じ場所が、ネットで探しても見付からない。

手掛かりは、毎朝、冬夜の机に届く写真の裏に書かれた情報だけ。

初めて写真が置かれた日から、毎日、同じ写真の裏にメッセージが書かれた状態で、冬夜の机の上に置かれている。


 毎朝、ビルの管理会社が掃除に入るが、管理会社が来る頃には、既に写真は置かれていると言う。

ビル自体も、冬夜が泊まり込まない限りは全て警備されている。

それなのに、何故か誰からの物か分からない写真が毎日、毎日届いていた。


 元々、オカルト系の話が大好きな幸太は

「冬夜さんに、恨みのある女性からの嫌がらせじゃないんですか?」

なんて言いながら、嬉々として色々調べて情報を集めてくれていた。


 そんな中、幸太の集めていた情報と写真の情報が一致した。

キーワードは『千年桜の呪い』


 昔、美しい巫女と恋に落ちた青年が、巫女を汚した罪で村人に惨殺される。

青年が惨殺された湖の畔に咲く桜の花は、青年の血を吸い、千年の間枯れる事も無く真っ赤な花を咲かせている


「千年の間、花が咲き続けるって……すげぇな」


 編集会議で、冬夜が自分に送られて来た写真を見ながら呟く。

「実際は、その桜が咲いている次元に行かないと見られないみたいです」

幸太は会議室のモニターに、1枚の写真を映し出すと

「これが、冬夜さんが送られて来た写真の場所です」

そう話し出した。

そこは写真とは全く違う景色で、鬱蒼とした森の中に湖がポツンと映っている。

「これが、この写真と同じ場所だって?」

呆れた声を上げる遥に、幸太が静かに頷く。

「驚くのも無理無いと思います。

今はこの山、立ち入り禁止になっています。

理由はこの三つの記事です」

幸太は話を続けながら、古い新聞の記事をモニターに映し出した。


 それは全て、ある村で鬼神祭が行われる度に若者が1人行方不明になるという記事だった。

年齢、職業はバラバラで、共通しているのは「男性」である事と、全員が天涯孤独という不幸な境遇にいるということだった。

 鬼神祭は毎年行われるモノではなく、山にある湖の湖畔に真っ赤な桜の木が映し出されたその月の、満月の夜に行われていた。

 しかし、必ず鬼神祭の夜に若者が1人、行方不明になる。

そして祭りの数ヶ月後、行方不明になった若者が変わり果てた姿になって、湖で発見されていた。

首にはまるで吸血鬼にでも噛まれたような跡があり、血を全て抜き取られた姿で発見されていたのだ。


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