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水鏡  作者: 古紫 汐桜
第二章
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ひとときの幸せ

「三人?」

遥がポツリと呟くと、幸太が笑顔で遥と冬夜、自分の順番で指を指して

「そう、三人」

と笑顔を浮かべた。

「はぁ? そんなの余計に駄目だ!」

そう叫ぶ遥に、幸太は両手を頭の後ろに組むと

「遥先輩……そんなに頭ごなしに反対したって、冬夜さんが強硬手段に出るだけですよ」

冬夜の顔を覗き込んだ。

ハッとした顔をして遥が冬夜に視線を向けると、冬夜はバツが悪そうな顔をして視線を逸らす。

その様子を見て、遥は冬夜の胸倉を掴み

「お前、まさか勝手に一人で行くつもりなのか!」

と叫んだ。

「まぁ、お前がそこまで反対するなら……?」

そう呟く冬夜に、遥は大きな溜息を吐きながら椅子に音を立てて座った。

「お前……」

思わず頭を抱えて呟くと

「だから、三人で行きましょうよ!

ほら、三人寄れば文殊の知恵って言うじゃないですか!」

幸太が満面の笑みを浮かべて叫ぶ。

「文殊の知恵ねぇ…」

頭を抱えながら呟く遥に

「反対されても、俺はここを辞めてでも行く」

普段なら大概の事は折れてくれる冬夜が、真っ直ぐに遥を見つめて断言したのだ。

(抗えない運命……ということなのだろうか?)

遥はそう思いながら、大きく溜息をつき

「了解! そこまで言うなら、許可しよう。


その代わり、私と幸太も同行する。

それでどうだ?」

と答えた。

遥の回答に冬夜は頷くと

「それで構わない」

そう呟き、遥の言葉に目を見開いて嬉しそうに万歳する幸太に視線を投げた。

(嫌われているのに、何故か幸太を放っておけないのは、自分に無い喜怒哀楽が羨ましいのだろうか……)

冬夜は思いながらフッと、小さく微笑んだ。

すると

「あ! 冬夜さん、今、笑いませんでした?」

と、幸太が叫ぶ。

「うるせぇな! 笑ってねぇよ!」

「嫌々、絶対に笑ってましたよ!

なんだ~、実は冬夜さん。

僕の事が大好きなんじゃないですか~」

軽口をたたく能天気な幸太の頭を撫でながら、冬夜は小さく笑いながら

「そうかもな」

と答えた。

その反応に幸太が固まり、驚いたように大きな目を益々見開いて

「えぇ!」

と叫んだ。

「なんだよ……その態度」

呆れた顔をして呟いた冬夜に、幸太は

「すみません。僕、そういう趣味はありません」

そう言って、ぺこりとお辞儀をした。

冬夜は一瞬、何を言っているのか分からないというポカンっとした顔をした後、意味を理解したらしく顔を真っ赤にすると

「アホ! 俺にもそんな趣味無いわ!」

と叫んだ。

動揺している冬夜が珍しくて、幸太は嬉しそうに

「良いんですよ……。冬夜さんがたくさんの女性と付き合っても、長続きしない理由が分かりました」

そう続けて、「うんうん」とわざとらしく頷いてからかっていた。

すると冬夜はいつもの無表情に戻り、幸太の頭をゲンコツでグリグリとやりながら

「そうかもな!

俺、幸太がそういう意味で好きかもな!」

と、物凄い棒読みで返してきた。

そんな2人を、遥が呆れた顔をしながら様子を見ていると

「痛い! 冬夜さん、悪ふざけが過ぎました!

すみません!」

と言いながら、幸太がジタバタと逃げようとしている。

すると冬夜は幸太の反応に面白がって、幸太の首に腕を巻き付けて動けないようにしている。

「冬夜さん、ギブ! ギブ!」

幸太が必死に冬夜の腕を叩いていると

「えー! 

俺、幸太が大好きだから離したくないーっ」

と、冬夜は再び凄い棒読みで答えた。

幸太は遥がその様子を黙って見ているのに気付き

「遥せんぱ~い!

見てないで、助けて下さいよ~」

涙目で訴えると、遥は苦笑いを浮かべ

「はいはい、じゃれ合うのはそこまで!」

と、「パン!」っと手を叩いて一喝した。

冬夜が『仕方ない』という顔をして幸太を離すと、幸太は慌てて遥の背中に隠れて、冬夜にあかんべをしている。

そんな幸太を、遥は苦笑いして見ていた。

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